新しい朝が来た
第二部開始!
11/4 感嘆符後のスペース追加、三点リーダーを偶数に変更、ルビ等その他追加修正
夢を見ていた。とても優しく心地良い、まるで天にも昇るようなふわふわとした感覚。
頭がぼーっとして、心臓が熱い血流をせわしなく送り続ける。腰周りは涼やか、そして天へと昇ろうとそびえ立つ肉b……!?
急いで上半身を起こすと、目の前には昨日も見た白いブリムがあった。
「何で脱がそうとしてんの!?」
「おはようございます、旦那様。失礼致します」
ちょちょちょ~っと、ストップ! 口をあんぐり開けて何しようとしてんの!?
「失礼しますじゃなくて!!」
「朝のご挨拶をさせて頂こうと思いまして」
「紗雪ストップ! いつあの2人が起きて来るか分からんから止めてくれ!
起き抜けから昨日みたいになるのはさすがに辛い!!」
恨めしそうに見つめてもダメ! 唇を尖らしてもダメだ!!
「時間はまだ6時と早ようございます。お2人が起きられるまであと1時間は猶予があるかと」
「俺が止めろと言っている」
キュッと目を閉じ、そして「失礼致しました」と衣服の乱れを直してくれる。はぁ、もう少しでまた流されるところだった。
紗雪はすでにメイドモードでフル装備。いつのタイミングでモードが切り替わるのか、機会があればマジマジと見てやろう。
「今日は平日か、紗雪は大学だろ? 一度家に帰らなくていいのか?」
「授業はありますが、旦那様という主と出会う事が出来ました。お世話に支障が出ないよう大学は辞めます」
朝から重いその想い。このルートを選択すればもれなくヤンデレ化するフラグのような気がする。
強引に軌道修正を掛けよう。
「大学を辞める事は許さない、従者が高卒など俺の格に関わる。俺の為にも勉学に励め」
目を丸くする紗雪。義妹モードのさゆの場合でも大学は辞めるつもりだと言うのだろうか。とりあえず大学は続けさせなければ。
行きたくても行けなかった奴もいるわけだし。
「紗雪ちゃ~ん……」
寝室の方から何とも情けない声が聞こえる。扉が少しだけ開いており、牡丹さんの右目だけが見えている状態だ。ほら、何か始めようとしたら起きるんだってば。危ない危ない。
「牡丹様、いかがなされましたか?」
「あ、もうお嬢様は取れたのね。慣れるまで時間掛かりそう……。
じゃなくって私の服取って! この部屋に置いておいてくれたらいいのに~」
そうか、裸にひん剥かれてベッドに放置されてたから今も全裸なのか。
全裸に眼鏡、いいですね。寝起きの声もたまりません。ちょっとイタズラしたくなる。じ~っ。
「嫌ぁ~、こっち見ないで下さい~」
すかさず俺の視界一杯に美少女メイドのお尻が割り込み、牡丹さんを遮りながら寝室前まで移動し、服を手渡す。
「ありがとう、って何で下着が一番上に置いてあるのよ~!」
バタンっ、と閉められる扉。くそう、下着が一番上に乗ってただと? 気付かなかった、でもまだ瑠璃さんのはこの部屋にあるはずだ!
見回していると、紗雪がこちらへ近付いてきた。
「どうされましたか? 何かご用でしょうか」
いや、ちょっと美人なお姉さんの下着を探してます。おっと紗雪ちゃんジト目、気付かれてるか。
「牡丹様へ一緒にしてお渡ししておきましたので、どうぞご安心下さいませ」
そっか~、それなら安心ですね。でもさ、自分で止めておいてアレだけどさ、あんな事されたらやっぱりさ、そわそわするじゃん?
お、閃いた。目の前にいる美少女メイドのスカートを持ち上げて覗き込む。
「……!?」
さすが出来る家具、驚いても声には出さない。でもこれはどうなんだろうか。
「紗雪、何で完璧な従者であるはずのお前がこんな可愛らしいイチゴパンツなんて履いてるんだ?」
「うぐっ……、替えが足りなくなりまして、仕方なく予備の予備を……」
白いガーターベルトとストッキングとの間に挟まれたイチゴパンツ。これは何というミスマッチな組み合わせなのだろうか、まるで夏に降る雪のような……。
「あら、お楽しみ中悪いわね、お邪魔するわよ」
あぁ、やっちまった……。
寝室から変態美人ズの登場。瑠璃さんは朝であろうがキャラ変わらないんだな。いやそれが当たり前なんだが。
「あれ? 優希さんのスマホ、通知でLEDがピカピカしてますよ?」
あ、ホントだ。滅多にお知らせをしない俺のスマホ。どうしたんだい? いい朝だね!
スマホを受け取って、話題を逸らすようにスワイプ・フリックする。紗雪が乱れたスカートを撫でるようにして直している。うん、服装の乱れは心の乱れですよ。
「え~っと、プレイ予約の通知? 何じゃコレ」
「えっ!? 優希君まさかプロフの情報を公開する設定に変えたの?」
「ええ、昨日お2人が潰れてから紗雪と2人でプロフを埋めたんで、公開にしたんですけど」
そう言えば部屋のどこかでヴィーンヴィーン鳴ってたな、冷蔵庫の音かと思ったらコレの通知だったか。
「寝る前にオフの日と出勤の時間帯を指定した!? もししてないんだったら今すぐ全部オフにしなさい!
オフの日に指定した日以外は全て出勤可能日になって予約が入りまくるわよ!!」
な、何だってー!? 思わず紗雪を見ると、しれっと目を逸らされた。忘れてたな?
「私はただのメイド、何の事やらさっぱり」
都合のいいこって。
幸いにも情報を公開したのが夜中の1時前、そして現在朝の6時半という事で、予約が殺到という事態は避けられた。
ただ、5件の予約がすでに入っており、こちらについては受け入れるしかなさそうだ。
瑠璃さんの持つタブレットにはSpecial Experience、通称スペックス所属プレイヤーの全予約と出勤日を管理するアプリが入っており、こちらでも予約が入っているのが確認出来た。
ただ、ここで問題が。俺は週3日のペースでアルバイトのシフトを入れているのだが、予約の5件中3件がシフトと被ってしまっている。
「何とか予約の方を優先出来ない? 新人プレイヤー側から予約をキャンセルするなんて絶対にダメよ!」
ん~、まぁ今日バイト先に顔を出して交渉してみようか。それよりもまず、今日入っている予約を先にやっつけてしまわないと。
「ちょっと待って優希君、このプレイヤーネームもしかして……」
お? 気付いたか、プレイヤーネームよりも先に予約がどうのこうの言うからスルーされたかと思ったわ。
「希瑠……、紗丹? 私達の名前から一文字ずつ取ってくれたんですね?」
そうそう、その上でそれらしい単語になるように考えたらこうなったわけ。魔王を殺すなんて名乗る厨二病患者とプレイしたいって思わねぇだろと思ったんだが、すでに5件も入ってるわ。意味ねぇな。
「あなたは、あなたって人は……!」
瑠璃さんが顔を真っ赤にして震えている。
え、わざと酷い名前を付けた事に怒ってらっしゃる?
「それでこそ私達の主人公よ!! 魔王殺しと言えば勇者、勇者と言えばパーティーの主!
さっきから紗雪を呼び捨てにしていると思ったら、そう言う事だったのね!!」
「瑠璃、昨夜旦那様は私達の事を受け入れると言って下さいました。
……、良かったですね」
おいただのメイド、ホント都合の良いシステムを採用しているなお前は。美少女メイドとさゆの境界線、お前次第じゃねーか!
瑠璃さんが紗雪にガバッ! と抱き着き、ギュ~と抱き締めている。
「良くやった、良くやったわ紗雪!
あ~、私の夢が叶う時が来るとは……、うぅぅ~、ひっく、ひっく……」
感動して顔をぐしゃぐしゃにしてしゃくり上げている瑠璃さんを見ると、勇者うんぬんまでは考えていませんでしたとは言い出せなくなってしまった。
まぁいいか、だいたい合っていると言う事で。
紗雪が瑠璃さんの背中をポンポンと優しく叩きながら、ニヤァ~っと笑っている。悪い顔だ。
「優希さん、これからどうぞ、私達をよろしくお願いします」
「あ~っと、ええ。こちらこそ、よろしくお願いしますね」
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23時に次話投稿予定です。
9/6 R15指定相当へと描写を変更致しました。




