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友達の彼女の告白を断ったら、お断り屋にスカウトされました!  作者: なつのさんち


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ハイプレイヤー総選挙、中間発表会



『第8位、だらららら~、だんっ! Bランクプレイヤー、岩間(いわま)(さとる)!!』


 おぉぉぉ~……。


『智君はこのモニターの写真通りに一見大人しい青年という雰囲気なんですけど、肉食系も草食系もどちらのタイプを演じるのも上手ですし、チャラい系でもオタク系でも何でもイケます。

 私が最後にお相手してもらった時は、大学のサークルの副部長役でした』


 ふむふむふむ……。


『オープンキャンパスに行った女子高生役の私を上手くリードしつつ、きっちりとお断りをしてくれました。

 まだまだ大人になり切れていない女子高生に対する、甘くも厳しいお断り。実に見事でしたよ』


 おぉぉぉ~……。


「女子高生というより女子中学生よね、それも入学したての」


「いらんチャチャを入れるな」


『今現在は8位ですが、まだまだ上位を狙えるプレイヤーだと思います。ガシャの結果、彼とマッチングした際はじっくりとプレイを堪能して頂きたいですね。

 はい、続きまして7位の発表です!』



 ハイプレイヤー総選挙も中間発表会を迎えた。俺と紗雪(さゆ)は今スペックスビルのオフィスでモニター越しに千里(ちさと)さんが司会をしてくれている中間発表を眺めている。

 中間発表会の間はスペックス内のプレイは全てストップ。ビル内におられるお客様(アクトレス)を誘導してアクトレスカウンターに集まってもらっている。

 しかし想定外の事態が発生。中間発表会が行われると聞いてスペックスへ来店されたアクトレスが意外に多かった事から、プレイルームの1つである喫茶スペースを見学されるアクトレスへと解放した。

 こちらもモニター越しなので、中継形式ではあるがリアルタイムで発表が見れるという事で納得して頂いた。



 瑠璃(るり)はアクトレスカウンターで千里さんの隣に立っており、時々プレイヤーのプチ情報を伝えるなどして発表会を盛り上げている。

 牡丹(ぼたん)は裏方に徹しており、千里さんへプレイヤーの名前が書かれた封筒を手渡すなどして発表会の進行を補佐している。


『彼の趣味はダンスゲームなんですよ。店外プレイでオーダーして頂ければ、彼の華麗な足捌きを見て頂けると思います』


「ねぇねぇ、お()ぇってばちょっと緊張してるんじゃない?」


 そして、さゆは現在ソファーに座っている俺の膝の上に跨って、対面で頬っぺたをくっ付けながらモニターを眺めている。

 夏希(なつき)姫子(ひめ)はそれぞれ女優業。元々中間発表会には関わっていなかったさゆが、どうせお互い時間があるならオフィスでイチャイチャしながら見よう! と誘われた形だ。


 まぁ俺としても、先日アクトレスカウンターで騒ぎになったのを上手い事収拾した事に対するご褒美をしないとと思っていたので、この誘い自体は良いんだけども……。


「あっ! 今牡丹ちゃんが見切れてた、せっかくなんだしちゃんと映ればいいのに」


 グニグニと俺の胸元にさゆの柔らかい胸元を押し付けたり、腰をふにゅふにゅと左右に振ってみせたりと、ちょっと度が過ぎている感がある。

 イチャイチャするのはいいとしても、あくまで一線は越えないようにしないと。

 最近さゆと2人きりになる機会が少なかったからだろうか。ちょっとフラストレーションが溜まっているのかも知れない。



『第6位、だららららららららぁ~ん、じゃん!

 Aランクプレイヤー、永森(ながもり)海飛(かいと)!! 』


 それにしても、気が散って中間発表がちゃんと見れない……。7位は誰だったんだ、俺だったかも知れないのに見逃してたぞ。


「さゆ、ちょっと気が散って発表に集中出来ないんだけど」


「えっえ~? 何で集中出来ないのかなぁ~? あたし、気になりまぁす」


 そうやって全身使って俺をお誘いして来てるからだよ! 思いっ切りこの状況を楽しんでいるさゆの表情。ニヤニヤしやがって……。

 あえて言おう、もはやこれはやり過ぎであると!!


「お断り屋のプレイヤーなのにこの程度の誘惑で集中出来なくなっちゃうんだ~」


『え~、モニターに映されている通り、人の好さそうな見た目のプレイヤーですが、その通りのプレイももちろんの事、グイグイと人の心に攻め入る積極性も持ち合わせており、気付いた時には……』


 千里さんが何か言ってるけど、今はそれどころではない。ヤバい、最近忙しくて本当にゆっくり出来てなかったからか、さゆの本気の誘惑で頭が(とろ)けてバカになりそう……。

 この柔らかくて優しい女の匂いも、弾力を伝えて来る胸元も、腰回りを締め付けている健康的な太ももも、俺を見透かすような流し目も……。


 もう中間発表なんてどうでもいいや、後で瑠璃と牡丹に確認しよう。発表会も途中だし、まだ時間があるだろう。

 何を我慢する事があるだろうか。ここには俺とさゆの2人きり。誰の邪魔もない。さゆもその気だし、今は恋人同士深く愛を確かめ合うべきなんじゃないだろうか。

 俺はさゆへと唇を重ね、ゆっくり………………。



『第2位は何とっ!? 希瑠(きる)紗丹(さたん)、希瑠紗丹です! 現在Cランクプレイヤーの超大型新人、我らが希瑠紗丹が2位!!?

 え、何で……!?』


 ふ~ん、俺2位か。すごいな、皆さま応援ありがとうございます。それにしても俺はいつまで新人扱いなんだろうか。デビューからそれなりに時間が経ってるんだけども。

 まぁそんな事は置いといて、俺は今ちょっと忙しいから……。



 グイッ!! と顔を両手で掴まれ、さゆの顔から引き剥がされた。


「何で優希(ゆうき)が2位な訳!? 有り得ないでしょ!!」


 いきなり叫ぶんじゃねぇよ、ビックリするでしょうに。

 ってか何が有り得ないんだろうか。ただ1位のプレイヤーの方が得票数が多かっただけなんじゃないの?


「2位じゃダメなんですか?」


「はぁっ!? あんったバッカじゃないのっ!!!」


 ぐふっ、さゆにあんた呼ばわりされたのもバカ呼ばわりされたのも、初めてかも知れない。頭に浮かんだフレーズを言っただけじゃないか。

 確かにちょっと古かったかも知れないけど、病む……。


「1位は誰よ!? しまった、ちゃんと聞いておくんだった。

 考えられるのは……」


 俺の膝から降りて、ソファーへと座り直すさゆ。モニターを見つめながらブツブツ言い出した。

 最近ブツブツ言う奴多いな……。

 

『えっと、とりあえず紗丹君に関する事はここでは伝えきれないので、良ければ私が運営しているプレちゃんをご参照下さい』


 パチパチパチパチ。何故かアクトレス達が千里さんに対して拍手を送っている。何だこの光景。


「そりゃ千里さんが優希のプレイヤーデビューの相手だからでしょ。それ以降のあの人が起こした一連の騒動を考えると、拍手じゃなくてブーイングでもいいくらいだけど」


 まぁ千里さんとは色々あったけれども。その色々があったお蔭で現在俺の知的顧問(ブレーン)をしてくれているんだと考えると……、プラマイゼロかな。


『それにしてもプレちゃんの事前予想でブッチギリ1位にしてた紗丹君がまさかの2位です。

 こうなると1位は誰なのか……、必然的に予想出来てしまいますね!』


「誰なのよ! 全く分からないんだけど!!」


 そりゃ10位からちゃんと発表を聞いてないからでしょうに。今のところ2位()と6位と8位しか把握出来てないし。ってか信弥(しんや)さんは何位だったんだろうか。

 あと青葉(あおば)さんと先崎(せんざき)。青葉さんはともかく、先崎はプレイヤーとして本腰を入れたのが遅かったから、まだ上位に食い込むほど人気は出てないかも知れないけど。


『さてさてさてっ、アクトレスの皆様はもう1位が誰なのかお分かりかと思いますが、発表の前にスペックスからのお知らせです』


「そんなのいいから早く発表しなさいよ!」


 いやいや、あくまでこれはスペックスの都合だから。千里さんに言っても仕方ない事だから。ちょっと落ち着きなさい。

 頭を撫でてやると、さゆは不本意そうにしながらも大人しくなった。


『え~、今さら感はありますが、この総選挙は決して1人のプレイヤーのみに投票しなければならない訳ではありません。

 もちろん全票を推しプレイヤーに投じたい気持ちは十分に理解しておりますが、こっちのプレイヤーにも頑張ってほしいな! という気になるプレイヤーにも投票して頂きたい。

 今回の総選挙の結果はプレイヤー本人の実績として残りますので、そういった観点からも多くのプレイヤーへ投票して頂く事で、スペックス所属プレイヤーの質が高まります』


 パチパチパチパチ~。拍手をしてくれているアクトレス達は、すでに複数のプレイヤーに投票して下さっているんじゃないだろうか。


 モニターに映ったアクトレス達を眺めていると、何と姐さんこと道子(みちこ)さんが腕を組んで、別なアクトレスの集団を睨み付けてらっしゃる。よく見ると道子さんの後ろにも道子さんと雰囲気が似ているアクトレス達の姿が。

 あ~、派閥闘争的な何かかな? 積極的な選挙活動は非常にありがたいけど、実力行使だけは控えて頂きたいです。はい。


『それと、残りの選挙期間で順位が大きく変動する事も予想されます。何分スペックスにとっても初めての試みですので、どのような結果になるのか分かりません。

 従って、第2回総選挙に向けて、ご意見やご感想などございましたらアクトレスカウンターのアンケート用紙にご記入の上、アンケートBOXへお願い致します』


 ざわざわざわざわ……。派閥闘争が表立って動き始めたのだろうか。マイクでは拾っていないが、道子さんや相対するアクトレスが身振り手振りで(けな)し合いをしているような雰囲気だ。

 雲行きが怪しい。場合によっては運営サイドが止めに入らないと……。


『さってっ!! 興奮されているのは十分に理解出来ますが、少し落ち着きましょう。あくまで、中間発表です。まだ順位が確定した訳ではありません!!

 各々方、勝負はこれからです。よろしいですか?』


 うおぉぉぉぉぉ!!!!!

 おい、焚き付けてる感があるけど大丈夫か……?


「アクトレスの闘争心を他のアクトレスではなく総選挙自体に向け直したね、やっぱり千里さんはなかなかやるね、見た目幼女なのに」


 さゆ、一言多い。


『それでは第1位の発っ表ぉ~ですっ!!

 だららららららららららららららららららららららっ』


 長い!!


『だんっ!!

 Aランクプレイヤー、二ノ宮(にのみや)潤一(じゅんいち)!!!』


 うぉぉぉ~!!! きゃぁ~~~!!! ダンッ! ダンッ!! ダンッ!!!

 止めて、道子さん地団駄踏むの止めて……。向かい合って立っているアクトレスがガッツポーズをして叫んでいる。

 止めて、それ以上は危険よ!


『え~、潤一君ははっきりと言ってオールラウンドプレイヤーですね。求めている役柄やお断り方法、ズバッと応えてくれます。スペックスを代表するプレイヤーであると言っても過言ではありません、でした。

 今はスペックスを代表する2人のうちの1人、という表現が正しいのではないでしょうか』


 千里さん、それはあまりにも身内贔屓が過ぎるような気がするんだけど。司会なんだからあくまで公正に進行して下さいね。


「あぁ~、二ノ宮君ね、なるほどなるほど。となるとこれは組織票か。優希よりもプレイヤー歴も長いし、その分お相手したアクトレスの人数も多い。アクトレスオフ会で結束を固めて総選挙に挑んだ作戦勝ちなのかな」


 さゆがまたもブツブツ言い出した。選挙に組織票は付き物だけど、作戦なんかあるんだな。よく分からんけど、俺が思っている以上に総選挙は奥が深いのかも知れない。


 これは次回開催に向けてじっくりと反省点や改善点を挙げておかないと、後でまた賢一(けんいち)さんに絞られるパターンだな。

 と、終わる前に次の話をしても仕方がない。モニターを見ると、また険悪な雰囲気になっている道子さんともうお1人のアクトレス。

 どうしたもんかと考えていると、何やらテレビでよく見かけるフリップを両手に掲げたアクトレスが両者の間に分け入った。


『私が推すプレイヤーは希瑠紗丹さんです! 見て下さいこのお顔、このお姿。近々主演映画で芸能界デビューするのではないかと噂されている彼です!!

 今投票しておかないと、次の選挙には出ない可能性まであります。投票するなら今なんですっ!!!』


 うわっ、月崎(つきさき)さん何やってるんですか!? フリップをよく見ると俺の顔写真が貼り付けられてるし!! ってかその写真いつ撮ったんだ……!?

 俺を推して下さるのは本当にうれしいんだけど、月崎さんとプレイした事ないんだよな。


『いいえ投票するなら二ノ宮君よ! 初代ミスターハイプレイヤーの座は彼の物に決まっているわ!!』


 うわぁ……、何だミスターハイプレイヤーって。ダサいってもんじゃないぞ。

 1位になったらミスターハイプレイヤーって呼ばれるの? すごくお断りしたいです。


「ミwスwタwーwハwイwプwレwイwヤwーwっwてw!w!www」


 さゆが大ウケしている。草生やし杉。


『はいみなさん落ち着いて下さい! ここからはスペックスではなくプレちゃんの告知になりますが、はい聞いて下さい!!

 この中間発表の結果を受けて、こっち見て下さ~~い!

 月崎さんのように他のアクトレスへ向けてダイマをする機会を設けようと考えています!!!!!』


 騒いでいるアクトレスへ向けて両手を振って自分の存在をアピールする千里さん。しかしいかんせん背が低いのであまり注目を浴びていない。


『この場で推しプレイヤーをダイマするのではなく、じっくりと家で考えて、自分が好きなのはココであると自信を持って推薦出来る一文を用意しましょう!

 そして他のアクトレスの推しプレイヤーにも触れる。新たな発見があるかも知れません。

 この機会にぜひ、推しプレイヤーダイマ大会へのご参加をご検討下さい!!!』


 ところで、ダイマって何だ……?


「ダイレクトマーケティング。ステルスマーケティング、いわゆるステマと違って、こそこそ隠れて宣伝するんじゃなく堂々と声高々に自分の推しているキャラクターやアイドルを人に宣伝する方法ね」


「の、大会……?」


「どこかに会場を押さえて、あたしは優希の寝起きでも濃厚なキスに応じてくれるところが好きで~す! って発表する大会をするんじゃない?」


「いや、そういう発表は自宅のみでやってくれ」


「え~、でもそんな事言ったらみんなが優希のベッドで寝たがるようになって、結局あたしの順番が減っちゃうじゃん」


「じゃあダイマしなけりゃいいだろ」



 などとバカな会話をしている間に、いつの間にかハイプレイヤー総選挙中間発表会は終了していた。



いつもありがとうございます。

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