浮気現場シチュ
本日1回目の投稿です。
このシチュは私のオリジナルです。オリジナルです!大事な事なので2回言いました。
プレイヤーとして役柄に入った優希視点でお送り致します。
10/30 感嘆符後のスペース追加、三点リーダーを偶数に変更、ルビ等その他追加修正
何がそこまで大事だったのか今となっては思い出せない。
「あなた、これは違うの! たまたま古い友人に会っただけなの!!」
何が違うと言うのだろうか。妻が旦那以外の男と抱き合っているのを見て、浮気以外の何に見えると言うのだろうか。
「そ、それじゃ!」
走り去って行く、妻が言うところの古い友人とやら。古いと言う割に、妻よりも大分若そうな外見。
たまたまばったり会っただけだと言うのなら、何故走り去る必要があると言うのだろうか。
浮気現場を見られて、走って逃げた以外の解釈があるだろうか。
「あなた! 信じて!!」
僕は僕が見たモノを信じる。妻が僕の知らない誰かと抱き合って、見つめ合っていた。
あと数秒僕に気付くのが遅かったら、それだけでは済まなかったんじゃないだろうか。
「お願い、私を見て!」
見ている。僕は妻だった人を見ている。色褪せた背景の中、ぼんやりと浮かぶ輪郭。
僕の目から涙がそっと零れ落ちる。
「……、ごめんなさい……」
何故謝るのか。ぐちゃぐちゃな感情をそのまま吐き出したい。思う存分叫んで罵りたい。
そう思うのだが、思うように声が出ない。喉が乾いて張り付いたような感覚。肩が震えているのが分かる。膝もガクガクとして、突っ立っていれば崩れ落ちてしまいそうだ。
歩こう。
「どこに行くの!?」
君のいない所へ行こう。
見たままを、感じたままを受け止めて、そして僕は一人、歩こう。
「待って!」
待てない。待ったら、止まったら倒れてしまう。
歩かなければ。
「そんなフラフラして、危ないわよ!」
そうかい、フラフラしているかい?
もう自分では分からない。頭を殴られたような衝撃を受け、今にも倒れそうなんだ。
「とりあえず家に帰りましょう?」
「触るな!!」
びっくりした、怒鳴っているのは僕だ。僕は僕が怒鳴った声でびっくりしたんだ。
「話を、聞いてほしいの……」
聞きたくない。聞きたくないんだ。
「お願い、お願いだから……」
何故君が泣いているんだい? おかしいなぁ、僕は何か君に悪い事をしてしまったかな?
仕事で帰りが遅かったかい?
疲れてすぐに寝てしまうからかい?
君の話を聞いてやれなかったからかい?
「1人にしないで……」
僕は1人になりたい。
そうだ、明日は会社を休もう。昼まで寝て、起きたらビールを飲んでまた寝よう。
今ならまだ会社に人がいるはずだ。いつもなら僕もまだそこにいるはずだったんだ。まだそこにいたなら、君をここで見かける事もなかっただろうね。何で今日に限って早く会社を出たんだろうか。
まぁいいか、会社に電話しよう。
「もしもし、明日会社を休ませてもらいますのでお願いします」 ぷちっ、、、
「あなた!? 休むってどういう事なの? 休めるわけないでしょ!? あなたがいなければ誰が……」
「黙れ」
ケータイに着信が入る、会社からだ。もう休む事は伝えたんだ、電源を切っておこう。そうしたら誰にも邪魔されず、ゆっくり家で寝れるだろう。
「でも!」
「うるさい」
こいつの電源も切れたらいいのに。
そうだ、家に帰ればこいつがついて来るだろう。そうすればゆっくりは出来ないんじゃないか?
やっぱりこいつのいない所へ行こう。
「待って!」
「待たない」
「でも」
「しつこい」
「どこに行くの!?」
「知らない」
「明日会社休むって本気なの? あんなに頑張って事業を軌道に乗せて、売り上げもどんどん増えて来たって言ってたじゃない!
もうしばらくは休めないけど頑張るって言ってたじゃない!!」
「もう働く意味がなくなった」
「え……!?」
「愛する妻はもういない。誰かの為にと思うからここまで頑張れた。でももうダメだ、気力がなくなった。
僕がどれだけ働いても、この気持ちは伝わらないんだ。もういいんだ」
「……!? ごめんなさい……」
「どうでもいいさ、もうほっといてくれ」
「淋しかったの!! あなたが頑張ってくれているのは分かってるわ、でもせめて誕生日くらいは誰かと……!?
もしかして、私の誕生日だから早く帰って来てくれたの……?」
そうだったそうだった、今日は妻だった人の誕生日だった。だから昨日と一昨日と、無理をして仕事を前倒しでやっつけて、それで今日早めに帰ろうと思ったんだった。
あぁ、家へ届くように手配した花束、もう指定の時間が過ぎているな。どうでもいいか。
「どうして、どうして私はこんな、こんな取り返しの付かない事を……」
地べたにへたり込む妻だった他人。そんな憐れな姿を見ても、僕には何も感じられない。
でもせめて、僕からの最後のプレゼントを贈ろうか。
「さようなら」
受付フロアに戻った後、浮気相手役のエキストラをしたプレイヤーに声を掛けられた。
「噂通りすごい奴だな、お前。モニターで続きを見てたけど、顔面蒼白で涙まで流して、本当に浮気された旦那みたいな顔してたぞ!」
いや、だってそう言う役じゃね?
「そうは言ってもなかなかあんな演技出来ねぇって。まぁ俺には出来ないから今だにエキストラなんてしてんだけどな」
「そうは言わず頑張って、青葉君!」
瑠璃が後ろから彼の背中を叩く。青葉っていうのかこの人。
「る、瑠璃さん!? ハイ! 俺頑張ります!!」
「アナタ、エミルちゃんの事で相談があるって先輩がもうすぐ来るの。オフィスで待ちましょう」
そう言って俺の腕を取って歩き出す瑠璃。
「アナタ……? エミルちゃん……??」
あ~あ、せっかくやる気出してんのにすぐ落とすような事するなよ、かわいそうに青なんとかさん。さようなら~。
私のオリジナルシチュは如何でしたでしょうか?さぁ批判でも何でもコメントして下さいお願いします。
さて、これにて第二部完となります。
この後23時に投稿する分から第三章、幼馴染と優希の過去編へと突入です。
引き続きお楽しみ頂ければ幸いです。
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活動報告で幼馴染の名前を募集していたとは言え、本編では出た事のない幼馴染という存在をさらっとネタバレをする作者、頭大丈夫か?




