台本その3を紗雪とプレイ
結衣崎早月様からご提供頂いた台本を元に、優希達が実際にプレイをしてみるという回です。
台本その3と台本その4を同時投稿しております。
こちらは同時投稿の1話目です。
「月崎さん、先にお聞きしておきたいんですけども、台本その3だけプレイヤーのセリフが当て込まれている理由って何なんですか?」
設定要望を述べる前に、紗雪が台本を作った月崎さんへと質問を投げかける。
確かに台本その3だけプレイヤーのセリフが用意されているのは俺も気になっていた。
「それは新人のアクトレスの為です。他の台本についてはプレイヤーからのアドリブに戸惑ったとしても、最低限の返事が出来ればプレイは止まる事なく続けられるんです。
ですが、台本その3に限ってはプレイヤーからの罵倒や責めるセリフがアクトレスへ浴びせられる可能性が高い。
その為、新人アクトレスがびっくりしてしまったり怒ってしまったりする事が予想されます。
ならば最初からこんなセリフが来ますよ、と提示してあげる必要があると思ったんです。それでもいいと言うアクトレスのみが、台本その3を選ぶ事でしょう」
……、プレイヤーのセリフとして罵倒が含まれている台本。台本その3を嬉々としてアクトレスデビューに選ぶお客様はいるのだろうか。
「なるほど、分かりました。あたしはデビュープレイではないので、お義兄ちゃんには是非とも台本のセリフではなくアドリブでプレイしてもらいたいんですが、別にいいですよね?」
「ええ、もちろん構いません。紗丹さんが大筋を外れなければ問題ないです」
紗雪みたいなドMのアクトレス以外からは選ばれないような気がするなぁ……。
「それじゃあプレイオーダーを。
って言っても呼び方を決めるくらいしかカスタムする箇所はないかな。買い物に付き合わせた後に喫茶店でお断りされる展開だもんね。
え~っと、お義兄ちゃんの呼び名はゆーき、あたしの呼び名は宮坂にしよっか。
プレイの方向性はもちろん罵倒調で、思いっ切り言葉責めしてほしいな」
でしょうね、知ってた。
俺は月崎さんとプレイしていたソファーから立ち上がり、オフィスの入り口まで移動する。紗雪も俺の隣へ立つ。
「それではよろしいでしょうか?
台本その3、振り回すのは、好きだから。
彼を好きになってしまった貴女は、いつも彼にわがままを言って困らせてしまう。けれど、彼が文句を言いながらも貴女のお願いを聞いてくれる、許してくれるのは自分の事が好きながらなんだと思っていた。
今日も会う約束もしていないのに突然呼び出して、彼に荷物持ちをさせてショッピングを楽しんでいた」
「たくさん買っちゃった。重いでしょー? ごめんね、ゆーき」
屈託のない笑顔を見せる紗雪。恋人に見せるような信頼し切った表情だ。それに対し、俺はその信頼を向けられても関係なく紗雪を責めるような言葉を口にしなければならない。
それが、アクトレスのオーダーなのだから。
「謝るんならちょっとは持てよ。何で俺がお前の荷物持ちさせられなきゃならないんだ」
にへへぇ~、と笑顔を見せる紗雪。これはあれか、男版ツンデレを見るような目だろうか。
そんな事言ってあたしの事好きなくせにぃ~、というのろけのような感覚。
「あ、あのカフェで休憩しよっ、付き合ってもらったからあたしが奢るよ」
「ちっ、当たり前だ。わざわざ休みの日に出て来てやったんだからな」
「あたしが注文して持って来るからさ、先に席で待っててよ」
ん? あ、そうか、ここは先に飲み物等を買ってから席に移動するタイプの店なのか。台本を読むだけではピンと来なかったが、紗雪はそこまで分かってたのか。
あぶねっ、俺が飲み物を用意する側じゃなくて良かった。
先ほど月崎さんとプレイしていたソファーへ再び座る。荷物を席に置くような仕草をしつつ紗雪が来るのを待つ。
程なくして、トレイを両手で持った紗雪がソファーへ歩いて来る。こちらは仕草だけでなく本当にトレイを持っており、その上にはアイスコーヒーが2つと美味しそうなケーキが1つ乗っている。
おい、そのケーキは俺が花蓮さんから頂いた超人気店のケーキじゃないか! 滅茶苦茶並ばないと買えないんですよ、と勿体付けて渡されたケーキの最後の1個!!
「うん、美味しい~っ!! ここのケーキ大好きなんだぁ」
そうだろうな、お前それ3つ目だもんな。俺はまだ食べてないんだよ……。
「……、俺には食い物ないのかよ」
「えっ!? だって甘い物好きじゃないよね?」
びっくりしたような表情を見せる紗雪。大好きだって知ってるよなお前は!!
演技力が高いからこそ余計に腹が立つ。役柄としてではなく本来の俺としてイライラしてしまう。
いやそれはダメだ。あくまでプレイヤーとして、演技の上で怒らないと。プライベートで発生したストレスやイライラをプレイにぶつけてはならない。
と思いつつも、プライベートとプレイが同時進行しているという特殊な環境なので、今はそれでもいいかも知れない。
そんな葛藤を胸に抱えている俺の目の前で、パクパクと俺のケーキを食べる紗雪。こいつ、自分好みのシチュエーションだからって俺を煽りに煽ってやがる。
「いつ俺がそんな事言った? 俺ここのケーキ大好物なんだけど。滅茶苦茶好きなんだけど」
「んふふっ、ごめんごめん。次からはちゃんと用意するから、ねっ?」
フォークでケーキをすくい、紗雪があ~んと俺の口元に運ぶ。一口だけでも食べられたのなら良しとするか。
そう思わず口を開くと……。
「ストップ! 紗丹さん、アクトレスがそうやってあ~んをして来たら、迷わず口を開けますか?
確かに喫茶フロアでケーキをお出ししてはいますが、アクトレスとあ~んのやり取りをしているプレイヤーを見た事がないのですが」
しまった、超人気店のケーキを一口でも食べたいが為に思わず口を開けてしまった。
くそう紗雪め、ここまで想定して、わざとあ~んして来やがったな!?
「すみません、相手が紗雪なので思わず口を開けてしまいました……」
「そ、そうですか。であればあ~んはしっかりとお断りして下さい」
俺は頷くしかなかった……。そして目の前に掲げられたフォークをぱくりと口にする紗雪を睨む。
「もうっ、ケーキくらいで感じ悪いぞ?」
いきなりプレイに戻しやがった!? あ゛~~~腹立つ!!
「はぁっ!? お前何様のつもりだよ!!」
思わず前のめりになって紗雪に責め掛かる。思った以上に大きい声が出て、俺自身ちょっとびっくりしてしまった。
「何様って……、そりゃあ可愛いカノ……」
勢いを止める訳には行かない。
バンッ! とテーブルを叩き付け、紗雪を指さして立ち上がる。アイスコーヒーに浮かぶ氷がカランと音を立て、俺のケーキが乗っていた皿へとコーヒーが零れた。
一瞬、キターーー!! というように紗雪が目を爛と輝かせた後、すぐに怯えたような表情へと切り替える。
紗雪に取っては大好物。それも超人気店のケーキなんかよりも罵られる展開の方がご褒美なのだ。
ここは逆に当たり障りなく台本通りお断りした方が紗雪の期待を裏切り、ケーキの恨みを晴らす事が出来る。
が、私情関係なくアクトレスのオーダーに応えるのがプレイヤーのお仕事。
ここは思いっ切り罵倒する事が、紗雪の望みである。
「いつ俺とお前が付き合ったって!? 俺はお前の彼氏でも何でもないんだよ!!
最っ悪だわ、どうしてもついて来てほしいって宮坂が言うから約束を断ってまで来てやったのに、ただの買い物に引きずり回された挙げ句に奢りも飲み物もこの1杯だけだと!?
舐めるのも大概にしろよ!」
「そ、そんなつもりじゃ……、だって、だってゆーきが来てくれたのは私が好きだからでしょ?
確かに……、付き合ってないかも知れないけどっ! でもそれはゆーきが私にちゃんと告白してくれてないだけで……」
「自分に都合の良い事ばっかよく妄想出来るな、彼女ヅラすんじゃねぇよ! お前みたいなワガママな女、俺が好きになる訳ないだろうが!!
お前みたいな私ってモテるからさぁ、みたいな顔してる奴なんてお断りだ!
可愛い顔してたら何でも言う事聞いてもらえると思ってんだろ、そういう奴大っ嫌いなんだよ!!」
睨み付けたまま見下ろしていると、紗雪は口をぱくぱくと開いては閉じ、言葉を探しているような様子を見せる。
ちらっと台本を確認すると、次は俺のセリフだ。ここで一度座るか、それとも立ったまま続けるか。勢いのまま最後のセリフまで行くのもいいが、一度座ってもう1回2回ほど罵る展開があってもいいように思う。
考えた末、一度ソファーに座る事にした。零れた事で少し濡れているグラスを持ち、アイスコーヒーに口を付ける。
紗雪は俯いたまま、こちらを見ようとはしない。
「だって……、今日だって当日に呼び出したのに来てくれたもんっ」
うぐうぐと目に涙を溜めている紗雪。こいつも演技上手いなぁ……。まぁ美少女メイドに変身出来るくらいの天然アクトレスなんだから、この程度訳はないか。
いや、正直紗雪については二重人格なんじゃないかと疑っていたりするんだけど。
「なぁ、泣けば許されるとでも思ってんのか? だいたい何で俺がお前の事を好きだと思ったのか知らないけど、思い上がりだからな?
まぁヤるだけなら話は別だけど」
ゆーきの隠された性格を晒す。
設定上、宮坂はゆーきが自分の事を好きだと勘違いしていた以上、宮坂が思ってもいなかった最低な部分が見えたとしても問題ないだろう。
「ヤる……!? ……、ゆーきがそこまで言うんだったら」
「うるせぇ! 何で上から目線なんだよ、お前が抱いて下さいって泣いて頼めば考えてやるって言ってんだよ。お前みたいな勘違い女の相手すんの面倒なんだ。
あ~腹立つわ! 本当だったら今頃セフレの家でヤってる最中だったのに……」
「ご、ごめんなさいっ! あのっ、あたしで良ければ……」
泣き笑いの表情で俺に縋ろうとする紗雪。その目を見ずにグビグビっとアイスコーヒーを飲み干してから席を立つ。
「ごめんとかいらないから。もう二度と連絡して来んな」
「酷いよぉ、そんなに言わなくても良いじゃん! あたしにここまで言わせたのに……。
ちょ、ちょっと待ってよ、この荷物どうしろって言うの!? あたしこんなに持って帰れないよ!!」
「あー清々した。つまんねぇ女のせいで無駄な時間過ごしたわ」
ズボンのポケットからスマホを取り出し電話を掛けるフリをする。
「もしもし、あ~ゴメンな。今から大丈夫? いやそれがさぁ……」
今日会う予定だったセフレに連絡をしながら店の外へと出て行った。
「はい、クーリングタイムですね」
「ちょっとお義兄ちゃん、温過ぎない!? もっと言葉責めとかさ、机をバンバン叩くとか色々と責め方があるでしょう!!?」
紗雪にしてみれば物足りなかったようだ。それでもスペックスでアクトレスのお相手をすると考えると、相当踏み込んだレベルだと思うんだけど。
まぁ普段が普段だからな、紗雪の場合は……。
「その事については月崎さんにお伺いしよう。
月崎さんから見て、言葉責めが足りないと思われましたか? もっと机を叩いて威圧して精神的に追い詰めるべきプレイだと思われますか?」
ええっと……、と言葉を濁して困惑顔をされる月崎さん。困らせちゃった。
紗雪は何でもっと責めてくれないの!? と怒っている。
いや、その不満がそもそも俺には理解出来ないんだけれども。
もっと責めなさいよ! というMは果たして受け身なのか、それとも責めさせるという意味ではSなのだろうか。
これは一晩では結論が出ない議論になりそうだけど。
「ごほんっ、私としては特に問題ないかと思います。アクトレスの要望にお応えするのがプレイヤーのお仕事であると、先ほど申し上げましたが……、正直限度という物があると言わざるを得ませんね。
言葉責めを受けたいからスペックスへ通うというアクトレスもいらっしゃるでしょうが、それだけを目的にされるのであれば、別な性的サービスを探された方が賢明ですので……」
やはり最後は言葉を濁してしまわれる。紗雪の性的嗜好を垣間見て、ちょっと引いてしまっているようだ。
そんな月崎さんに食って掛かろうとする紗雪を押し留めて、まぁ具体的に言うと「後でな」と耳元で囁く事でお預け放置プレイへと移行させて、ようやく姫子の番が回って来た。
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