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友達の彼女の告白を断ったら、お断り屋にスカウトされました!  作者: なつのさんち


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電子書籍版公開記念SS第一夜:瑠璃

7月27日金曜日に電子書籍版お断り屋が公開される事を記念致しまして、六夜連続投稿致します。

電子書籍版の詳細情報につきましては私の活動報告からご確認願います。


第一夜は瑠璃です。


 瑠璃るりがスマホをじぃ~っと見つめている。時折横へスワイプしており、何かページを捲っているような雰囲気。

 スペックス最上階の住居スペース、瑠璃の夢を形にしたこの家にいるのは俺と瑠璃だけ。他の嫁達はそれぞれの仕事、もしくは学業の為に外出している。


 自分で言うのも何だが、俺と2人きりの時に瑠璃がスマホを(いじ)って俺をほったらかしにするなんて初めてかも知れない。社長業が忙しい時には自分の部屋に籠る事が多い瑠璃だが、今は2人ともリビングで寛いでいる。


 気になる……。


「瑠璃、何読んでるんだ?」


 1人悶々と考え込むよりは、本人に確認した方が精神衛生上宜しいと判断し、瑠璃に声を掛けたんだけど……。

 あれ? 返事がない……。



 瑠璃は俺が友達の彼女からの告白を断った際、喫茶店の隣のテーブルに従姉妹である牡丹(ぼたん)と共に2人で座っていた。

 お断り屋のプレイヤーにならないか、とスカウトされた時には何の冗談だと疑ったもんだけど、今となっては俺もスペックスの役員兼プレイヤーとして忙しくも充実した毎日を送っている。


 俺は過去の複雑なあれこれを乗り越えられたのは、この時のスカウトがキッカケであると感謝しているし、瑠璃もそのスカウトに応じた俺の事をとても大切にしてくれている。



 もう一度言おう、俺が瑠璃に声を掛けているのに、返事がない!!

 これは最早事件である。瑠璃が俺の問い掛けを無視するなんて!!!


 とはいえ、俺は瑠璃の事を信頼している。

 浮気? する訳がない。その点は全く疑っていないが、それでも俺を独り占め出来るタイミングで他の事に(うつつ)を抜かすなんて、ちょっとモヤッとしてしまうのも事実。

 自分で言っててキモいな……。



 ソファーから腰を上げ、そろりそろりと瑠璃の背後へと移動する。対面のソファーに座っていた瑠璃の後ろから、ガバッと抱き付く。


「キャッ!? あ、アナタ……」


 やはりかなり集中していたようだ。首を捻って俺の頬にキスをした後、すぐに目線はスマホへと戻される。むむむ……。


「アナタ、少しだけ待ってもらっていいですか?」


 え!? 瑠璃が俺に、待てをする、だとっ……!!?



「ふぅ……、あら? アナタ、どうかされましたか?」


 不貞腐れてるなう。

 後ろから抱き付くも冷たくあしらわれ、髪を撫でるも無反応。耳に触れるとと手で払われ、瑠璃の名を呼ぶも生返事。

 気を引く事を諦め、瑠璃の膝に頭を乗せて勝手に膝枕を堪能していたところだ。


 それにしても気になる。瑠璃は一体何に夢中になっていたのだろうか。


「お気に入りのWEB小説が! 何と!! 電子書籍になったんです!!!」


 ドヤァ~! と鼻息荒くそう告げる瑠璃。という事はあれか? 俺は電子書籍に負けてのか……?


「ジャンルとしては現実世界の恋愛のお話なんです。

 ハーレム物のラブコメなんですけど、ファンタジー物によくあるような設定をいかに現実世界を舞台とした世界観に盛り込んで行けるかという作風で、何よりメインヒロインの女社長が、とっっっっても魅力的なんですよ!!!!」


 あ~、瑠璃が学生時代から愛してやまないラノベのラブコメ、それもハーレム物か。

 瑠璃の実家にある部屋の本棚にぎっしりと文庫本が詰め込まれていたな。ハーレム物の作品が好き過ぎて、高じて自分でもハーレムを作り上げたくらいだし。

 瑠璃にその趣味がなければ今俺はここにいない訳で。そう考えると瑠璃が夢中になって電子書籍を読んでる間、俺に構ってくれないからって不貞腐れるってのは筋が違うのかも知れない。


「時代は女社長! 今キているのは女社長ヒロインですよっ!!」


 女社長がメインヒロインの小説? でもハーレム物ならば他にも色々なヒロインがいるんじゃないだろうか。

 例えばその女社長の秘書(美人)とか、その2人の身の回りの世話をするメイドさん(美少女)(実は女社長の妹)とか、主人公の幼馴染(人気女優)とか、ちょっとロリ入ってる謎の美少女(天然キャラ)(舞台女優)とか。

 あとは女スパイとブレーンと、って俺は何を考えているんだろう。不思議だ、自然と脳内にラノベの設定が沸き上がってくる……。


 もしかして俺、小説家になれるんじゃね?



「WEB小説って事は、ネットでタダで読めるんだろ? なのにわざわざお金を出して買ったの?」


優希ゆうき君、全っ然分かってないのね!?」


 うわっ、アナタ呼びでもなく敬語でもなく、これはお説教モードなのか……?

 膝枕されていた頭を持ち上げられ、ソファーに座らせられた。そしてわざわざローテーブルの向こう側、対面のソファーに座り直す瑠璃。


「まず表紙として主人公とメインヒロインが、何と! イラスト化されている!!

 今までは文字を読んでイメージするだけだったキャラに、フルカラーの絵が付く!!!

 そしてな・ナ・何と! 改めて作者自ら校閲する事でより洗練されたセリフ、ルビ使い、そしていくらかの加筆修正!!

 そして何よりWEB版にはない追加エピソード!!!

 これはもうWEB版とは一線を画した別・作・品っ!!!

 言うなればそう、電子書籍版なのよ!!!!!」


 またもドヤ顔を決める瑠璃だが、いやいや何も決まってないからな? 言うなればも何も、事実それは電子書籍版なんじゃないの?


「いい? 優希君。確かにWEB版はタダで読む事が出来るわ。

 でも、この小説の電子書籍版は女社長ヒロインの重要な初期設定が変更になってるの。これはラノベ大好き、ハーレム大好きなファン層からすればとっても意味のある変更なの。

 WEB版で引っ掛かりを覚えている読者にとって、電子書籍版はまさに完・成・品っ。

 WEB版がβ版だとするならば、この電子書籍版はRC版なのよ!!」


 身振り手振りで説明してくれているところ申し訳ないが、RC版の意味分かって言ってんの?

 リリース(Release)候補(Candidate)版、つまりRC版もまだ正式版ではないんだけれども……。


「そしてもちろんWEB版を読んでいない、新たな読者にもすんなりと受け入れられるであろう電子書籍版!

 WEB版では投稿されたそのサイトのみでしか読めない。

 しか~し、電子書籍版は複数の大手サイトから購入・ダウンロード可能!

 このサイトのポイントが余ってるからコレを買ってみよう、そんな風に気軽に手を伸ばす事が出来るのよ!!!」


 ダンッ! とローテーブルを叩き付け、前かがみになって俺を見据える瑠璃。胸元が大きく開いており、瑠璃の雰囲気にぴったりマッチしたセクシーなブラジャーが見えている。

 家の中だからいいが、是非外では気を付けてもらいたい。


「私のオススメするこの電子書籍は、文庫本1冊分の作品を複数冊に分割して小分けでダウンロード販売されているの。

 気になるけれど文庫本1冊分を読む時間はない、もしくは1冊分丸々読んで面白くなかったら嫌だ。

 そんなユーザーでもとりあえず最初の1話分だけ読んでみようかな、そんな事が出来る小分けシステム!!

 そして1話分ごとに設定されている販売価格!!!」


 ふんすっ、と荒い鼻息を吐き出し、瑠璃はキメ顔で腕組みをする。だから胸が強調されるから外では止めてね。 

 今は良いけど。うん、とっても良いけども。


「さぁ優希君、あなたのスマホでもダウンロード購入してみて!

 1話目の表紙は私の推しヒロイン、女社長よ!!」


 う~ん、まぁ瑠璃がそこまで言うなら、読んでみようかな。



 その後、2人でイチャイチャしながら電子書籍を読んだのでした。



第二夜は明日22時投稿予定です。


感想・評価・ブックマーク・レビュー等で盛り上げて頂ければ非常に嬉しいです。

よろしくお願い致します。

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