総選挙中間発表目前
月崎さんの登場により、一度は落ち着きを取り戻したかに思われたアクトレスカウンターであるが、月崎さんがポロリと零した一言によって、再び大混乱に見舞われた。
オフィスに残っている瑠璃と紗雪がコード8814を発令するかと思ったが、颯爽とアクトレスカウンターに現れた紗雪の一言によって、混乱が別のベクトルへと向けられ、そして混乱ではなく熱狂として塗り替えられてしまった。
「はいはいお客様の皆様、お待たせ致しました!
今から紗丹の名前が入ったガシャカプレセルを投入したいと思います。
はい皆様、深呼吸して~。スー、ハー。オッケーですか?」
アクトレスの注目を集め、その場を収める紗雪。すごいのは紗雪なのか、それとも俺の名前が入ったガシャカプセルなのか……。
ん? 紗雪の手には3つのカプセルが。どういう事だ?
「はい落ち着きましたか? では再度こちらに注目!
この3つのカプセル全てに紗丹の名前が入っております。混乱させてしまったお詫びに当選確率3倍アップ期間です!
立て続けに紗丹の名前が出た場合は、前の人のプレイが終わるまで待機して頂く事になりますが……、よろしいでしょうか?」
「「「「「よろしいで~~~す!!!!!」」」」」
とまぁこんな感じで紗雪が事態を収拾し、その後は通常営業となった訳だ。俺としては先に名前が出るか後に名前が出るかの違いだけであり、俺が通常の3倍働かされる訳でもないので、上手いやり方だったと思う。
また近いうちに紗雪を存分に可愛がってやろう。
で、スペックスの営業が終わった後、情報収集担当である美代の元に訪れた。事前にプレちゃんの管理人であり俺の知的顧問でもある千里さんにも連絡を取り、みみのマンションに来てもらったのだ。
千里さんは月崎さんと親しい友人であるらしく、非常に熱心なアクトレスである事、そして純粋にお断り屋を楽しでおられるアクトレスである事を教えられた。みみが裏取りをしておくと言っていたが、そこまでの必要性を感じられなかったのでいらないと伝えた。
ここは信用するかどうか。俺は月崎さんを信用すると決めた。
ちなみにフルネームは月崎朋果さん。あくまでこの名前はアクトレスネームであり、本名は知らないとの事。
千里さんが連絡先を知っているそうなので、内部のアドバイザーである千里さんと、外部のアドバイザーである月崎さん。両方の視点での意見が欲しい時にコンタクトを取りたいと思っている。
ただ、紗雪が混乱を何とか収めた際に月崎さんがどのようなリアクションを取っておられたのかまで確認していないので、あれで誤魔化されてくれたかどうかが分からない状況だ。
次にお会いした時に、「あの話なんですが」と切り出されたらどうしようか。
まぁ、その時はその時という事で、とりあえず保留とする。
そしてハイスペックス総選挙、中間発表について。
スペックスのアクトレスカウンターにある、巨大なモニターに現在の順位と得票数を表示しておくだけのつもりだったが、それだけではダメだと千里さんより指摘を受け、中間発表の開示時間を18時とし、順位の開示はトップ30から順番に読み上げて行く方式に転換した。
その読み上げをアクトレスカウンターで行い、ネット経由でその様子をライブ配信する。次回からはアクトレスアプリを通じれば中継が見れるようにしたいところ。さすがに今回は間に合わないので既存のサービスを使う。
で、誰にその中間順位を発表してもらうのか、という点だが。つまりは中間発表という名のイベントを誰が司会と進行をするのかだ。
瑠璃はスペックスの社長なので、イベントの司会ではなくどちらかというと用意された座席に座って時々コメントをする程度が望ましいだろう、と。
牡丹はそのような仕切りや進行をするような表の役割は苦手であるという理由から辞退。あくまで裏方で頑張るとの事。
では紗雪はどうかというと、誰かのアシスタントをする分には構わないが、メインの司会として上手く立ち回れるかどうかは不安であると、これまた牡丹と同じく辞退を申し出た。
じゃあ俺か? 俺も司会なんて出来ないが、と言ったところ、中間発表の際はアクトレスが中間発表を生で見ようと多数来店する事が予想される為、俺が司会では混乱を来す恐れがあるそうで、却下された。
じゃあじゃあ誰がすんだよ、どっかから呼ぶのかよ、と思ったところ、千里さんが手を挙げてくれた。
千里さん曰く、プレちゃんを通じてお断り屋関連のイベントを企画して、運営から司会から会計から全部やった経験があるらしい。
また、トップ30に入るプレイヤーなら何度も当たっているだろうから、ちょっとしたアピールポイントやプレイ中の癖であるとか、そういったコメントを付ける事も可能だと千里さんが言ってくれたので、お任せする事にした。
そして中間発表時点での得票数は非公開とする方針に決まった。これも千里さん曰く、上位とそれ以外の得票数に開きがあってもなくても、過激なアクトレスがどのような動きをするか分からないからだと言う。
あとちょっとで逆転出来ると知れば、その時点からなりふり構わず知り合いをアクトレスへと勧誘して自分の推しプレイヤーへ投票するよう呼び掛ける場合も想定出来る。その場合、その知り合いが迷惑だと思えばお断り屋という業種全体に対するイメージダウンに繋がる。
また、大きな開きがあった場合は明らかに得票数を操作している! と難癖を付けられる可能性も考えられる。何分初めてのハイプレイヤー総選挙開催の為、出来る限りこちらに落ち度のないクレームを受けないようにする必要がある。
かと言って最終得票数を非公開にすると、それはそれで最終発表の際に操作した後の順位を公開するつもりだろうと言われればそれまでなんだけど。
なので、中間発表時点では全プレイヤーの総得票数は公開するが、個別の得票数は最終発表まで非公開にする事に決めた。
初めての試みなのだから、必ず何かしらのクレームやトラブルは発生する。その発生した問題に対し、次回からはどうするべきかという前向きな検討が必要になる。
誰かが責任を取る、ではなくより良い物にするにはどうするかを検討する。そうしなければ、より良いサービスの提供なんて無理だ。
ここが悪いからダメ、じゃあ止める。になってしまうのではなく、より多くの顧客に満足して頂けるサービス提供を目指し、日々情報収集し、日々改善に努める。
これでいいだろうと現状に満足するのではなく、もっと良く出来ないかと試行錯誤する姿勢が大切だと思う。
さて、千里さんを交えての経営者会議の開催がちょっと遅かった気はするが、遅過ぎるという事はない。次回、次回からは今回の結果を踏まえてしっかりと……。
「優希、次回は、次回以降はとお前は言うが、今回がしっかりと成功しない限りは次回開催なんてないんだからな? それは当然分かっているよな?」
経営者会議の後、俺1人だけ賢一さんに居残りを命じられてこんこんと説教を受けてしまった。
反省、そして次に繋げる改善点。これが大事なのである!!
「だからな、遅過ぎるという事はないにせよ、早いに越した事はないんだぞ? 事前にどれだけ準備と不測の事態を想定出来るかどうかが成功の鍵なんだからな?」
はい……、すみませんでした……。
「それとだな……」
いつもありがとうございます。




