表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
友達の彼女の告白を断ったら、お断り屋にスカウトされました!  作者: なつのさんち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

151/212

人に見られる事を前提としたプレイ

 生放送の後、すぐにテレビ局を飛び出した。テレビ局の駐車場で待機していた紗雪(さゆき)と合流し、紗雪の運転する車へと乗り込む。

 瑠璃(るり)が後部座席を開けて俺を運転席の後ろへ誘導するもんだから、手が繋げないとか信号待ちでのチューがとか紗雪がブツブツ言っている。


 紗雪は俺がテレビに生出演する事によってスペックスで騒ぎになるだろうと予想していた為、大学での講義が終わってすぐにここで待っていてくれたらしい。

 しかし、俺がいないってだけで騒ぎになるのって店としてどうなんだろうか。同じく後部座席に座った瑠璃がやたら右に寄って来るのをバックミラーでチラリと睨みながら紗雪が車を出した。


「違うよお義兄(にー)ちゃん、いないってだけじゃないんだよ。いないだけだったらそんな騒ぎにはならないよ。

 むしろ、テレビなんかに出てる暇があるんなら私の相手をしてよ!! っていうお客様(アクトレス)達の本音だと思うよ」


 なるほど、いないのではなく別の場所で何かをしている姿が確認出来るからこそ店に出て来い、という要望な訳か。

 紗雪の言わんとしている事を理解し、でもテレビに出させたのは瑠璃なんだから俺のせいじゃないじゃんと改めて思う。


「それはまぁそうですけど……、宣伝効果もありますし」


「いやいや、全国放送で宣伝するほどか? ネットサービスを始めてたんならまだしも、スペックスに来ないとサービスを受けられないだろ?

 いくら新幹線や飛行機に乗ってまで来店して下さる方もおられるとは言え、集客に直結するとは思えないんだけどなぁ」


 首都圏で行列になるラーメン店! と言われても、視聴者の90パーセントが気軽に行く事の出来ない場所なので全国放送でやる意味あるんだろうかと疑問に思っていたが、まさか自分がその対象になるとは思ってもみなかった。

 瑠璃は独り言のようにステータスが、とか露出度が、とかブツブツ言ってる。こいつらブツブツシスターズなのか?



 スペックスビルの地下駐車場で紗雪の車から降り、エレベーターでとりあえずオフィスへと向かう。

 牡丹(ぼたん)はアクトレスカウンターで対応しているようで、オフィスにはいなかった。

 状況を説明してくれた事務員さんに止められたが、一応原因である俺が行った方がいいだろうと思い、再びエレベーターに乗って1階のアクトレスカウンターへ向かった。

 瑠璃と紗雪のブツブツシスターズは不測の事態に備えてオフィスに待機。万が一の際はコード8814(やばいよ)を発令すると言っていたが、まぁそうならないよう立ち回りたいと思う。



紗丹(さたん)は間もなくガシャに投入されますので、もうしばらくお待ち下さい!」


 カウンターの奥に位置するエレベーターから降りると、大声を張り上げながらペコペコと頭を下げている牡丹の後姿を確認。アクトレス達の罵詈雑言(メイクサムノイズ)によって声がかき消されている。

 頭を下げるたびに眼鏡がずれ、直しながら頭を上げるというのを繰り返している。いかにも困り果てた責任者という雰囲気が出ていて非常によろしい。


 それにしても俺がガシャに投入されるという言い方どうにかならんのか。店に出勤するとかプレイ可能になるとか店頭に並ぶとか他に言い方あるだろう。最後のはちょっと違うけど。


「えっ!? あれ紗丹君じゃない!!?」


「ホントだわ! 私の為に急いで戻って来てくれたんだわっ!!」


「早く早く早く早く!!!」


 あ、これ結構怖い。よくこの状況を牡丹は1人で耐えていたな。後でお詫びに何かしてあげないとな。俺のせいじゃないけど。

 アクトレスに見えないように牡丹の腰をポンポンと撫でた後、アクトレスへ向けて一礼をする。


「皆様、お待たせ致しまして申し訳ございません。

 ただ今戻りましたので、私の名前が書かれたガシャカプセルを入れさせて頂きます」


 キャーだとかウワーだとかの歓声と拍手を受ける。良かった、何とかこの場を凌げそうだ。


「ちょっとよろしいでしょうか」


 そう声を上げながら、1人のアクトレスがカウンターへと歩いて来た。

 姿勢良く伸ばされた背筋、つんと澄ましたお顔には茶色の丸眼鏡。肩口まで伸ばされたサラサラストレートな黒髪、白いブラウスに紺のパンツスーツ。そして足元はクリーム色のエナメルのパンプス。

 お相手を務めた事はないはずだ。こんな綺麗なお姉さんなら絶対に覚えている。うん。


「これはこれは月崎(つきさき)様、いつもありがとうございます」


 牡丹もよく知る常連のアクトレスらしい。牡丹が俺の耳元で月崎さんがAランクアクトレスである事を告げる。

 これはこれは、いつもありがとうございます。


「見てみやの生放送を拝見していて気になった点がありましたので、少しお時間よろしいですか?」


 おっと、視聴者からのご意見らしい。

 アクトレス達からブーブーと非難の声が上がるかと思ったが、月崎さんは一目置かれているようで、みんなで月崎さんに注目しておられる。


「はい、私でお答え出来る事であれば」


「では早速。

 番組内でプレイ内容が台本として用意してあるという発言がありましたが、本当ですか?」


 それは本当だ。番組の構成作家さんが書いたと思われる台本を手渡された。一言一句俺と橋内(はしうち)さんのセリフが書かれていて、このままやれば5分でプレイが終わるからとADさんにも言われていた。

 結局橋内さんがその台本に従わず、アドリブをバンバンやり出してしまったので、5分どころか1つCMを飛ばしてのプレイとなったんだけど。

 俺が月崎さんに向けて頷くと、そうですかと残念そうな表情を浮かべられた。


「では次の質問です。

 橋内さんの設定(プレイ)要望(オーダー)はお嬢様で、自分の見た目に自信がなく、近付いて来る人がみんな自分のお金目当てなんじゃないかと疑ってしまっていて」


 橋内さんが語った内容を思い出しながら話しているのだろう。時々目線を上へと向けながら、しかし迷いなく言葉を続けられる月崎さん。


「でもそのお金をちらつかせて、自分が想いを寄せる男性の気を引こうとする。お断りの方法では自分に自信が持てる、そんなセリフを言われたい。

 そのような事を仰っていたと思うのですが」


「そうですね、おおむねその通りだと思います」


 細かい言い回しは別として、橋内さんの思いの丈はそんな感じだと思う。

 ただ、あれはあくまでアドリブで始まった事であり、しっかりと彼女自身が思い描いたプレイオーダーを聞いていないので、語ったオーダーとイメージしたプレイとが彼女の中で合致したかどうかは定かではない。


「このオーダーに対して紗丹さんのプレイ。橋内さんがアドリブを仕掛けて来たという事も含めて見事だと思いますが、オーダーとずれていたと思います。

 紗丹さんのプレイはむしろ……」


 ひと呼吸を置いて、再び月崎さんが口を開く。


「コネで恋人になって、なんて告白としては最低ですよね。そんな風に例え告白の仕方を間違えてしまった時にも、お断り次第で女性に優しく前を向かせてくれたら素敵だな~と思って、オーダーしました!」


 うおっ、話し方に仕草に表情、どことなく橋内さんっぽい! さっきの凛とした雰囲気と全然違うキャピキャピさ。これがAランクアクトレスの実力か……。胸の前で両手を組み、目をキラキラとさせてイキイキと語って下さった橋内さん役の月崎さん。

 さて、と呟いて月崎さんが元の落ち着いた雰囲気へと戻る。


「プレイ内容がオーダーと合致していないように見受けられました。実際は店内でプレイする訳ですし、誰もそんな風に客観視する事はないと思います。

 ですが、テレビで放送されるという事を考えるとやはりそういう面も意識された方が良かったのではないでしょうか」


 グサリと胸に突き刺さる。ハイスペックスでの詳細な営業内容については公表していないので、月崎さんが今後ハイスペックスで公開プレイをする計画があると知っておられる訳ではない。

 でも、彼女の考えは俺にとって、いやスペックス経営陣にとって非常にありがたい意見だ。今のタイミングでこの意見を貰えたのは嬉しい誤算。生放送に出た意味があるってものだ。


「紗丹さんはあの時、怒りを我慢するような、そんな表情でプレイされているように感じました。私は紗丹さんならば、その怒りを抑える一瞬の表情さえもコントロール出来る。そう確信してます。

 これからも頑張って下さい。応援しております」


 全てを見透かされているような気持ちだ。どんな些細な表情や仕草でさえも見逃さない、そんな気迫のような熱い想いが月崎さんから伝わって来る。

 本当にお断り屋が好きである、そう素直に感じられる叱咤激励。


 俺も持てる全てを出して、全力で月崎さんの気持ちに応えなければならない。


「そこまで見て頂いているなんて感激です。貴重なご意見を頂きまして誠にありがとうございます。私個人としてもプレイ中の立ち回りや相手の想いを汲む姿勢を。そしてスペックスの今後の経営方針としても、プレイのあり方を考えさせられるご意見でした。

 今後の営業内容の改善案として話し合いたいと思います」


 姿勢を正し、月崎さんへ頭を下げる。牡丹も俺に合わせて礼をして、2人同時に顔を上げると、そこにはポカンとした表情の月崎さん。

 どうしたんだろうか……?


「あの、私の勘違いであれば申し訳ないんですが……。

 もしかして紗丹さんはスペックスの経営に携わってらっしゃるんですか?」



 その言葉を受けて、フロアにいるアクトレス全員が息を呑み、そして声を上げた。




「えええええええっ!!!? 紗丹君ってスペックスの経営者だったの!?」


「え、瑠璃さんが社長で? 牡丹さんが専務で? 紗雪ちゃんが常務で……、紗丹君は!?」


「プレちゃんにリークしなきゃっ!!」


「プレイイングマネージャーって事!!?」



 やっちまった……。どうやって誤魔化そうか。月崎さん、相談に乗ってくれませんか!?


「瑠璃さん、牡丹さん、紗雪ちゃんで瑠、紗、丹……。

 それに前回の生放送の時の結城(ゆうき)エミルの呼び方が、ゆーちゃん? ゆーき、ゆうき、ゆう希……。

 本名はゆうきさんなんだ! え? ゆうき、エミル……?」


 うわぁ~! ここにもブツブツ言い出した人が!? いくらどことなく牡丹と雰囲気が似ているからって、ブツブツシスターズまで真似る事はないんですよ!!?



 アクトレスカウンターは一旦落ち着きを取り戻していたところから一変、再びアクトレス達の黄色い声に満たされてカオスな状態になってしまった。


 コード8814発令はまだかっ!?





いつもありがとうございます。

今回登場致しました新キャラ、月崎さんは電子書籍版お断り屋2話の表紙を飾る、牡丹の髪の毛を縛っていない&掛けている眼鏡を茶色い丸眼鏡に変更したようなイメージです。

ハーレム要員ではございません(重要)


まだ2話の表紙を見ていない! という方は各電子書店様より「お断り屋」で検索検索ぅ♪



誤字修正致しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ