ネバエバ製作発表記者会見
「そう言えばさ、電話か何かでお断りサービスの展開をするって言ってなかったっけ?
ビデオチャットだっけ?」
「あ゛?」
思わず出してはいけないような声を出してしまった。紗雪、今じゃないだろ!?
頼むわ、これ以上忙しい状況を作らんでくれないか……。
「全国をカバー出来るサービスだって言ってたな、覚えているぞ」
すかさず賢一が紗雪の呟きに乗っかって来た。目つきが経営者そのもので非常に鋭い。怖い。
「でもまぁ……、今はそれにも手を出すほどの余裕がないのは分かり切っている。
いずれサービス開始して、スペックスの全国展開への足掛かりにするという予定に留めておくべきだな」
さっすが凄腕経営者! 良く分かってらっしゃる。
俺達は今、ハイスペックスのオープンへ向けての準備をしている。場所はスペックス最上階の自宅。
賢一さんからハイスペックスの準備はどうなっているんだ? と問い合わせがあったので、ご足労頂いたのだ。
姫子が早く準備しようと俺達をけしかけてくれたお蔭で、賢一さんに叱責されずに済んだ。
宮坂三姉妹と賢一さん、そして俺を含めて5人であ~でもないこ~でもないとハイスペックスの内装などについて話し合いを続けていると、俺のスマホへ着信が入った。
表示されている名前は俺のサブマネージャーのもの。ちなみにメインのマネージャーは高畑社長らしい。
普通社長自らタレントのマネージャーなんてするものなんだろうか……。
「もしもし」
『お疲れ様です、紗丹さん。いよいよ明日になりました!』
「は? 何が明日になったんですか?」
『ネバーエンディングバッドエンドを乗り越えろ! の製作発表記者会見ですよ!』
はぁ……。
『明日の11時からになりますので、ご自宅へ9時にお迎えに参りますので!!』
「えっと、何で俺の自宅へ迎えに来られるんですか?」
分かり切った事を、あえて聞いてみる。瑠璃、そして牡丹を睨み付けながら。
2人は俺のスマホに着信が入った時から目を逸らしている。
知っていたんだよな? 明日って知っていたんだよな!?
『もっちろん、紗丹さんの主演映画の製作発表ですから!
エミルさんも姫子ちゃんも出席されますよ!!』
何で夏希もひめも俺にその事を言って来ない!? おかしいだろ!!
『ちなみに見てみや! のアナウンサーである橋内さんがレポーターとして会場へお越しになられる予定です。
今や彼女はAランクアクトレスですからね。いきなりプレイを振られる可能性も考えておいて下さいね』
止めてくれ!!
「場所はどこだ、花江に伝えないと俺が怒られる」
止めて下さいお願いします……。
パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ!!!!
カメラのフラッシュで目が焼かれる。チカチカと視界が塞がれて、頼みの綱である橋内さんがどこにいるのか分からない。
プレイでも何でもするから誰かこの状況から助け出してくれ!
宣言通り翌日9時に迎えに来た俺のサブマネージャー、高畑花蓮さんに連れられて、某所にある会見場へと入った。
ちなみにひめも一緒だ。何せ一緒に住んでるんだから、別々に行く必要性が見受けられない。
俺達の到着から少し遅れ、夏希も控室へと入って来た。
「あれ? 結局ブレザーになったんだ」
そうそう、アレだけ瑠璃が学ラン詰め襟を推していたにも関わらず、結局ブレザーになるという結果に。まぁそんな事はどうでもいいんだけれども。
「私達の学校は詰め襟とセーラー服だったけど……。
何か、懐かしいな」
夏希のブレザー姿を見て、思わずそう呟いてしまった。
見つめ合う2人、その間に突如現れた小さな手が、俺のほっぺたをプニッと摘まむ。
「私も同じのを着てるのに……」
「ひめも良く似合ってるよ」
3人揃ってニコニコしていたい雰囲気だが、俺の笑顔だけすごく引き攣っているのは自覚している。
だからこそ夏希もひめも、あえて俺を和まそうと気を遣ってくれているのだろう。
夏希とひめ、いや結城エミル先輩と橋出姫子先輩。2人も緊張しているのかも知れないが、それほど顔には出ていない。
やはり場数が違うからか。何というか、すごい。俺は語彙力が低下するほどに緊張しているというのに……。
控室でドキドキしながら待っていると、ノックの音と共に例のあの人が入って来た。
「やぁやぁ、今日は絶好の記者会見日和だね!
うちの所属タレントが3人も揃っているのには興奮を隠し切れないよ!!」
来た、超絶鬱陶しいのが来た。そしてさらっと俺の事を所属タレントの範疇に入れてくれるな。
リアル迷宮イベントが終わったら契約解消してやる。違約金でも何でも払ってやるわ!
「さて、では社長である私が直々にエスコートさせてもらおうじゃないか。
エミルちゃん、ひめちゃん、そして紗丹君。時間だ、皆さんに君達のお披露目をしようじゃないか」
パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ!!!!
「高畑芸能事務所の社長自ら出演者をエスコートしての登場! 今回の映画への意気込みが見受けられます!!」
声は聞こえるけど、橋内さんがどこにいるのか全く分からない。フラッシュ眩し過ぎ。
「え~、それでは『ネバーエンディングバッドエンドを乗り越えろ!』の製作発表記者会見を始めたいと思います」
今作の監督を務める、大波監督が自ら司会進行する。
「まずはこの映画の原作でありますネバエバの作者、なのちさんです」
大波監督の右隣に座っていた、WEB小説出身のなのちさんが立ち上がって一礼をする。
続いてプロデューサーや音楽監督などが紹介されて行き、ついに演者の紹介が始まった。
でもちょっと待って、普通こういうのって演者であるタレントが真っ先に紹介されるもんなんじゃないの?
名前を呼ばれて立ち上がってさ、マイクを手に持ってさ、
「この原作は以前から注目していました。まさか自分があの時恵を演じられるなんて……、感動です!」
なんて言うもんなんじゃないの?
大波監督に名前を呼ばれた結城エミルは立ち上がり、そして一礼のみで再び座ってしまった。
おかしい、何かがおかしいぞこの記者会見は……。
同じく橋出姫子も紹介されて立ち上がり、一礼のみで座ってしまう。ヤバイ、何かがヤバイこの空気。
次は俺だ、次は俺の名前が呼ばれる。夏希とひめと同じように、名前が呼ばれたら立ち上がり、そして一礼してすぐに座る。
それでいいんだよな? な?
落ち着け、深呼吸。すぅ~、はぁ~。よし、後は名前が呼ばれるだけ。
「希瑠紗丹君」
大波監督に名前が呼ばれた。立ち上がって、会場全体に対して一礼し、そして座るだけ……。
「店ではナンバーワンか何か知らないけど、素人に主演なんて務まる訳ないでしょうに」
凛、とした通る声。決して大きい訳ではないその一言が、会場に大きな波紋を作った。その声は聞き覚えのある声、しかし聞いた事のない声色。
示し合わせたかのように、会場の誰も口を開かない。
会場の中ほどに座っている、着物姿の女性へと視線を送っている。
あぁ、橋内さんって言ってたのはブラフだったのか……。やってくれたな高畑社長、そして賢一さん。
全てはこの為の仕込みだったという訳か。
分かった、やりますよ。
受けて立とうじゃないですか。
もう一度静かに深呼吸をして、スイッチを切り替える。
Sランクプレイヤーってヤツを見せてやるよ。
「どちらの記者さんか存じ上げませんが、あなたは私の事をご存じなのですか? 光栄です。
ですがまだ大波監督の紹介が終わっていません、もうしばしお静かにお待ち願います」
よし、プレイ開始の1ラリー目としてはこんな程度でいいだろう。
相手はAランクアクトレス。この状況でどのような返しが来るのか楽しみだ。
「お~っとあのお方は伝説の名女優、天野花江さんではないでしょうか!?
ご結婚を期に引退された伝説の名女優がなぜ今この会場におられるのでしょうか!!?」
はぁっ!? 橋内さんそれマジで言ってんの!!?
なろう運営より警告を受けたので、1話目から改稿に次ぐ改稿を行っております。
大筋は変更しておりませんが、アウトな表現と思われる部分は修正しておりますのでご了承下さいませ。
(ちなみに性的描写による警告だったのですが、すでに各電子書店で公開されております電子書籍版は改稿前のなろう版を元にしております。何が言いたいかと言うと、現行のお断り屋なろう版よりも、エロい)
(買って)




