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友達の彼女の告白を断ったら、お断り屋にスカウトされました!  作者: なつのさんち


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事故から最近までのお話

10/30 感嘆符後のスペース追加、三点リーダーを偶数に変更、ルビ等その他追加修正

優奈(ゆうな)が亡くなってしもてからしばらくして、俺のおばちゃんに言われてな。こっちに引っ越したんや。

 多分もうその時にはエミルになってたんやろ?」


「うん、優奈ちゃんまで亡くなったってお母さんから聞いて、仕事キャンセルにしてお葬式だけ出させてもらった。ゆーちゃん探したんやけどいいひんくっていなくて

 ホンマはうち自身もショックで仕事どころやなかったよ」


 妹の優奈まで亡くした俺は、約二ヶ月に渡る看病生活の心労の為かぶっ倒れたらしい。

 情けない事に、妹の葬儀に喪主として立てなかった。

 妹が亡くなった病院で一晩入院し、辛うじて出棺だけ立ち会う事が出来た。

 それからも泣くかうわ言を言うか、家の中をウロウロするかの毎日だったらしい。

 それに見かねて、違う環境で心を落ち着けた方がいいと勧められた訳だ。


 こちらに住んでいる母親の妹は精神科医として働いている。時々俺の様子を見に来ては、カウンセリングを通して心のケアをしてくれていた。



「愛想笑いくらいならこっちに来てからすぐに出来るようになったわ。バイトが居酒屋やからな、無表情ではいられん。ホンマずっと無表情やったらアカンな、作り笑顔頑張ってたら筋肉痛になってピクピクしよって嫌だった(かなんかった)わ。

 ホンマの意味で笑えるようになったんは、オーナーの瑠璃るりさんと牡丹ぼたんさんにスカウトされた時、かな? 久しぶりに爆笑してもて、腹筋壊れるかと思った。真剣に俺の事をお断り屋に引き抜こうとすんの! めっちゃおもろかった。

 そやし石田いしださんの考えはもしかしたら当たってたかも知れん。もし先に夏希なつきの真剣な芝居を見てたら、手ぇ叩いて爆笑してたかもな」


 ほっ、と石田さんが息を付く。一応カバーしておきましたよ。後は帰った後にでも、そちらでお話しして下さいね。

 泣き腫らした顔のまま、夏希がバッ! と立ち上がり石田さんへ向き直る。


「私、芸能界を引退します!」


 出たぁ~、まさかと思ったら出たぁ~! だからお前は真っ直ぐ過ぎるんやってば。

 お前のその感覚で突っ走っても、周りは全然付いて行けへんからな!? いろいろ契約や何やとあるやろうに……。


 はぁ……。ほら石田さんがため息付いた。

 せっかく俺がフォローしたのに上手く行きませんでしたね。

 んぐっ!? とコーヒーを飲んでいた牡丹が咳き込んでいる。変なトコに入ったらしい。


「なっ、何でそうなるんですか? エミルさん」


「私は優希ゆうきを笑顔にする為だけに芸能界に入りました。その信念の為に芸名も自分で考えて、この名前で活動すると押し切りました。

 でももう優希は大丈夫です。昨日までは離れた所でしか見守れなかったけど、これからは隣で優希を支えたい。

 だから芸能界を引退します!!」


「それは困るなぁ、エミルちゃん」


 ノックもなくオフィスの扉が開く。

 ほっそりとした白髪まじりの紳士が入って来た。年齢は60代前半か、うっすらと日焼けして健康的な顔立ちの男性がすっとオフィスに入った直後、ソファーの前で土下座をした。


「この度は我が高畑たかはた芸能事務所の所属女優が、大変ご迷惑をお掛け致しました事、誠に申し訳御座いませんでした!! 私の監督不行き届きで御座います!!

 何卒、何卒お許し頂けますようお願い申し上げます!!!」


「「社長!!?」」


 慌てて石田さんが立ち上がり、夏希の手を引っ張りながら社長とやらの後ろに行き、その場で同じく土下座をする。


「ほらエミルも!」


 状況について行けていない夏希も、無理やりに頭を下げさせられている。


「この通りにございます!!!」


 瑠璃はその様子をじっと見つめつつ、立ち上がって社長の肩に手を置く。


「もう結構です、石田さんからの謝罪の言葉をお聞きしておりますので、これ以上は何も申し上げません。ソファーへとお掛け下さい。

 嫌ですわ社長、自己紹介が先ですわよ?」


 にこりと笑いかけ、自分の名刺を差し出す。


「これはこれは、大変失礼致しました」


 立ち上がり、後ろの2人にも立つように言ってから、同じく名刺を取り出す社長。


「高畑芸能事務所の代表取締役社長、高畑たかはた純一じゅんいちと申します」


「ご丁寧にどうも、私はSpecialスペシャルExperienceイクスピアリエンス代表取締役、宮坂みやさか瑠璃るりです。今日は社長様とゆっくりお話が出来るいい機会だと思っておりますわ。

 ですが先に、エミルちゃんとお話しする時間が必要ですね。私共はいったん席を外しましょうか?」


「いえいえいえ、それには及びません。むしろ一緒に聞いて頂きたい案件もございまして。

 ……、もうしばし皆様のお時間をお借りしても?」


「もちろんですとも、お掛けになって下さい。お飲み物は何がよろしいですか?」


「ありがとうございます、では皆様と同じ物を」


紗雪さゆき


「かしこまりました」


 そこは正しく敬語なんだな、紗雪。

 テキパキとお茶の用意をしている姿を眺めていると、ふいに高畑社長と目が合った。何故にウインクする……?

 とりあえず会釈だけでも返しておこう。ニカリと笑いかけられた、何なんだこの人は……。




さぁ本日も23時に投稿する、かも。

コラボ作品が発表されました。タグリンクから飛ぶようになっておりますので、合わせてお楽しみ頂ければ幸いです。

(※現在は解除されております。コラボ作品については私の作者マイページから『お断り屋のお仕事:心の中へ紡ぐ糸』をご覧下さいませ)


コメント・評価・ブックマーク、よろしくお願い致します。


9/16誤字修正「かしこましました」→「かしこまりました」

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