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友達の彼女の告白を断ったら、お断り屋にスカウトされました!  作者: なつのさんち


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台本その2の女性側事情パターンを月崎さんとプレイ

結衣崎早月様からご提供頂いた台本を元に、優希達が実際にプレイをしてみるという回です。

台本その2の2パターン目の投稿です。

 月崎(つきさき)さんがソファーに座ったままの俺を見下ろす。その目は挑発的で、当然勝負を受けるよね? といった想いが乗せられているのが分かる。


 全てのアクトレスのオーダーに応えるのがプロのプレイヤーなんじゃないですか? 


 その通りだと思う。その為のお断り屋だ。女性の願望を受け止め、その上でお断りをする。現実に則した形で断り、女性の想いを絶つ。


 先ほどの牡丹(ぼたん)のような変則的なプレイは、俺が気付いていないだけですでにプレイされているお客様(アクトレス)がおられても不思議ではない。

 アクトレスが牡丹で、牡丹が演じる役柄が瑠璃(るり)だったから気付いただけであり、一般のアクトレスがわざわざそこまでプレイヤーに教えて下さるとは思えない。



「で、どうしますか? 私は設定(プレイ)要望(オーダー)を練れましたけど」


 あそこまで言われて、無理です止めますとは言えない。意地でも月崎さんが満足するようなプレイをしないと。


「いえ、大丈夫です。全力で月崎さんのお相手を務めさせて頂きます」


 そうですか、と月崎さんが頷く。様子を窺っていた瑠璃が月崎さんに代わり、台本導入部のナレーションを引き受けてくれた。


「では先にプレイオーダーですね。

 アクトレスとプレイヤーは社会人で、関係は大学時代からのお付き合い。プレイヤーの名前は優希(ゆうき)でアクトレスは朋果(ともか)でお願いします。

 ロケーションはファミレス。そして、結ばれない理由は朋果の両親、そして朋果自身も年収1000万以下の男は男扱いしていない宗教に入っているから。

 普通にやっても面白くないので、コント調で行きましょう」


 男扱いしない宗教に入っているのに、2人は付き合っているってのがもうちょっと分からないんですが……。

 いや、分からないままプレイを始めるくらいなら先に確認するべきだ。


「その宗教に入信しているのに、2人が一緒にいる理由は何なんですか?」


「もちろん、優希に将来性があると見込んだ上で朋果が早くから手を付けていたからです。就活への口出しや、就職後のスキルアップへの焚き付けもしています。

 ですが、朋果自身は結婚しなくてもこのまま2人でいられたらそれでいいかな、という思いも持っています」


 あぁ、そういう事か。結婚する事自体にこだわりはなく、朋果は付き合いを続けて行きたいと思っており、そして優希も結婚を意識した努力をした上でのお断りである、と。


 そのオーダーを聞いた後で台本を見直すと……、朋果は割と優希の事を気に入っているような気がする。対して優希はとぼけている感じ。朋果が年収の多い男でないと結婚出来ないという考えに疲れ、自分では無理だと見切りを付けているような雰囲気が出ている。


 何にしても、台本通りのセリフを口にするだけではプレイは成立すらしない。セリフを考えようにも月崎さんはアドリブを乗せたセリフを振って来られるだろうし……、やってみるしかない。



「お2人とも、よろしいですか?」


「ええ」


 月崎さんが瑠璃に答え、俺も無言で頷く。俺達は別々のソファーに向かい合わせで座った。


「では始めましょう。台本その2、『両思い、叶わない恋』の女性側に事情があるパターン。

 朋果と優希は知り合った瞬間からお互いに惹かれ合っていました。ですが、朋果は自分の宗教を理由にはっきりと名前のある関係にはなれませんでした。

 2人はデートの休憩にと、ファミレスの窓際の席に座り、一息付いていました。

 それでは、よーいスタート」



「さっきの映画さ、ラストじーんとしちゃった」


 テーブルに肘をつき、両手を組んだ上に顎を乗せ、先ほど見た映画を思い出している様子の月崎さん。いや、朋果。

 優希()は座席に背中を預け、窓の外を眺めながら返事をする。


「そうだな、俺もウルって来たわ」


 笑顔で応える優希。朋果の事を大切に思っている様子が窺える。一緒にいて楽しいと、心から思っているような表情。


「今週末は連休になるのかな? どこか行きたいところ、ある?」


「あー、そうだなー……」


 連休となるとお泊りが出来るから遠くても大丈夫だよね、などと優希が口にしていると、2人がいるファミレスの外を、雑誌の宣伝カーが通り過ぎて行った。


『結婚を考えるあなたへ、結婚情報誌ザッシー』


 ―――紗雪(さゆき)、もうちょっといい雑誌名にならなかったのか?



「え~っと、何の話だったっけ?

 そうそう、行きたいところ! 私ねぇ、海外旅行したいな、パリとかお洒落じゃない?」


 朋果は聞こえてきた声から思考を逃す為に、必要以上にテンションを上げて話始める。あの声について話してはならない、そういう禁忌的な恐れから出た苦し紛れの話の変え方。お~シャンゼリゼ~と鼻歌を始める始末。


 はぁ、とため息を一つ吐き、優希はずっと思っていた、思い続けていた言葉を口にする。


「……、今の話は止めて、将来これからの話にするか?」


 優希が朋果に切り込む。朋果にとって触れられたくない話題であると知りながら、それでも優希は話さずにいられなかった。

 一瞬顔を顰める朋果だったが、すぐに笑顔を浮かべた。その笑顔は薄っぺらで、明らかに作っている笑いだった。


「えっ……? あ~、ディナーの事? フレンチとかお洒落じゃない?」


 朋果が明らかにはぐらかすような言葉を口にした為に、優希はテーブルの上へと乗り出すようにして朋果の目を見つめて来る。口を開いては閉じ、何か言いたげな様子。しかし思った言葉を口に出す事はない。

 しびれを切らしたように、優希がスマホをテーブルへと置いて朋果と目を合わした。


「ご両親の考え方、変わったか?」


 目を見開いて朋果が言い返す。


「何もその話をしなくても……!

 そんなの、お洒落じゃないよ!?」


 何故そこまでお洒落に拘るのか、優希には最早理解不能だった。何が朋果にとってお洒落なのか、それすらも考える事を止めて久しい。

 朋果にとってお洒落とは、そして結婚とは、優希とは違う価値観を持って生きているのだと気付いている。自分とは違う価値観、その範囲内でしか自分の人生を選ぶ事が出来ない朋果に対し、優希は半ば諦めつつあるのだった。


「俺達に将来はあるのか? 俺は俺なりに頑張ってる。同級生よりも稼いでるし、朋果の事も大切に思ってるんだ。

 その大切に思っている人と、結婚したいって考えるのは当然だろ?」


 再び朋果は目を伏せ、でも、だってと小さく零す。


「結婚なんてしなくても、私達2人がお洒落に生きて行ければいいじゃんって納得してくれたのに……。

 今更何でそんな事を言うの? もっと楽しく、お洒落に生きて行こ?

 結婚だけが2人の未来じゃないと思うの。2人が一緒にいる事が、大事なんじゃないの……?」


 事の問題となっている原因である年収の話は出ない。朋果は年収なんて関係ないと思っているのか。それとも、結婚さえしなければ年収なんて関係ないという、同じようで全く違う事を考えているのか。


「俺の事を結婚出来ないくらい年収が少ない男だと思ってんの? 一緒にいる分にはいいけど、結婚となると年収がネックになるって?

 バカにするのもいい加減にしろよ」


「……っ、そんな風に言わないで! 私はお洒落に生きて行きたいの。旦那が年収1000万稼ぐ、そんなお洒落な結婚生活なら素敵だと思う。

 でも、優希は年収1000万ないじゃん! そんなの、お洒落じゃないよ……?」


 年収にどれだけの意味を見出しているのか。朋果が、そして朋果の両親が態度を変えない限り、2人でいてもただただ時を過ごし問題を先送りにしているだけでないかと優希は考えている。


「年収1000万だろ? 俺は今800万まで来た。800万だぞ? 何が不満なんだ。

 貯金もしてるし車も持ってる。住宅ローンの申請だって銀行が喜んで引き受けるだろうよ。子供だって1人と言わず養えるだろう。

 俺は朋果と結婚したい。2人で一緒にいればそれでいい、なんて綺麗事がいつまでも続くとは思えないんだよ」


「そんなの違うよ! 私のパパは年収1000万稼ぐようになってやっとママにプロポーズしたんだよ!!

 それってすごくお洒落だと思うの。

 ハネムーンはヨーロッパ1周で、しかもそのハネムーンで私が出来たんだって、2人はすごく自慢するの。そんなライフスタイルに憧れるの。

 いいなって、子供を産むとしたら、私達もそんなパパとママになりたいって思うの」


 年収1000万円のある生活がお洒落である。具体的説明はほとんどされず、しかも現実に則した内容ではない。

 ただ数字の上の話、ただ両親が歩んで来た人生の話。それだけであり、優希は朋果が設定したボーダーに乗る事が出来ない為に結婚を考えられないでいる朋果の事を、信じられないといった目で見つめている。


「ね、私達が結婚するんならさ、もっと大きな会社に転職するのはどう? この間TOEICでかなりのスコア取ったじゃん。貿易関係の仕事も出来るんじゃない? 貿易関係って、お洒落じゃん!

 貿易って事はきっと外資系でしょ? ほら、超お洒落じゃない!? 仕事で海外に行く事もあると思うの。その時に私も一緒について行って、その国を2人で旅行するの。きゃー素敵ぃー!!

 年収1000万越えて、2人で色んな国も旅行出来て、一石二鳥じゃない!? 超お洒落じゃん!!」


 テーブルの向こう側でばたばたと脚を動かして喜んでいる朋果。これはもう、テンションが高い演技を通り越して本当に喜んでいるただのバカだ。


 ―――月崎さんに今、朋果というテンションの高いバカが乗り移っている……。優希は一体どんな性格だ。どんな人間で、何を思って今までこのバカの隣にいた……?


 ―――考えろ、呑まれてはならん。月崎さんをも呑み込むような勢いで優希を演じろ!



 年収1000万というボーダー。その数字に深い意味はなく、朋果はただただ1000万というイメージに囚われているだけに過ぎない事が見て取れる。

 お洒落だから、基準だから、ついでに旅行も出来るからと優希に転職を勧める朋果。

 結婚するのであれば年収1000万稼いでくれ。じゃないと結婚出来ない。

 何故なら、年収1000万稼げない男はお洒落じゃないから……。


 そんな朋果に対し、遂に優希が切れてしまった。


「年収1000万稼ぐ男がどんな男か知ってるか? 大企業でも課長クラス以上だ。課長になるまでどれくらいかかると思う? 入社して少なくとも15年はかかるだろう。

 新卒で入社していたとしても38歳。オッサンもいいところだな? それから結婚して、子供を作って、その子供が成人する頃にはもう定年間近。

 もし子供が大学院に行って研究を続けたいって言ったらどうする?

  定年後に継続雇用で働き続けたとしても年収1000万を維持するのは無理だぞ!!」


「どうして……? 38歳で結婚とか、ちょっとお洒落じゃないよね? オッサンと結婚するなんて……、しかも子供が成人する頃にはもうおじいちゃんでしょ!? そんなの超ダサイじゃん……!!

 それならいっその事、結婚しない方がお洒落だよ?

 別に私、結婚に拘ってる訳じゃないの。結婚するなら、年収1000万以上欲しいなって思ってるだけなの……」


 朋果は両手で顔を覆って、イヤイヤと首を振る。

 小さい頃から両親に結婚相手へ求める条件は年収1000万以上と擦り込まれて来たのだろうか。それに加えてバカみたいに言い続けているお洒落という朋果自身の基準が合わさり、余計に優希には理解出来ないものになってしまっている。

 その上、朋果が拘っているのは結婚ではなく、結婚するのであれば年収1000万。あくまでネックなのは結婚するならばの条件であって、結婚しないのであれば収入は問題ですらないのだ。


 優希から現実を見ろと言われても、朋果にとっての理想がはっきり言って現実的ではない為に優希と向き合う事が出来ずにいるようだ。

 しかし、優希は結婚したい。出来れば朋果と。


 優希にとって年収1000万という宗教自体が問題なのではない。むしろ、年収1000万のボーダーラインに立つ人間がどのような人物なのかを朋果が理解しているのかを確認せずにはいられなかった。

 その結果、やはり朋果は年収1000万はただの理想であり、それを達成するであろう人物像からは目を逸らす始末。

 これでは、年収1000万という宗教よりも自分を選んでほしいなど、優希の口から出る訳もなかった。


「朋果が求めてる年収1000万。今すぐどころか、10年後でも厳しいかも知れない。それまで待ってくれなんて言えないし、俺自身がもう疲れた。

 ……、実は俺、会社を辞めたんだ。人を蹴落としてまで主任になったけど、もう今の職場ではやって行けない。

 もう疲れたんだ。仕事も、意味のない年収を求める朋果にも……」


 優希は朋果に嘘をつく。この嘘を聞いた後でも朋果が一緒にいたいと思うのであれば、それは真実の愛だ。

 しかし、年収1000万どころか無職になったと聞いた朋果が別れを選択するのであれば、自分はもう2度と朋果と会わない方がいい。お互いの為にならないのは明白だから。


 優希の告白を受けて、朋果が驚いて口を開く。


「無職だなんてっ!?

 お別れなんだね……。ずっとずっと、一緒にいたいだけなのに」


 目を閉じて涙を堪えている朋果を、優希はじっと見つめる。そうか、朋果は優希という現実ではなく年収1000万という虚像を選ぶのか。

 涙を我慢する朋果に、優希は優しい声色で嘘を重ねる。このバカを徹底的に馬鹿にして、もう二度と自分に近付かないように愚弄しなければならない。


「君に会えて良かったよ、年収でしか結婚相手を選ぶ事の出来ない女って、本当にいるんだって知ったよ。年収1000万っていう宗教にはもううんざりだ」


 別れを切り出した後の優希の言葉に驚いたのか、顔を上げて朋果が食って掛かる。


「何で、何で会社辞めちゃったの? それじゃあ結婚どころか、2人で幸せに暮らすのさえ難しいよね!?

 宗教だなんて……、年収1000万のお洒落な結婚生活に憧れちゃダメなの?

 例え宗教と言われようが、私は誰にも迷惑掛けてないのにっ!!」


 たまらず優希はテーブルに手を叩き付けて立ち上がる。


「結局は金と見栄えなんじゃないか! 何がお洒落だ、何が年収1000万だ!!

 生活の為でも、将来への不安を減らす為でもなくただただ金額と人にどう見られるかだけしか考えてないんだろ、そんなのお洒落でも何でもない!」


「だって、お洒落だったら人から羨ましがられるよ? それって、すごく気分良くない?

 人から見たら、キラキラ輝いて見えると思うんだ。そのキラキラした生活、きっとすごく幸せだと思うの……」


 2人はとことん噛み合わない。朋果の反応を見る為に嘘をついた優希と、その嘘に乗っかってお洒落な自分の生活を夢見始めた朋果。噛み合う訳がない。

 優希は信じた、年収なんて関係ない。両親を説得して、2人で幸せになろうと朋果が言ってくれると。裕福でなくとも温かい家庭を築こうと言ってくれると。


 しかし朋果は別れを選んだ上、ありもしない優希の金でこれからの自分のキラキラしたお洒落な人生を語り始める始末。


 もう付き合っていられない。優希は別れを、二度とこいつに会わない事を決意を新たにした。


「会社を辞めたってのは嘘だし、年収800万も嘘。全部嘘。

 俺が勤めてる会社、俺の親が経営してるんだ。お前には結婚するまで黙っておこうと思ったけど、もういいわ。

 俺の年収2000万だけどお前なんかと結婚する訳ないし」


 朋果が年収に拘っているのと同じく、優希はお金だけが人生ではないという人柄に拘りを持っていた。朋果は年収という一つの基準にのみ固執していたが、それ以外の面を優希は非常に気に入っていた。

 何故か、何故なのかは分からないが、結婚の話をチラつかせると年収の話になり、優希を戸惑わせていた。

 優希は実家の財産や自分の個人資産を朋果には隠していたし、洋服や時計、車に至るまでグレードを落とした物を使っていた。

 それはまさに、結婚相手となるであろう女性を試す為である。


 朋果が言うなれば、『年収1000万教』という宗教に入っているのだとすれば……。

 金だけが全てではない、そう言ってくれる女性を探すあまり、優希は自分自身が『お金だけが全てではない教』に入信しているのに気付いていなかった。


「年収2000万って、倍じゃないっ!? 2倍お洒落じゃん……、どうしよう、最っ高にお洒落だよ!!

 ってかもう今すぐ結婚しよっ、今から役所行って婚姻届貰おっ! パパもママもすぐに保証人のサインしてくれるよ!!

 お願いしますっ、私を社長夫人にしてっ!!!」


 はぁ……。あからさまにため息を吐き、優希はぽつりと零す。


「俺はお前みたいな女大っ嫌いなんだよ。二度と顔も見たくない」


「えっ……?」


「朋果に出会えて良かったよ、本当に。年収への拘りがなければ、もっと早く結婚して幸せな日々を送っていたと思うのが残念でならない。やっぱり金に拘る女はダメだ。

 朋果と過ごした時間は、忘れないよ……。もっと身なりのグレードを落とすべきだって分かったから……」


 優希は席を立ち、汚い物を見るような目で朋果を眺めた後、ゆっくりと背を向けて歩いて行った。



「はい、これでクーリングタイムですね」



 つっかれたぁぁぁ!!! 何だこのプレイ、まるでアクトレスとプレイヤーがガチで殴り合う格闘技みたいになってたぞ!?

 月崎さんが自ら台本を曲げて来るし、こっちは可能な限り台本に基づいたセリフを返そうとしてんのにさらに切り返して来るし……。

 新人アクトレス向けのテストプレイってレベルじゃなかったぞ……。


「う~ん……」


「月崎様、この台本のプレイは如何でしたでしょうか?」


 瑠璃が何やら考え込んでおられる様子の月崎さんへプレイ後の感想を求める。


紗丹(さたん)さん、このプレイ上の優希は、朋果が年収1000万教から改宗さえすれば結婚していたんでしょうか」


「そうですね……、宗教に囚われていなければ、いずれは結婚していたのではないでしょうか」


 なるほどなるほど、と月崎さんは大きく頷かれる。

 ですが、と一呼吸置いてから評価の続きを話し始める。


「もっと優希が持っている闇を前面に出しても良かったかも知れません。朋果は年収1000万教のお洒落派閥である事を分かって頂けたかと思いますが、優希の信じるお金だけが全てじゃない教の色をもっと出して欲しかったなと思います。

 そうですね……、朋果を改宗させるべく自分の理想を語り掛けるとか、2人の未来にお金なんて必要ない。何なら2人で北海道で牧場を経営する叔父のところへ行こうと誘ってみるとか」


 ん? 何か聞いた事のある展開だな。誰かとプレイした時に出たような……。

 いくら月崎さんでも俺が別のアクトレスとしたプレイの内容なんて知ってる訳ないだろうし、偶然だろうけど。


「とは言え、私は満足しました。

 うんうんっ、さすが超人気プレイヤーですね!」


 何とか月崎さんから合格を頂けたようだ。疲れたけど。


「皆さんは今のプレイをご覧になって、どう思われましたか?」


 普段はこうして間近で人のプレイを見る機会なんてない。まぁ監視カメラ越しにモニタリングしている事もあるんだろうが、目の前でまじまじと見る事はさすがにない。

 牡丹が頬に手を当てながら、思った事を口にする。


「プレイヤーは割とアクトレスのオーダーに対して受け身であると思います。ですが、今の優希さんのプレイはプレイヤー自らが練った設定を元にプレイしていたと思います。

 今回はプレイの中の朋果では知り得ない情報を口にしましたよね? 実は勤めている会社の御曹司である、と。なかなかに新鮮で、アクトレスからすれば期待以上のプレイだったという印象を与える事が出来るのではないかと思いました」


「そうね、牡丹の言う通りだわ。

 だけど、それも行き過ぎるとアクトレスが戸惑い、本質であるお断りされるという体験自体を邪魔しかねない可能性もある、という事を理解しておかないとダメかも知れませんね」


 瑠璃の懸念はもっともだ。多過ぎる新しい情報は混乱を招き、アクトレスをふと素に戻してしまう危険性を孕む。

 その案配が実に難しい事は、実際に今プレイした俺自身がよくよく理解しているつもりだ。



「よし、じゃあ次はあたしの番ね。

 月崎さんを倣って飛び抜けたプレイオーダーにするからよろしくね、お兄義(にー)ちゃん!」



本日はこのお話のみの投稿となります。

(書き切れなかったので)


次週はまた引き続き、台本プレイ回を予定しております。

よろしくお願い致します。


結衣崎早月様のマイページはこちら ( https://mypage.syosetu.com/326383/ )


結衣崎様とコラボさせて頂いたお断り屋の短編、アクトレスサイドはこちら ( https://ncode.syosetu.com/n3990eg/ )

プレイヤーサイドはこちら ( http://ncode.syosetu.com/n8849eg/ )

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