表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
友達の彼女の告白を断ったら、お断り屋にスカウトされました!  作者: なつのさんち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

204/212

会えない恋人とZOOMでやり取り


『もしもーし、今大丈夫?』


『おつー』


『おつおつー、って言うてもうちは今日何もしてへんねんけどなー』


『おばちゃんの手伝いくらいしろよ』


『いやそれはしてるけどさ、わざわざ言わんやん』


 何の説明もなく始まる動画。タイトルは『会えない恋人と会える浮気相手』となっている。

 画面右には希瑠(きる)紗丹(さたん)、左には結城(ゆうき)エミルが映し出されている。

 先日開設されたスペックスのYouTubeチャンネルで、登録者数は五千人ほど。この数字だけを見ると人気のチャンネルとは言えないが、すでに収益化されており再生数もかなり回っている。


『あー、もう会えんようになって三年くらい経つなぁ』


『そんな経つかぁー、まだ一ヶ月も経ってへんやないか』


 二人は関西出身で、生まれた時からの幼馴染みである事は広く知られている。

 結城エミルが用事で実家へ帰らなければならないタイミングで緊急事態宣言が出され、東京へ戻れなくなってしまったようだ。

 女優として人気を博し、大注目されている。そんな有名芸能人が不用意な行動を取ると、マスコミやSNSで叩かれるのは目に見えている。

 飛行機や新幹線が全面的にストップしている訳ではないのだから、戻ろうと思えばその日にでも戻れるだろうに、大事を取って事務所が実家に引き籠もっているように指示を出しているのだろう。

 幸か不幸か、テレビの仕事は実家でもリモート出演が可能。女優としての活動は出来ないが、バラエティなどの出演依頼が多いようだ。


『そっちはどうなん? お断り屋のリモートプレイの準備は進んでるん?』


『おう、ぼちぼち本格始動出来そうや』


 希瑠紗丹の職業はお断り屋のプレイヤーがメイン。スペックスの人気ナンバーワンでありながら、経営にも携わっているのはアクトレスにもよく知られているところ。

 初出演で初主演の映画が公開されるだとか、CDデビューするだとか、大きなお断り屋イベントの企画を進めているだとか色々な情報が錯綜しているが、何が本当なのか世間にきちんと伝わっていない。


 緊急事態宣言が出て以降、スペックスだけでなくどこの系列のお断り屋も全て営業を自粛。スペックスがオープン準備を進めていたハイスペックスの正式オープンも白紙撤回が発表された。

 営業再開の目処が立たず、アクトレス達が禁断症状に苦しみ出したタイミングで、スペックスのYouTubeチャンネル開設やTwitter・Instagramのアカウント開設を発表。

 さらにはアクトレスとのリモートプレイについても言及され、当分の間はオープンベータテスト扱いとなりプレイ料金が無料になるキャンペーンを打ち出した。

 まさに時代を逆手に取ったアグレッシブな経営戦略である。YouTubeチャンネルのメンバーシップ登録や生配信でのスーパーチャットによる投げ銭など凄まじい収益を上げており、スペックス経営陣が一時課金機能を停止させたほどだ。

 アクトレスによる動画コメントへの投げ銭させろコール。TwitterやInstagramのDMに電子マネーの送り付け。スペックスビルへ直接現金書留を送る猛者まで出る騒ぎとなり、課金機能を復活させてアクトレスが勝利宣言をするなどある意味炎上している最中だ。


優希(ゆうき)、お風呂沸いた。一緒に入ろ』


 エミルのものではない音声をマイクが拾った。少し遠い位置にいるのか、小さい声だが辛うじて聞き取れるレベルの女性の声。


『えっと、誰かいるん?』


 エミルの表情が強張る。幼馴染みであり、CMでも共演を果たし、この二人の仲がとても親密でただの幼馴染みではないだろうと噂される間柄。

 まさかそんな、エミルと離れ離れの状況で他の女を部屋へ招き入れるなど……。


『いやいやいや誰もいいひんよー』


 紗丹がカメラを付箋的な何かで隠した。しかし誰かと会話しているような音が漏れ聞こえている。


『お風呂入ろって聞こえた、女の声で』


 エミルがなおも紗丹へ問い掛けるが、紗丹はその声を聞いていないようで、何も答えを返さない。

 エミルがカメラを睨み付けながら、手元のスマホを操作して耳にあてた。発信音が小さく聞こえる。電話を掛けているようだ。相手は……。


『prprpr♪ prprpr♪ prpガチャ、ツー、ツー、ツー』


 ダンッ! エミルがスマホを机へ叩き付けた。


『ゆーちゃん、ゆーーーちゃん、ゆーーーきーーー!!』


 ガンガンとパソコンのキーボードを叩き付けるエミル。眉間に皺を寄せるその表情は、とても動画公開すべきものではない。

 そしてそれは紗丹にも言える事だった。エミルのキーボードを叩き付ける衝撃が画面越しに伝わったかのように、紗丹がカメラに貼った付箋がハラリと落ち、紗丹と女の子が見つめ合い今にも唇が重なるかという光景が映し出された。


『ひぃ~~~めぇ~~~!!』


『……ちぇっ、良いところだったのに』


『今舌打ちしたやろ!』


 紗丹と見つめ合っていた女の子は橋出(はしいで)姫子(ひめこ)。エミルと同じ事務所に所属している女優で、舞台出演をきっかけとして最近人気上昇中である。


『舌打ちもするし舌も合わせる。でもきっとそれだけじゃ済まない』


 エミルを挑発するかのようにカメラを見つめながら話す姫子。さらに眉間の皺を深くして目を尖らせ顎をしゃくれさせるエミル。これ以上ないというくらいに怒っているのが伝わって来る。さすが人気女優、どんな表情でもこなして見せる。


『アンタなぁ、感染症が流行ってるこの時期に濃厚接触したらアカンねん! さっさと離れぇ、さっさと帰れ!!』


『私も優希も抗体検査を受けた。二人とも反応なし。ゆえに濃厚接触しても問題なし』


『抗体検査は体内に抗体が出来るまでに時間がかかるさかい今現在感染してないって証明するのは難しいねん! せやしアンタは陽性や、有罪や!!』


 こっそり画面外へ逃れようとしていた紗丹の首の後ろに両手を回し、頬と頬をくっつける姫子。紗丹は後頭部しか映っていないのでどのような表情をしているのか確認出来ない。


『断る。もう手遅れ。私達はもう離れられない運命。優希もそう言ってる』


『ふがふがっ』


 姫子の手で口を塞がれているのか、紗丹が何か喋ろうとするも何を言っているのか分からない。


『そうか、ほな今から行くわ』


『ダメ、仕事に影響が出る。芸能界引退に追い込まれるかもしれない』


『そんなん関係あるかぁ!!』


『そう、でもどんなに急いだとしてもここに到着するまでに二時間半は掛かる。その頃には全てが終わっている』


 キリッ、と姫子は決め顔でそう言った。何の全てが終わっているのだろうか。とても興味深い。


『今すぐ行くからそこで待っとき』


 エミルがそう言うと、パソコンのカメラにぬぬぬっと顔を寄せ、そして紗丹のパソコンのディスプレイからにゅ~っと這い出して来た。まるでジャパニーズホラーな展開を見せる。

 そしてエミルは乱れた髪の毛の隙間から姫子を睨み付ける。対する姫子は紗丹を抱き締めたまま、口を開く。


『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛』


 エミルではなく紗丹に襲いかかる姫子。そして同じく紗丹へ滲み寄るエミル。そして恐怖のあまり顎が外れそうなほど口を開けている紗丹がどアップで映し出され画は暗転する。


 最後に「この物語はフィクションです」という字幕が浮かび上がって来る。




「って展開はどうかと思うんだけど、牡丹(ぼたん)ちゃんはどう思う? あたしはウケると思うんだけど」


「却下」


「えー、面白いじゃん」


「お断り要素が全くないもの。お断りって言えばいいって訳じゃないのよ?

 こんな脚本じゃダメよ、紗雪(さゆき)ちゃんの自己満足でしかないわ。キャスティングに自分が入ってないからっていう個人的感情も必要ない。

 アクトレスへはこの動画を通じてプレイをしているという疑似体験をしてもらいたいの。

 実際に恋人や夫には浮気をしてほしくないけど、でももし浮気現場を目撃してしまったら……、そういう胸を締め付けるような疑似体験がお断り屋の売りなのよ。

 それにね……」


 牡丹の持論展開は紗雪が勘弁してくれと頭を下げるまで続いた。



ポイントいっぱい欲しい系作者なのでブックマークとポイント評価お願い致します。


あと、このような雰囲気の話なら無限に書けるので、このキャラ出してほしいとかこういうプレイやシチュエーションが読みたいなどリクエストございましたら

私のTwitter(https://twitter.com/natunosannti)へメンション・リプライ・DM下さいませ。

全てにお答え出来る訳ではないですが書けるかどうか考えさせてもらいます。


次回投稿は恐らく来週金曜22時(まだ何も書いてない)

それでは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ