希瑠紗丹のデビュー曲
200万PV達成!
無理でしかない。分かってる。無理でしかないんだ。でも、気になるんだ。
まだ誰も聞いた事がない、12.5歩のヴォーカルである殺魔さんが作ったという新曲。ファンならば絶対に気になる!
という事で、来ちゃった。
呼び出されたスタジオ、俺のサブマネージャーを名乗る花蓮さんに連れられて来ちゃったんだ。テヘッ。
ってか未だにメインのマネージャーに会った事ないんだけど、本当にいるんだろうか。
「とりあえずコレ聞け」
そう言って殺魔さんから渡されたヘッドホンを耳に掛ける。すっげぇワクワクする……!!
お、イントロが始まった。ズンズンと耳に響く重低音。カッケェ……!!!
『ブレイクする その薄い壁をブレイクスルー』
おおっ……! 当たり前だけど、殺魔さんの声だ……。CD音源とは違って、ちょっとライブ感漂う歌い方。
『前人未踏 まだ全人類見とらんこの秘境』
タンタンタンッ、知らず足でリズムを踏む。曲にのめり込む感覚。頭を左右に振って意識をダイブさせる。
この歌を、俺が歌うのか……!!
『流れる証 迸る汁 ホッとする 俺が初めての男やと』
……、んんっ?
『Tonight , I’m Only your Knight ! Now I breaking your Virgin !!』 Oh~!! Oh~!!
これアカンやつや!!
「何なんですかコレ!?」
無駄にええ声のコーラス入ってるし! 何でお前の初めて散らしたでみたいな歌を歌わなアカンねん!!
「何や、文句でもあんのか?」
うっ、殺魔さんがせっかく作ってくれたのに……、ってアカンアカン! ここはちゃんと自分の意見をハッキリと伝えておかないと、とんでもない歌がデビュー曲になってしまう!!!
待て待て待て、そもそもデビュー曲とか言っているが、継続してシングルを出すつもりなんて全くないからな!
「勘弁して下さい。こんな曲よう歌えませんって」
「そーか、ほんならお前がこの曲に歌詞付けろや」
……、は?
「それはあくまでデモや、俺はとりあえずコレ聞けとしか言うてへん。俺が聞け言うたんは曲であって歌詞やない。
まぁこのままでも十分アリやなぁ、やっぱ俺って天才やなぁ思てたけど、お前が気に入らん言うんやったら自分で歌詞付けてみろ」
「いやいやいや、決してそういう意味では……」
「分かりました! ではこの曲をこのオーディオプレイヤーにコピーさせてもらってもよろしいでしょうか!?」
黙れ花蓮! 俺に何させるつもりや!? って作詞させるつもりか、なるほどなるほど……。
ってなるかアホ!!
「おう、コピーせんでもコレごと持ってったらええよ。
ほな俺らこれからレコーディングあるから。これ俺の連絡先メモしてるし、何かあったら連絡せぇや」
げっ、もしかして、また嵌められた……!? でも殺魔さんの連絡先ゲットした!
ってアカンアカンアカン!!
「あの!!!」
「さぁさぁ紗丹さん、殺魔さんもお時間がないようですので、失礼致しましょう! うちの事務所にお部屋を用意しますから、歌詞を付ける作業はそちらでしましょうね。
ほらほらほら早く!! はい、ありがとうございましたぁ~!!!」
「おう、歌詞出来たら送ってくれ。それ見ながらデモ作って、それ聞き込んでからレコーディングや。ほなな」
ほななやないて! そんなん無理やってや!!
「失礼致しま~す!!」
「完全にやってくれましたね、花蓮さん……」
「まぁまぁ、こんな事ってなかなかないですよ? デビュー曲の歌詞を自分で付けられるなんてすごい名誉な事です。
この名誉を、チャンスを、がっつり活かしましょう!」
花蓮さんに無理やりスタジオを連れ出されて、そのままタクシーへと押し込まれて高畑芸能事務所へと拉致られてしまった。
最初からこの流れを想定していたかのように小さな会議室が予約されており、飲み物や食べ物が机に用意されていた。
何故か俺のノートパソコンもそこに置かれていて、しかしいつも使っているモバイルルータはない。
「花蓮さん、この建物で使っている無線LANのSSIDとパスワードを教えて下さい」
ステルスSSIDになっているのか、ノートパソコンでネットワークが拾えない。
「弊社はVPNを採用しておりますので、部外者には教えられないようになっております。ご了承下さい」
「分かりました、それでしたら部外者は退出する事に致します。お邪魔しました」
「いやいやいや、紗丹さんはうちの大事なタレントです! 是非この会議室で作詞活動を」
今部外者にはWiFi使わせませんって言ったよな!?
つまりあれか、ネット環境のない状態で作詞をしろと。缶詰状態ってやつか。何で俺がこんな目に合わないとダメなんだ……。
「さぁさ、頑張りましょう! 何か御用がございましたら私が手配しますので」
頑張りましょうじゃないよ、今日はプレイヤー業が終わったらゆっくりしようと思ってたのに……。
ん? ノートパソコンがここにあるって事は、また誰かが内通してるな!? 俺が今日あの後予定がないってのも分かっている人物……、宮坂三姉妹め!!
全員が容疑者、そして全員が黒と断定。
覚えとけよ……!!
ってそんな事を思っていても始まらない。やる、やろう。花蓮さんの言う通り、こんな機会滅多にないだろう。もうそう思う事にしよう。思い込め俺。
そうだ、これも俺に必要な仕事にしてしまえばいい。リアル迷宮でこの歌を使うってのはどうだ?
お、なかなかいいかも知れん。
「とりあえず今まで出された12.5歩のCDと歌詞カード。それとパンクロック系・メロコア系のバンドのCDも。レゲエは……、まぁあったら用意して下さい。あと筆記用具。
あ~っとCDを再生出来るプレイヤーを2・3個。あ、自分の声を録音出来るようなレコーダーも。ヘッドホンもお願いします」
作詞なんてやった事ないから何があればいいか分からない。とりあえずあったらいいかも? って思った物を手当たり次第花蓮さんにお願いする。
「はいはい分かりました」
花蓮さんはスマホを取り出して、今言った物を電話で誰かに言付けている。お前が行くんちゃうんかい!!
っと、それは別にどうでもいいとして。
「やっぱり12.5歩テイストを感じる歌詞にしたいなと思うんですけど、夏希も12.5歩のファンなので相談しながら歌詞を作って行ければなと。
もし夏希のスケジュールが許すようならここに呼んでほしいんですけど」
「分かりました、石田に確認してみますね。よしよし、紗丹さんがやる気になってくれて嬉しいです!
いやぁ~、これはきっと華々しいデビューになりますよ~」
ふふん、それはどうかな?
電子書籍版お断り屋の2話目が本日より各電子書店様にて公開されております。
1話目の表紙は女社長・瑠璃。そして2話目の表紙は美人秘書・牡丹です。
全4話公開予定、詳細情報は私の活動報告よりご確認下さいませ。
よろしければ、イラストを担当して下さったあおいあり様の表紙絵だけでもチェックしてみて下さい!
よろしくお願い致します。




