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友達の彼女の告白を断ったら、お断り屋にスカウトされました!  作者: なつのさんち


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プレイヤーVSアクトレス

プライベードでバタバタしており毎週投稿が厳しいです。

気長にお待ち頂ければ嬉しいです。


「このタイミングで……?」


 風邪で大事を取って入院し、少し休養していた為に入っていたアクトレスからの予約を全てキャンセルさせてもらった。

 そして退院してもう1日家でゆっくりし、さぁ明日から復帰するかと出勤予定を入れた瞬間に予約が入った。


 それも、裏オプション。


「うーん……、張り付いておられるアクトレスがいらしたのね。

 なかなか運が良いと言うか、何と言うか……」


 瑠璃(るり)もこればっかりは予想出来なかったようだ。

 牡丹(ぼたん)紗雪(さゆき)も同様に、ただただ苦笑いを浮かべている。


「それだけアナタの復帰を心待ちにしておられたのか、もしくは復帰のタイミングであれば予約が入れやすいと思われたのか。

 両方ですかね?」


「それにしても裏オプションで来るってのが気になるよねぇ。

 予約をキャンセルさせてもらうのに体調を崩したってアナウンスしてるのにさ、復帰直後に裏オプションってどういうつもりだろ」


 むっとした表情の紗雪。

 俺が入院したという事は伏せてある。元々それほど大した事ではないのだ。だってただの風邪だし。風邪だよな……?


 ただ、キャンセルをさせてもらう以上は明確な理由をお伝えしなければならず、全くのデタラメを言うのは憚られた為にオブラートに包んで体調不良とアナウンスをした訳だ。

 いやだから本当にただの風邪だから体調不良以上でも以下でもないんだけど。


 で、体調不良からの復帰後に裏オプションをいきなりブチ込むってどうなの? と紗雪はアクトレス目線で憤りを感じているようだ。


「まぁ、復帰したという事は裏オプション含めてプレイ可能であるっていう事だからね」


「牡丹ちゃん、それはそうだけどさぁ!!」


 紗雪がわーわーと騒いでいるが、俺としては当然裏オプションを受けるつもりだ。

 というか、現時点ですでに予約は入ってしまっている。対応する以外の選択肢はない。


 ~~~♪♪♪


 おっと、スマホから着信のお知らせが。ディスプレイに表示されている名前は潤一(じゅんいち)さんのものだ。


『もしもし、今日から復帰だって聞いたけど大丈夫なの?』


「うん、体調は問題ないんだけど入った予約がちょっとアレでね」


 潤一さん含むプレイヤー達には俺が入院した事が伝わっている。

 が、瑠璃達からお見舞い不要とアナウンスが出ていたのでしばらく会っていない。


『アレなんだ~。僕今日スペックスに忘れ物取りに行く予定だからどうしてもアレだったら呼んでくれてもいいよ』


 いやさすがにそれはダメでしょう。

 


 そして俺は今、裏オプション専用の部屋にいる訳だけれど……。

 アクトレス、めっちゃいる。6名様の団体だ。これはさすがに想定外。


「プレイヤーが複数ってのは割と経験しているんですが、アクトレスが複数ってのは初体験です。

 上手くオーダーに応えられるか不安ですが、よろしくお願い致します」


 そう言って、俺は道子(みちこ)さんとその後ろに立っておられる5名のアクトレスへと頭を下げた。



 裏オプションとは、一度プレイした事のあるCランク以上のプレイヤーに対して、Aランクのアクトレスが使えるようになるオプションである。

 誰が、どんなプレイをするのか、一切プレイヤーに開示する事なくプレイに臨む事が出来る。

 しかも裏オプション専用のカメラもマイクもない部屋がプレイ場所。


 つまり、かなり自由が利くオプション。



「今回の総選挙期間でアクトレスランクが上がってね。絶対に紗丹(さたん)君を指名しようって思ってたのよ。

 でもだからって特別に何かしようって訳じゃなかったんだけどさ。

 ほら、ちょっとこの子達に分からせてやろうと思ってね」


 そう言って、道子さんは後ろの5名へと振り返った。

 良く見ればこのアクトレス達は二ノ宮(にのみや)派の方々じゃないか。腕を組んで不服そうに突っ立っているのは中間発表の時に道子さんとやり合っていた方だ。


「ふんっ。体調不良とか言って休んでたみたいだけど、余裕ぶっているうちに二ノ宮君がミスターハイプレイヤーの座を奪いますわよ!」


 ますわよっ! って言われても。俺ミスターハイプレイヤーじゃないし。


The() One(ワン)だって言ってるでしょうが。何さミスターハイプレイヤーって。ネーミングセンスの欠片もないじゃないの」


 いや、The Oneも大概だけどね。

 多分この二ノ宮派筆頭アクトレスがミスターハイプレイヤーって言い出したから、千里(ちさと)さんが負けじとThe Oneとかアドリブで言ったんだろうな。

 スペックスとしてはハイファイブだとかThe Oneだとかそんな定義付けしてなかったし。トップ10がハイプレイヤーってだけだったのにな~。


 道子さんと二ノ宮派筆頭アクトレスがギャーギャーワーワーやり合っているが、その他のアクトレス達はチラチラと俺を見てそわそわしてらっしゃる。

 この方々も二ノ宮派なんだろな。


「と言う事で紗丹君、あなたの魅力でこの女達をメロメロにして希瑠(きる)派に取り込んじゃって!!」


 それ何て無茶振り!? こんな雰囲気の中でいきなりプレイ出来る訳ないでしょう……。


 さぁやって見せろと睨み付ける二ノ宮派筆頭と、チラチラそわそわの取り巻き達。いくら裏オプションだと言っても無茶が過ぎるってヤツですよ。

 とは言え、無理ですというお断りは出来ない。どうしたもんか……。


 おっ、この状況はアレだから呼ぶか。紗雪に電話しよう。


優希(ゆうき)、プレイ中にどうしたの?

 もしかしてアレしてる最中に彼女に電話するプレイとかじゃないでしょうね!?』


 アレはアレでもそっちのアレではない。


「裏コード11発動。アイマスク着用の元、対象者をここへ」


『はっ!? そんなコードないんだけど!!

 あ、ちょっと待って。もしかして11(じゅんいち)って事?』


「ソレ」


『そう言えばさっきプレイヤーカウンターにいるの見たわ!

 ちょっと待っててね、すぐに送るから』


 よし、何とかなりそうだ。

 スマホを仕舞い、何が起こるんだろうと俺を注目している道子さん達に向き直る。


「さすがにこれだけのアクトレスを私1人でお相手するのは厳しいので、助っ人を呼びました。ですが、その彼は今のこの部屋の状況を知りません。

 アイマスクを着けた状態でこちらへ連れて来られますので、皆様には私が指示するまで声を出さないで下さい」


「面白そうじゃない。あんた達、分かったね?」


「ふんっ、助っ人にアイマスクさせてどうするおつもりかしら」


 アイマスクはプレイとは関係ない。

 いきなりこの状況でアイマスクを外された時、潤一さんがどういうリアクションを取るのかを俺が個人的に見たいだけだ。


「連れて来られたプレイヤーのアイマスクを外したタイミングでプレイ開始と致します。

 シチュエーションは特に考えていませんので、それぞれアドリブでいいですか?」


 アクトレス達がざわめく。


「へぇ、この状況で私達に挑戦しようって言う訳ですの?

 後でお断り出来ませんでしたって謝る事になるんじゃなくって?」


 いやぁ、さすがにそんな事はないと思うけど。

 フリースタイルと言うかエチュードと言うか、それぞれが思い思いにプレイすればいいんじゃないかなと思っただけで。


「紗丹君、なかなか面白い提案をしてくれたね。この状況はアクトレスとプレイヤーの抗争って感じじゃない。

 紗丹君を推している手前、味方に付くつもりでいたけどそうも言ってられなくなっちゃったじゃないの」


 道子さんも乗り気のようだ。

 乗り気なのはいいけど、その道の匂いを発するのは控えて頂きたい……。



 そんなやり取りをしている中、コンコンコンッとノックの音が響いた。

 どうぞと声を掛けると、紗雪に連れられて、アイマスクで目隠しをされた潤一さんが入って来た。


「お待たせ致しました。プレイヤーの二ノ宮潤一をお連れ致しました」


 二ノ宮派のアクトレス達が一斉に息を呑む。俺のお願い通り、声は我慢してくれたようだ。


「紗丹君に呼ばれて来たんですが、これはどんなプレイなんでしょうか」


 冷静そうな口調で話す潤一さんだが、若干声が上擦っているのが分かる。

 アクトレス達の前に潤一さんを配置し、一礼した後に紗雪は部屋から退室する。


「さて、潤一さん。オフなのに来てもらってごめんね」


「あぁ、良かった。紗丹君がいなかったらどうしようかと思ったよ」


 ホッとしたような声で答える潤一さん。しかし安心するのはまだ早いんだよね。


「これは裏オプションです」


 えっ!? と潤一さんが思いっ切り動揺し出す。裏オプションは初めての経験のようだ。


「聞いてないんだけど!?」


「うん、言ってないからね。

 潤一さんのアイマスクを外した瞬間からプレイが始まるからそのつもりで。シチュエーションは決めず、全ての流れはアドリブだから。

 誰から話し出すかも決まってない。いいかな?」


 良い訳ないだろう!? と声を荒げる潤一さんのアイマスクを外す。


「どういうつもりなの潤一君!? ちゃんと説明してよっ!!」


 最初のセリフは二ノ宮派筆頭アクトレスから発せられた。状況が全く分かっていない潤一さんに説明してよと詰め寄るその表情は鬼のよう。

 二ノ宮派なのに潤一さんから攻めて行くというプレイスタイル。

 よほど潤一さんの事を信頼しているのか、それとも単に潤一さんとの絡みがしたいだけか。


「と、透子(とうこ)さん!? 何故あなたがここに……」


 いいから答えてよ! と後に続く取り巻きのアクトレス達。やっとこの場に複数のアクトレスがいる事に気付いた潤一さん。

 あちらこちらから声が飛んで来る為、肩をすぼめてしまった。


「私にもちゃんと説明してほしわね、紗丹君」


 道子さんも俺に対して説明を求めるか。

 となると、俺と潤一さんの関係をどう捉えるかがポイントになるんじゃないだろうか。


「ごめん、道子さん。もう隠す事が出来なくなってしまったんだ」


「聞きましょう」


 腕を組んで俺と潤一さんを見やる道子さん。透子さんと呼ばれた二ノ宮派筆頭アクトレスも俺に視線を投げ掛けて来る。


 状況的には潤一さんと付き合っているように取れる透子さんと、俺と付き合っているように取れる道子さん。

 取り巻きのアクトレス達がどんな役柄になるかはまだ定まっていないが、とりあえずこれだけでシチュエーションを決めてしまおう。


「今まで黙っていてごめん。

 俺、潤一が好きなんだ。愛し合っているんだ!」


 ガシッ! と潤一さんに抱き付く。

 ビクッ!? と身体を震わせた潤一さんだが、すぐに俺のセリフに乗っかってくれた。


「俺達は本気なんだ、もう紗丹無しでは生きて行けないんだ!」


 キャー!! と黄色い声を上げる取り巻きのアクトレス達。

 貴女達はオーディエンスに甘んじてていいんですか? 早めに参加しておかないとどんどん置いて行かれてしまいますよ?


「ななな、何ですって!? あなた達は、男同士なのよ!!?」


「男同士で愛し合ったっていいじゃないか! 男とか、女とか、そんなの関係ないんだ……。

 紗丹を紗丹として愛しているんだ。性別なんて問題ない!!」


 透子さんが声を張ってプレイしているのに対して、ネコ? タチ? とわーわーはしゃいでいる取り巻きのアクトレス達。

 ご想像にお任せします。


「ふぅん、最近紗丹の様子がおかしいなと思ってたら、そういう事だったの。

 でもね、潤一とやら。人のモノを盗っておいて、はいそうですかで終わる訳なんだよ!

 この落とし前はどう付けるつもりだい!?」


 こっわ!! プレイだと分かっていても、道子さんの威圧がハンパない。

 さすがは本職。背中に冷や汗がつつつっと流れる。


「すみません、紗丹は悪くないんです。全て俺が悪いんです」


 腰を折り、深々と頭を下げる潤一さん。その姿は堂々としており、愛すべき者を守る覚悟がひしひしと伝わって来る。

 何かこのままでは潤一さんに良い所を全て持って行かれそうだな。何とかせねば。


「待ってくれ! 誘ったのは俺なんだ、悪いのは俺なんだ道子さん!!」


「いや、あの夜に紗丹の手が触れた瞬間、思わずその手を握ってしまった俺が悪かったんだ」


「その手を恋人繋ぎに握り替えたのは俺だ。だから悪いのは潤一じゃない、俺なんだ!」


「いやいや、それでも押し倒したのは俺で……」


「ズボンに手を掛けたのは俺だから……」


「そう言えばあの時、紗丹はそっと腰を浮かしてくれたね……。ふふっ」


「潤一だってとっても蕩けたような目をしてて、可愛かったよ……」


「紗丹……」


「潤一……」


 目と目で見つめ合い、少しずつ距離が近付いて行く顔と顔。チラチラと唇に目をやって、2人だけの世界へと埋没して行く俺と潤一さん。

 目を閉じて後少しで唇が重なる直前に、俺の肩が誰かの手によって掴まれ、向きを変えられた。


 そしてその直後、柔らかい感触が俺の唇を覆った。


「んむっ!?」


 慌てて目を開けると、そこには妖しい笑みを浮かべた道子さんの目。まさか道子さんがここまで仕掛けて来られるとは……。

 怖い、後日旦那さんからの呼び出しがあったら即国外へ脱出しなければ……。


「っ!? 潤一君!!」


 透子さんも道子さんに倣い、潤一さんの肩を掴んで唇を押し付けるのが横目で見えた。この機会を逃すつもりはないようだ。


 取り巻きのアクトレス達はただただ呆然と2組のカップルを眺めるだけ。まさかプレイヤーとアクトレスがキスを交わすとは思っていなかったのだろう。

 恐らく、状況に流されて今このプレイが裏オプションである事を忘れているのだ。



 なんて事を冷静に考えている間も、俺と道子さんのキスは続いている訳で。この状況をお断りしないと!


 ただ止めてくれと身体を引くだけなら誰でも出来る。そしてそれだけでこの状況が変わるとは思えない。さらなる追撃が来るだろう。

 で、あれば。こちらも攻めるしかあるまい。


「……!」


 道子さんの頬に手を添え、頬から手を離して背中へと回し、背筋をつつつっと撫で下ろしながら道子さんのお尻へと伸ばす。

 パツンと張りの良いお尻を撫で回し、恐らく旦那さんしか触った事のないであろう箇所へと指をやると……。

 予想通り、道子さんはさっと腰を引いた。勝った。


「ぷはっ……。道子さん、俺の身体をいかに好きにしようとも、俺の心が潤一から離れる事はないよ」


「………………」


 ん? 反応がないなと思って道子さんを見ると、顔を真っ赤にして小さく震えてらっしゃる。

 おっと、これはマズいのでは。


「捨てないで、お願いだから捨てないでぇ!!」


「うるさいんだよ! 俺は真実の愛に生きるんだ!!」


 向こうでは潤一さんと透子さんがプレイを続けている。

 こっそり逃げるか、それとも潔く土下座を……。


「……、分かったよ紗丹君。私はあんたから手を引く。幸せになるんだよ」


 そう言って、俺に背を向ける道子さん。

 俺は知っている、その服の下に隠されている入れ墨(モンモン)を。

 ヤバイ、埋められるかも……。



 1人戦慄していると、潤一さんは未だバタバタと透子さんとやり合っている。

 正直助け舟を出す気力もなかったが、とにかくこの状況を終わらせないと明日への希望も何もないと思うので、2人のプレイへ介入する事にした。


「透子さん、道子さんは分かってくれたよ。

 あなたはそうやって食い下がっているけど、それで本当に潤一は幸せになれるんでしょうか?」


「っ、でも!! ……、うぅぅぅ……」


 透子さんはその場で崩れるように膝をつき、潤一さんの股間に顔を埋めてしまった

 。俺はその肩に触れて透子さんを引き剥がし、潤一さんの手を取った。


「さぁ行こう、潤一!!」


「あぁ、俺達の愛は誰にも止められない!!」


 潤一さんの手をぐいぐいと引っ張ってプレイルームを出て、そのまま全力疾走で失踪する!


「ちょっと紗丹君、もうプレイ終了だから皆さんの所に戻らないと」


 知らん! 俺は逃げるぞっ!!



 ~~~♪♪♪



 ドクンッ……。そうだった、道子さんに電話番号知られているんだった……。



 ~~~♪♪♪



 出たくはないが……、出ない訳には行かない、か。


「もしもし」


『1つ貸しにしておくから、またアレお願いね?』


 あ、あぁ~、アレね? アレで許してくれるんですね?


「ハイ、ワカリマシタ……」



 はぁ、裏オプションの後は裏営業かよ……。



次回投稿は来週の金曜日!

と言いたいところなのですが、それを目標に頑張ります。

ダメなら再来週……。

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