作詞活動
総合評価9000達成! ありがとうございます!!
「狭い部屋で2人」
ふむふむ……。
「愛を温め合ったあの日」
ほうほう……。
「今はこの静かな湖畔で 愛の結晶を温めている。誰からも祝福されて、私と優希はとっても幸せ。お腹の子は双子で一卵性。2人の名前から取って優姫と希子と名付ける。パパとママと呼ばせて、お揃いの服を着せて、双子用のベビーカーに乗せて湖を散歩するの。私が幸せって呟けば、あなたは俺の方が幸せだよ、だってこんなに可愛い君を奥さんに出来たんだからって……」
「はい姫子ストップ。それはもう歌詞じゃなくてただの妄想」
花蓮さんに夏希のスケジュールを確認して下さいとお願いしたら、たまたまひめと一緒にいたらしく、2人揃って俺が缶詰にされているこの会議室へやって来た。
最初は俺と夏希がウンウン唸りながら12.5歩テイストな歌詞を考えているのを黙って見ていたひめだが、私も考えたと発表したのが先ほど夏希が妄想だとツッコミを入れた歌詞だ。
「いや、まぁ気分転換にはなったよ。無理に12.5歩を意識しなくてもいいかと思い直した。
あと優希と優姫は発音が似てるから2人とも自分が呼ばれたと思って返事してしまう気がするけど」
「いやいや、そういう問題じゃないでしょ」
「そっか、確かに……。でも私と優希の名前から取るとなると……」
今度はひめが子供の名前を考えてウンウン唸り出した。この話題に関しては色々な将来の問題をはらんでいるのでこのままそっとしておこう。
「12.5歩を意識しないのはいいとしても、何を主題として歌詞を作るか決めないとダメなんじゃないの?」
夏希の言う事はもっともだ。世界観というか、歌を通して伝えたい事がないと歌詞なんて書きようがない。
いや、歌詞に意味なんてない曲もあると思うけど、自分で曲を作っている訳ではないので、どうしても歌詞に意味を持たせないと書けない気がする。
「歌詞についてもそうなんだけどな」
そう言いながらチラリと花蓮さんの方を見る。少し離れた席に座って自分のノートパソコンを開き、何かをしているっぽい。
こちらに注目していないのを確認し、夏希に自分の思っている事を小声で伝える。
「実はな、この曲が出来たらリアル迷宮イベントのどこかでライブをしようと思うんだ。何かしら自分にメリットというか、歌詞作りに自分なりの意味を作らないとこんな事出来ないなと思って。
だから、歌詞の意味というか、世界観としては魔王紗丹からお客様扮する勇者達に向けた呪詛のような内容にしようと思うんだ」
歌詞が出来上がってから、CDが発売されるまでのタイムラグがどれだけあるか分からないが、現状で曲は出来ているのだからライブで歌うのは問題ないだろう。俺が歌詞さえ書き上げる事が出来たらお披露目は可能なはずだ。
「なるほどね、自分のイベントの為に新曲を作るんだってなると意味付けが出来て、やる気が出ると。やらされている訳ではなく自らやっている事だと意識を変えるって事ね。いいと思う。
私も女優としてスカウトされた時に似たような事を考えたなぁ」
夏希は塞ぎ込んでいた俺を何とか笑わせようと考えた末、芸能界へと入ってテレビで馬鹿な事をしている姿を俺に見せればいいんじゃないかと思った。
あろう事かお笑い芸人としてのオーディションを受けようとしていた所を、今のチーフマネージャーである石田さんに止められ、女優としてスカウトをされたのだ。
本人は女優として活動する気なんてさらさらなかった訳だが、俺を笑わせるのであれば女優としての方が面白いだろうという石田さんの説得により、女優としてデビューするに至った。女優として活動するのは、あくまで俺を笑わせる為である、と。
やらされている訳ではなく、自分の目的の為にやっているのだ、と自分に言い聞かせた訳だ。
これはひめにとっても同じだな。女優になった理由としてはスペックスでスパイ活動をするように兄である基夫さんから依頼されたのが元々の理由だ。
スペックスで働くには委託契約を交わしている高畑芸能事務所に所属しているタレントになる必要がある事が分かり、ひめは女優として活動する気もないのに舞台などでお芝居をしていた訳だ。
そんなひめが俺と出会い、スパイ活動をする必要もなくなったんだけど、女優で俺の幼馴染である夏希から影響を受けて、女優として本格的に活動を始めた訳だ。
それもライバルであるはずの夏希に頭を下げてまで。あくまで、自分の為に、だ。
「優子……、姫希……、バランスが悪い……」
さて、魔王紗丹から勇者へ向けてのメッセージ。すなわちお断り屋のプレイヤーとしての視線で歌詞を書けばいいのではないか。
お断りします、と一言で済ませる事の出来ないプレイの方が断然多いこの業界だが、そこに魔王サタンとしてのキャラ付けを加える事によって何かが生まれる気がする。いや、何かしら生み出そう。
「とにかく断るようなニュアンスの言葉を並べてみるわ。
え~っと、嫌。無理。ダメ。善処します。行けたら行く。好きだけど趣味じゃない。感性が合わない。いい人なんだけどなぁ……」
「思い込みが強い。自分に入り込み過ぎる。好きな人以外目に入ってない。想いが重い。お腹にさえいもしない子供の名前考えるとか重い。少女趣味、似合ってるのがまた腹立つ。静かな湖畔ってどこ」
おい夏希、その辺で止めて。ひめちゃんが無表情でこっちを見てるよ……。
あ、椅子から立ってこっちに来た!
と思ったら俺の膝の上に乗った。しかも俺と向かい合わせに。
「私だけを見て。腐れ縁の事なんて忘れさせてあげる。全部あげる。あなたの全てを包み込む。好き、大好き、愛してる。私だけを見て。あなたを見る為だけの目、あなたの声を聞く為だけの耳、あなたの匂いを感じる為だけの鼻、あなたの種を植えるだけの……」
「はい姫子ストップ。それはもう歌詞じゃなくてただのヤンデレ」
あの、こんなんしてる場合じゃないんですけど。いつの間にか花蓮さんがこっちを見てニヤニヤしてるじゃん。
勘弁して、この人にはプライベートを極力見せたくないんです。
「うちの一番大事なタレントと、これから売って行こうとしているタレントと、期待の超大物新人タレントが三角関係……。
これは今からマスコミにリークしてスクープからの炎上商法で……」
何かブツブツ言い出した! ヤバイ、俺達のプライベートがヤバイ!!
「と、とにかくもう一度殺魔さんの曲聞き直してみるわ! 何か閃くかも知れないしな!!」
『ブレイクする その薄い壁をブレイクスルー』
曲、曲だけに集中して歌詞はスルー!
『前人未踏 まだ全人類見とらんこの秘境』
うん、リズムを意識して……。
『流れる証 迸ほとばしる汁 ホッとする 俺が初めての男やと』
「あれはゆーちゃんと再会した日……」
「あれは舞台公演が終わった次の日……」
カタカタカタカタ、ッターン!!
花蓮さんがノートパソコンで何かを打ち込み、勢い良くリターンキーを押した!?
「それで!?」
それでじゃねーよ! それこそお断りします!!
「シャワーを浴びさせてとお願いしてるのに無理矢理……」
「一緒にお風呂に入って、綺麗だよって……」
カタカタカタカタカタカタ、ッタンタンターン!!
止めろ!!!
電子書籍版お断り屋の2話目が先週より各電子書店様にて公開されております。
1話目の表紙は女社長・瑠璃。そして2話目の表紙は美人秘書・牡丹です。
全4話公開予定、詳細情報は私の活動報告よりご確認下さいませ。
よろしければ、イラストを担当して下さったあおいあり様の表紙絵だけでもチェックしてみて下さい!
3話目は来週の金曜日より公開予定。書店様によってはすでに予約受付中です。
3話目の表紙を飾ってるのは、皆さまが大好きな家具!!!
よろしくお願い致します。




