牡丹のターン
本日1回目の投稿です。
10/26 感嘆符後のスペース追加、三点リーダーを偶数に変更、ルビ等その他追加修正
「へへへ、ちょっと遠回りしちゃった」
そうだな、何やら道が違うような気がするなと思ってはいたが、そういう事か。
スペックスの自社ビル、そして宮坂三姉妹が暮らしているという高層ビルの地下駐車場へと車を停め、エレベーターに乗り込む。病院くらいでしか見ないような広いエレベーター、さゆが鞄から取り出したICカードをパネルへ近付けるだけで、ゆっくりと上昇し始めた。
「最上階はあたし達の部屋しかないからね。このカードか上からの操作がないと行けないの。多分牡丹ちゃんが優希のカードを用意してくれると思うけど」
最上階の1フロア全てがオーナーである瑠璃達の住居らしい。エレベーターが開いて最初に目に入ったのは、小さな噴水のある庭だった。木や花が植えられていて、土の匂いがする。
「さ、入りましょ。2人ともカンカンだったりして」
玄関を開けると、腰に手を当てている瑠璃と腕組みしている牡丹さん。怒ってらっしゃる。
「お、お邪魔しまぁす……」
「優希さん? ここはあなたの家なんですよ?」
何その新世紀的なセリフ、俺にもその茶番に乗れってか?
「た、ただいまぁ」
「アナタぁ、寂しかったぁ~」
首筋に鼻をすりすりする瑠璃、正妻モード発動中。
「くんくんっ、石鹸の匂い……」
あぁ、そうね。俺はお酒のニオイも感じてるけど。
「牡丹さん、瑠璃はいつから飲んでるんですか?」
「2時間くらい前からですかね。そわそわして落ち着きなく結構なペースで飲んでましたよ」
止めてあげて~。ほら、抱き着いたまま寝息を立ててらっしゃる。仕方ない、このままお姫様抱っこで部屋へ連れて行くか。
「あ、いいな~あたしも~!」
そんな事より早く部屋どこか教えてくれよ!
やたらデカい部屋に置かれたやたらデカいベッドへ瑠璃を下ろす。
案内したさゆ、いや紗雪が手早く服を脱がして行く。やたらデカい胸、眼福です。ほんのり赤くなった太もも、とってもエロいです。
「見てないで牡丹ちゃんのとこ行って来て! お義兄ちゃんの部屋に案内してくれると思うから!!」
例え寝てても瑠璃の前では義妹なのね、さりげなくボディタッチしてから玄関へと戻る。
無言で俺の荷物を持って歩き出す牡丹さん。ここは素直について行こう。
ここです、と通された部屋は、家主であるはずの瑠璃の部屋よりも大きかった。加えて、簡易キッチンや浴室、トイレまで付いている。ここだけで生活出来るんじゃない?
「ここは瑠璃ちゃんが、いつか私達の勇者様が現れた時の為にと用意した部屋です」
う~ん、ちょっとリアクション取り辛い。
持って来た荷物を用意された棚やタンスに片付け、今度はフロア全体の案内が始まる。
瑠璃の部屋はさっき入った。紗雪の部屋は勉強中と書かれたプレートが掛かっており、大きな音で歌を流しているのか廊下まで漏れて聞こえる。
ここが私の部屋です、と牡丹さんが中に俺を招き入れて、後ろ手でバタンと扉を閉めた。
「私は怒っています」
怒ってらっしゃる。紗雪と2人で食事を済ませた事だろうか。
「私だけ仲間外れです」
仲間外れ? 瑠璃も牡丹さんと一緒にいたはずだし、仲間外れって事はないと思うが。
腕を組み、眼鏡の奥の瞳が鋭く見つめる。
「何で私だけ『さん』呼びなんですか……?」
あ、はい。え~っと、呼び方を変えるイベントがまだ発生していなかったもので、はい。
「きっかけがなかった、そういう事でいいんですね?」
こくこくと頷く。
「じゃあ、きっかけを作りましょう」
怒った表情のまま、顔を朱に染めて恐る恐る俺に抱き着いてくる牡丹さん。おふっ、柔らかい感触。そこには何が詰まっているのか、愛と希望か? 夢と幻か?
ゆっくりと移動して、2人ベッドへと腰掛ける。頭を胸へと誘われ、よしよしと優しく撫でられる。とても心地良い感触。
「私はね、優希。弟みたいな存在が欲しかったの。だからゆうの事を喫茶店で見た瞬間、この子が欲しい! と思ったわ。
家に連れて帰って、甘えさせてあげたい! 何でも私がやってあげるって思ったの。
ご飯を作って食べさせて、一緒にお風呂に入って洗ってあげて、パジャマを着せてあげて、一緒のベッドで寝るの。
甘えん坊のゆうは、私の身体に触れていないと寝付けないの。もぞもぞ寝返りして、少しずつ私に近寄って来て、さも自然に当たったかのように触れるのよ。
私が寝ていると思ったゆうは、少しずつ、ホンの少しずつ大胆になって行くわ。そしてついに意を決して揉むの。
私はその手を自分の両手で優しく包むの、いいのよ? 好きにしていいのよって。それで……」
いつまで続くんだろう。
ハっ! とコチラの世界へと舞い戻った牡丹さん。今にも顔から火が出そう。それでもこの勢いを止めてなるものかと、牡丹さんは続ける。
「と・に・か・く! 私の事は、外では牡丹と呼び捨てにして? 瑠璃ちゃんと紗雪ちゃんと一緒。
で、私と2人きりの時だけは、『お姉ちゃん』よ! いい!?」
目を合わせず言いたい事だけを言う牡丹。目線が定まらずキョロキョロと動き、忙しなく唇を舐めるように濡らす。
俺の反応が気になったのか、チラっと上目使いで見る。お姉さんしたいのに、これではまるで初心な少女だ。
リードされているようにリードするのも男の度量か、もう一度胸を目掛けて抱き着いて、
「分かったよ、お姉ちゃん」
下から見上げてそう答えると、パァ~っと花咲くように表情が明るくなり、強く抱き締められる。
「うん! うん! ゆう可愛いねぇ、大好きだよ!!
これからい~っぱい甘えさせてあげるからね? 遠慮しちゃダメだぞ?」
「うん、僕もお姉ちゃん大好きだよ!」
い~っぱい甘えさせてもらいました。
いつもありがとうございます!
次話は23時投稿予約済みです。リクエスト頂いたシチュエーションの投稿となります。
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