第01話 恋人達(の撮影風景)
ローファンタジーで新作を投稿した記念SSです。
「はいカーーット!! エミルちゃん、さっきからずっと顔ニヤけ過ぎ。いい? このシーンは事が終わってからしばらく経って、我に返ってこの状況から逃げ出したくなったっていうシーンだから。そんな幸せそうな顔はこのシーンの前に終わってるの。
ってかわざわざ言わなくても分かるよね?」
「はぁい、すみませ~ん」
すみませんじゃねぇよ、もう何回目だよ!? 現場のみんなある程度の事情を知られてしまってるとはいえ、これはちょっとやり過ぎだろ!!?
ってかこれ映画の撮影だよな!? 全国でロードショーするんだよな!!!? Vシネマじゃないよな……?
「紗丹君は逆にもうちょっと力抜いてもいいくらいだからね。渡が時恵を説得するのにそんな怖い顔してたらダメだよ」
大波監督から俺にもダメ出しが来た。そりゃ怖い顔にもなるよ。何回NG出せば気が済むの? この人気女優さんは。
いつまで人前で、というかカメラの前で抱き合い続ければいいんですかね!?
「あはっ……♪」
夏希がはしゃいでいる……。人前でイチャイチャ出来るからってそんなに嬉しいんだろうか。ってかこれ仕事。ちゃんとやって下さい。
あと脚をバタバタしないで。刺激しないでお願い。そこは演技出来ないから。
状況としては夕暮れに染まる部屋、ベッドの上で抱き合う男女というシーンの撮影。タオルケットで隠れているとはいえ俺と夏希は密着している。映画冒頭の1シーンの撮影中なのだが、何度も何度も夏希がNGを出すのでなかなか離れられない。
「ちょっと休憩挟もうか?」
「いえ、大丈夫ですので!!」
お前の頭が大丈夫じゃねぇつってんだろ、いい加減にしろ!!
「紗丹君も行ける?」
「いえ、ちょっと一回きゅうけ……」
休憩を挟んで下さいと言いかけたところで夏希の手が俺の身体を撫で回す。タオルケットで隠れているがこれでは公開プレイだ。お断り屋とは違う意味で……。
「大丈夫、だよね?」
夏希、いつからそんなイケないコになったんだ……。小悪魔どころの話ではない。
結城エミルの事を清純派女優と謳うメディアは少ないようだけど、こんなシーンを公開した後では来る仕事の内容が変わってしまうんじゃないのか?
おい石田、仕事しろって言ってんだろうが! こういう時に限って現場にいないんだからホント使えねぇな……。
「分かった、分かったからその手を止めろ」
唇を動かさず小声で夏希に答え、監督には大丈夫ですと伝える。
「この状況をお断り出来ないなんて、プレイヤー失格よね」
グサッ!! 撮影を見学している姫子の呟きが胸に突き刺さる。
「幼馴染としては合格だから良いんだよ? あと、こいび」
「はいじゃあ本番行きま~す!」
おい幼馴染、舌打ちすんな。ひめも指さして笑わない! 頼む煽んないで終わんないから!!
「よ~い」 キュー
「渡、私もう限界だよ……」
「時恵……」
この後もめちゃくちゃNG出した。
ネバーエンディングバッドエンドを乗り越えろ! ~諦めたらそこで世界は終了です~
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