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友達の彼女の告白を断ったら、お断り屋にスカウトされました!  作者: なつのさんち


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149/212

コネで就職させてあげるよシチュ:リクエスト

1周年記念SS、リクエストシチュエーション回その5です。

第三者視点でお送り致します。

お名前を出されると嫌がられると思うので伏せますが、

なろう作家様がリクエスト&アドバイスを下さいました!

ありがとございます。


そして本日より電子書籍版お断り屋第4話が公開されております。

まだチェックされていない方、どうかあおいあり様の表紙イラストだけでもご覧下さいませ。

よろしくお願い致します!!!

 スラックスの後ろポケットに突っ込んでいたハンカチを取り出し、顔に押し付けるようにして汗を拭くリクルートスーツ姿の男性、坂本(さかもと)

 残暑厳しい秋口に、未だ企業から内定を貰えずに就活に(いそ)しむ彼が、喉を潤そうと大学構内の自販機の前で品定めをしている。

 そんな彼の隣で立ち止まり、私服姿の女性が声を掛けた。


「坂本君、お疲れみたいね?」


「ん? あぁ、中条(なかじょう)さん。そりゃ疲れるよ、報われない努力ばっかでさ」


 ハハハ、と乾いたような笑い声を上げる坂本。

 坂本と中条は同じゼミで、よく顔を合わせる仲だ。坂本は男女分け隔てなく付き合いを持ち、特段異性を意識しない性格の持ち主。ギラギラしてなくて良い、と女性から一定の評価を得ている。

 しかしだからこそ、特定の相手もいない。自分に向けられる好意が、友達に向けるモノ以上だという事に気付けないのだ。


 中条が自販機で2本のペットボトルを購入し、どちらがいいかと坂本へ訪ねる。


「ゼミ室へ行かない? 聞いてほしい話があるんだけど」


 相談したい事があるから飲み物を奢るつもりらしい。

 そんな中条の誘いに、坂本は少し違和感を覚えた。中条は幅広く友達付き合いを持っている。卒業して行った先輩達とも連絡を取っているようだし、後輩達とお喋りする姿もよく見掛ける。自分に聞いてほしいというような話題が思い浮かばないのだ。

 まぁいいか、考えても仕方ない。そう思い、坂本は中条へと頷き、礼を言って差し出されたペットボトルを受け取った。


 今日はゼミの日ではない為、ゼミ室には誰もいなかった。坂本が適当に椅子へと座ると、そのすぐ隣の椅子に中条も座る。

 他に誰もいないのに、と思いつつ、そもそも何か話があるのだろうと思い直して、坂本は中条へと向き直った。


「で、何か用事だった?」


 坂本から見て、中条は特別美人でもすごく可愛い訳でもないが、自分の素材を活かそうというメイクや服装を意識しているような気がして、その事に対してとても好感を持っていた。

 モデルのような体型ではない。でも、女性らしい丸みを帯びたシルエット。万人に見られる事を想定した体型よりも、ありのままの自然な体系の方をより、坂本は好む。

 身嗜みに気を遣い、人付き合いも上手いように思う。彼女を慕う仲間も多いし、恋人らしき男性と微笑み合っている姿も見た事がある。

 そんな中条から、自分が折り入って相談を受けるような事なんてあるだろうか。



「坂本君、来週に宮坂自動車の面接を受けるんでしょ?」


 中条の口から出たのは企業名、それも世界的に有名な自動車メーカーの名前が出た。そしてその宮坂自動車は、中条の父親が役員をしている会社である事も坂本は知っている。


「うん、上手く二次に進めたんだ」


 正直に言って、自信はない。スケジュール的に一次試験を受ける時間があったから受けた。自分からすれば内定を貰えるはずもない高ランクの企業。二次試験には進めたが、その後の役員面接や社長面接まで漕ぎ着けるだろうという期待はしていない。


「私もその日、宮坂自動車を受けるんだ。それでね、私と付き合ってくれたら、私の父に坂本君の事を話してあげる。

 一緒に宮坂自動車で働かない?」



 しばしの沈黙。

 坂本はまず、中条が自分に対して好意を持ってくれているらしいという事に驚いた。中条の周りには自分よりも彼女にお似合いだろう男性がいるのに。

 そして、その中条が大企業へ就職出来るという条件を出してまで自分と付き合いたいという事に、さらに驚く。


 中条は、そんな女性だったのだろうか……。


「恋人になっても、私の父に会ってほしいとかそんなことは絶対言わない。坂本君が他に好きな人が出来たって言えば別れるし、坂本君に損はさせないから。

 良い話だと思わない?」


 坂本の沈黙を埋めるように、いつもよりも早口で中条が続けて提案する。確かに坂本にとって悪い話ではない。就職のツテを得て、お金持ちの彼女まで出来る。

 就活で苦しんでいる坂本へもたらされた甘い誘惑。その誘惑を前にして、坂本は咄嗟に拒否するのをぐっと堪え、柔らかく微笑む。


(今は感情的になるべきではないな。俺の為にも、中条さんの為にも)


 心の中でそう呟き、そしてゆっくりと口を開いた。


「とても魅力的な提案だけどね、俺は自分の人生は自分で選ぶよ。恋も仕事も、人に与えられた物をありがたく受け取ってしまったら、後で後悔するだろうと思うんだ」


 優しい表情、優しい口調。棘なく発せられたはずの坂本の言葉はしかし、中条の提案を断るものだった。坂本の表情は別段いつもと違いはない。人当たりのいいいつもの顔。

 しかし、自分の提案をあっさりと断られた為にガタッと椅子を鳴らして立ち上がり、縋るような表情で中条が声を荒げる。


「どうして!? 坂本君にとっていい条件のはずよ!!? それ以上に私と付き合うのが……。

 ごめんなさい、突然大きな声を出してしまって……」


 思わず出てしまった感情に戸惑いつつ、中条が坂本に謝って椅子に座り直す。坂本は先ほどよりもやや引きつったような笑顔で、何も言わず中条を見つめている。


「やっぱり、私なんかじゃ坂本君とは釣り合わないよね……。美人じゃないし、スタイルもよくないもの」


 そう零して、自虐的な笑みを浮かべて床を見つめる中条。そんな中条を見て、坂本はもしかして、中条さんは自分に自信を持てない人なのではないだろうかと思った。


「私ね、私に近寄って来る人達が、私自身じゃなくて私について来る物が目的なんじゃないかって、最近そんな気がするの。思い過ごしだって思っても、何だか虚しくなっちゃって。

 でも自分からおまけを付けて坂本君の気を引こうとするなんて、どうかしてるね。

 いくら私に魅力がないからって、ね……」


 そう言って、辛そうに笑う中条。


 坂本から見て中条は、全て上手く行っている人。仲間もいて、お金もあって、充実した生活を送っている。

 しかし時々、その笑顔に影を感じる事があった。楽しそうに見えて、楽しいだけではない部分を感じていたのだ。その理由に坂本は気付いた。

 今まで中条の笑顔に対して引っかかる思いを持っていた坂本は、どこか納得したような表情で中条へ言葉を投げかける。


「僕は君の提案したコネ就職を断ったんだ。君に魅力がないって言っているんじゃないよ」


 坂本の言葉を受けて中条が勢い良く顔を上げ、坂本の目を見つめた。坂本のその目は、とても真っ直ぐで負の感情が乗っていないように見えた。


「突然の提案だったからね、やっぱり戸惑うよ。ただの告白なら考えさせてくれって言えただろうけど……。 

 中条さんが俺の事を好きだなんて考えた事もなかったしね。

 ……、嬉しかったのにな」


 坂本の言葉の最後に聞こえた残念そうな声色に、中条がビクリと肩を震わせる。そして再び顔を伏せてしまった。

 その様子を見て、坂本は中条に尋ねる。


「君はもしかして、今まで本気で何かを掴み取ろうとした事がないんじゃないか?」


 用意された物を何の疑問もなく手に取って、今まで来たんじゃないか? 本当に欲しいと思った物と本気で向き合った事はあるのか?

 中条は坂本にそう聞かれたような気がした。


「中条さんは俺の方から君を選ばせようとしたのかも知れないけど、君が自分から何かを選ばないとダメなんじゃないかな。

 君は派手に着飾ったり、化粧で自分を作ったりしない。それと相手の思いに寄り添ったり、笑顔で人と向き合う姿勢が素敵だなぁと感じてたんだ」


 坂本から中条の魅力について触れる言葉を受けて、中条は無意識に自分の頬に手を添えた。


「それは君自身の魅力だと俺は思うんだ。それは、君が自分で作り上げた本当の君なんじゃない?

 その良さに、君自身が気付かないと、ね?」


 中条は頬に手を添えたまま、何とも言い返す事なくじっと考え込んでしまった。そんな中条の肩をポンと叩き、この後も企業回りなんだと坂本がゼミ室を出て行ってしまった。

 触れられた肩に自分の手を重ね、中条は坂本に嫌われた訳ではないんだなと、安堵の息を吐いた。



 日は進んで宮坂自動車採用二次試験当日。試験受付の前でキョロキョロと何かを探す中条の姿。その後ろから肩を叩き、「おはよう」と声を掛ける坂本。


「うわっ! 坂本君!? はぁ……、ビックリしたんだけど」


 少し恨めしそうな表情の中条。両手で胸を押さえ、大きく息を吐いて呼吸を整えている。


「そんなにビックリした? でも採用試験の前にそんなにキョロキョロしてたらダメだろ、もっと堂々としておかないと。君のチャームポイントは笑顔なんだから。ま、お互い頑張ろう。

 ……、君と一緒に働ける事を願ってるよ」


「坂本君……!? ちょっと待って! 私も受付まだなの!!」


 小走りで坂本の後に続く中条の姿は、自ら何かを掴み取ろうとしている、そんな意思を感じさせるものだった。



「はぁ~い、受付はコチラですよ~、って美紗子(みさこ)じゃないか! 隣の男は一体誰だね!!」


 うわぁ~、絶対にブッコンで来るだろうと思ったらやっぱりこれだよ。橋内(はしうち)さんも用意された台本通りやってくれないし、宮屋(みやや)さんもエキストラプレイヤーとして飛び入り参加してくるし……。

 ここはどうするべきかな、アクトレスの設定(プレイ)要望(オーダー)を優先させるべきだけど、放送の尺とかを考えるとオチを付けた方がいいかも知れない。


「お、お父さん、この人は……」


 橋内さんが喋り出したけど、宮屋さんのノリに着いて行けるようなセリフが思い浮かばないようだ。

 仕方ない、ここは俺がオチを付けよう。スベっても知らん!!


「お父さん、娘さんを僕に下さい!!」


「君にお父さんと呼ばれる筋合いはない! 帰りたまえ!!」



「CM入りました~」



なろう作家様より頂いたリクエストは以下の通りです。


リクエスト:自分に自信を持てるように優しくお断りして欲しい

シチュエーション:ゼミ室と会社の受付

二人の関係:同じ大学のゼミ仲間


リクエストシチュエーション回は以上になります。


本編進行の都合上、本日この後23時にもう1話投稿致します。

合わせてよろしくお願い致します。


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