台本その1を瑠璃とプレイ
結衣崎早月様からご提供頂いた台本を元に、優希達が実際にプレイをしてみるという回です。
台本その1と台本その2の1パターン目を同時投稿しております。
こちらは台本その1プレイ回です。
月崎さんも手を挙げておられるが、むしろその方が都合が良い。台本は4つだが筋書としては台本その2は2パターンになる。
全てのシチュエーションを試そうと思えばアクトレス役が5人必要。夏希がこの場にいないので、宮坂三姉妹と姫子、そして月崎さんでちょうど5人。
「ちょうど5人いるから1人ずつお願いしようか。順番通りその1からプレイして行くとして、とりあえず先に希望を聞こうか」
5人にそれぞれどのシチュエーションをプレイしたいか確認する。話し合いの結果、まずその1を瑠璃とプレイする事となった。
プレイする俺とアクトレス役は、台本を手に立った状態で開始する。台本に座る指示があれば座る。プレイ場所はオフィスのまま。
本来であればシチュエーションに適切なプレイルームを使いたいところなんだけれども、今は絶賛ハイプレイヤー総選挙中。空いているプレイルームはほぼない。
それに、ぞろぞろとスペックスの幹部が店内を移動しているのを見られると色々な噂が飛び交うだろうという危惧もある。
「じゃあ瑠璃、必要な設定要望を埋めてしまおう」
「はい、アクトレスとプレイヤーは歳の離れた幼馴染。アクトレスの方が2つ年上です。
お互いを姉と弟のように慕い合っており、アクトレスはいつまでもその関係が続くと思っていました。
ロケーションは台本通り公園のまま。小さい頃、公園で泣いているプレイヤーを見つけ、助けてあげたのがきっかけでよく遊ぶようになりました。
アクトレスの呼び名は瑠璃ちゃん。プレイヤーの呼び名は優希、でお願いします」
瑠璃のプレイオーダーを台本に書き込んで行く。短時間でよくここまで設定を練れたな。さすがスペックスの創始者というべきか。もしくは、台本のお蔭か。
「分かった、じゃあ始めようか」
「あの……」
月崎さんが何か言いたそうにしている。月崎さんの台本を試すのだから、本人の意見はどんどん出してほしい。
「プレイ中、気になった点やもっとこうしてはどうかというアドバイスを出してもいいですか?」
「もちろんです。台本も試せるし、僕の演技指導もして頂ける。プレイを止めてもらって構わないので、思った事を仰って下さい」
「分かりました、ありがとうございます。それと、アクトレス役をされる方は台本通りにお願いします。あくまでプレイに慣れていない新人アクトレスの為の物です。過度なアドリブは避けて、台本の有用性を試して下さい。
それと、導入部は私がナレーションさせて頂きます」
各々が分かりました、と月崎さんへ返事をする。
ナレーションで始まるプレイ……、舞台形式でのプレイを考えているハイスペックスでも使えそうだな。
「では始めましょう。
台本その1、ずっと前から好きでした。瑠璃と優希はこれまで幼馴染として、長い間姉と弟のような変わらない関係を築いていた。
ある日、瑠璃が優希と女性が仲良く歩いているのを見てしまう。
いつからか優希が好きだった瑠璃は、大きなショックを受ける。
もし恋人だったら? もし勘違いだったら? 悶々とした瑠璃は、公園に優希を呼び出した。
よーい、スタート」
「ごめんね、わざわざ来てもらって……」
瑠璃が無理に作ったような笑みを浮かべる。緊張している、不安そう、そんな印象の表情だ。
「ううん、こうして会うのも久しぶりだね」
それに気付いているのか気付いていないのか、俺は瑠璃の表情には触れず、久しぶりに会えた事が嬉しいと伝えるに留める。
「覚えてる? この公園、私達が初めて出会った場所だったよね。
あの辺りで優希が泣いてて……」
オフィスの中を見回し、さも懐かしいというような瑠璃の立ち振る舞い。少しオーバー気味ではあるが、プレイである事を考えるとそれくらいがちょうどいいだろう。
「うん、覚えてるよ。転んで泣いてる僕に瑠璃ちゃんが声を掛けてくれたんだよね。それがきっかけで仲良くなったんだ。
でも、どうしたの? 突然」
「……、うん。実はね、この前、駅前で優希と可愛い女の子が一緒に歩いているのを見たの。それで……」
俯き、台本を胸の前で抱える瑠璃。言いたいけど言いたくない、そんな葛藤の末に伝えられた言葉は、はっきりと恋をしている女性の心情が込められている。
「あ~、そっか。見られちゃったか。いつかは瑠璃ちゃんにも紹介したいなと思ってたんだけど……」
俺は右手を後ろに回して頭を掻く。恥ずかしい、というような照れの表情。そこに罪悪感や後ろめたさは乗せず、バレちゃったかとでも言うような仕草を作る。
瑠璃は少しの間、下を向いたまま口を開いては閉じ、顔を上げてはまた床を見つめ、迷っているようなそぶりを見せる。
そして、みんなが座っている場所から少し離れた位置にあるソファーへと座り、ぽんぽんと隣を指して俺にも座るよう促す。
俺は促されるまま近付き、躊躇いなく隣に座った。
瑠璃の顔を見つめ、話し出すまで笑顔で待つ。告白されるとは思っていない、姉の事を慕う弟のような表情で瑠璃の言葉を待っている。
「あの、突然なのは分かってるんだけど、聞いて欲しいの。私、優希の事がずっと前から好きでした。もう遅いかも知れないけど、私を……、あなたの恋人にして下さい!」
瑠璃の両目はキュッと閉じられ、唇を震わして俺の言葉を待っている。まるで最初から、断られる事を知っているかのように。
「ごめん、瑠璃ちゃん。一緒に歩いてたコ、彼女なんだ……」
瑠璃が目を閉じたまま、また下へと俯く。長い前髪が垂れて顔が隠れる。俺の言葉を聞きたくないと、拒否をしているように見える。
俺は再び口を開き、瑠璃の告白に対する返事をする。
「瑠璃ちゃんが俺の事、そんな風に思ってくれてるなんて思ってもみなかったよ。血の繋がってない姉貴みたいに思ってたからさ。
嬉しいけど……、それ以上に彼女の事、好きなんだ。僕から告白したんだ。だから、瑠璃ちゃんが勇気を出して告白してくれた気持ちは、十分に分かるんだけど、でもその気持ちには応えられない……」
「そうだったの……」
声を震わせて、それだけを口にする瑠璃。俯いたまま俺と目を合わせず、前髪に隠れたその表情を窺う事が出来ない。
そのまま動かない瑠璃。台本を胸に抱えたまま目にしていない為、次の展開が分からないんじゃないかと若干不安になる。
「あの、瑠璃ちゃん……、大丈夫?」
フった側が大丈夫かと確認するのもどうかと思うが、プレイが終わっていない以上、余計な事は口に出来ない。
どうしたもんかと思っていると、バッと顔を上げた瑠璃が俺に抱き着き、耳元で囁くようにセリフを口にする。
「今は、今だけはこのままでお願い……。次に会った時は、今まで通り姉と弟に戻るから、今だけ……」
「瑠璃ちゃん……。俺、瑠璃ちゃんの弟のままでいたいんだ、ダメかな……?」
瑠璃はすぐに身体を離し、俺の目を見て微笑みを見せる。無理に作った表情ではなく、愛おしい弟を見るような優しい微笑み。
「正直に言ってくれてありがとう。彼女、大切にするのよ」
そう言って、バンバンッ! と俺の肩を叩いて立ち上がり、後ろを見ずに真っ直ぐ歩いて行った。
「瑠璃ちゃん! 俺、瑠璃ちゃんは自慢の姉貴だと思ってるから!!」
瑠璃は振り返らないまま、右手を挙げて振って見せた。まるで弟には涙を見せない、頼りになる姉のように……。
「っ、はいっ! ここでクーリングタイムです」
ふぅ~、台本があるとは言え、やっぱりセリフは台本通りではなくアドリブというか、自分の解釈が入るな。
新人アクトレスの場合だと忠実に台本通りにするか、もしくは気持ちが入り過ぎて脱線する恐れが出て来るかも知れない。
「やはりお2人とも素晴らしいですね。自分で書いた台本なのに魅入ってしまいましたよ……」
俺と同じく大きく息を吐いて、月崎さんが感想を述べて下さる。そう言えばプレイ中に中断しての演技指導がなかったな。月崎さん的にはどうだったんだろうか。
「瑠璃さん、終わってみての感想をお聞かせ願えますか?」
あ、まずは瑠璃に確認するんだな。プレイヤーよりも台本を元にプレイしたアクトレスの意見の方が重要か。
「そうですね……、私はプレイに慣れているので、正直に言うと台本通りにするのは面白くないなと思いました。
より良く、より自分が好きなシチュエーションに寄せてしまったなというのがプレイ後の感想ですね」
「それにしてはやり過ぎよ、お姉ぇ。アクトレスがプレイヤーに抱き付くのはちょっとね~」
紗雪が瑠璃を非難するが、抱き付かれるのはそう珍しい事ではない。大抵の場合、プレイに入り込み過ぎて、そうするのが当然のように抱き付かれる。
「私はあまり抱き付かないようにしているのですが、紗丹さんはそれほど珍しくないと」
「ええ、それだけプレイが白熱した結果ですからね。プレイヤーとしては思わず抱き付いてしまうほどにアクトレスを入り込ませる事が出来たと喜ぶべき事だと思います」
まぁ例外はある。始めから抱き付く事が目的のアクトレスとか。ふくよかランクAのお客様とか……。
「後は台本の表記がちょっと分かりにくいかなと思います。プレイヤーのセリフなのか、それともアクトレスのセリフなのかが。どちらとも取れるセリフもありますし、カギカッコの前にどちらか明記しておいた方がより丁寧かも知れません」
月崎さんは一度台本に仕上げた後、小説風に書き直してたそうだ。
「その方がよりストーリーが分かりやすいかなと思ったんですが、そうですね。どちらのセリフか分かりにくいようであれば、手直しするべきですね」
「それは改めて打ち合わせの上で修正を掛けて行きましょう。
それよりも瑠璃ちゃん! 幼馴染みで姉と弟のシチュエーションなんて酷いっ!! 私がゆうとプレイしたかった……」
おうっと、牡丹お姉ちゃんの血が騒いでいるようだ。牡丹が瑠璃に抗議し出した。台本その2は牡丹の番だと言うのに。
「そんなに言うなら後でまた台本その1をやればいいでしょ? 複数のアクトレスが同じ台本をプレイするんだから、当然私達も同じ台本のプレイ比べをするべきじゃないかしら」
なるほど、確かに瑠璃の言う通りだ。
「月崎さん、この後もまだまだ続きそうなんですが、ご予定はよろしいですか?」
「ええ、大丈夫ですよ。今日はオフなので、3回ほどプレイを楽しんで帰ろうと思っていたのですが、紗丹さん達のプレイを間近で見れる機会なんてそうそうないので」
3回!? マジですか月崎さん……。
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