配下とせんせぇ(女スパイとブレーン)
「総選挙、ですか……」
「そう、選挙」
旧トプステの運営方法についての経営者会議にて、スペックスの別館を作るという提案をし、大筋で了承が得られた。
選ばれたお客様に対して招待状を送り、人気があってなかなか予約が出来ない人気プレイヤーとプレイしやすい環境を用意する。
別館の名称をハイスペックスとし、そのハイスペックスに出勤するプレイヤーを選挙で決めようという案だ。
ハイプレイヤー総選挙、この案についての意見を聞く為、俺の知的顧問である千里さんの部屋にて打ち合わせ中だ。
ちなみに美代も同席している。千里さんには彼女が運営しているプレイヤーちゃんねる、通称プレちゃんを通じて周知してもらう役目があるし、みみにはアクトレスの反応や他のお断り屋店舗の動きなどの情報収集を頼むつもりだ。
「ハイスペックスでプレイ出来るアクトレスについてはこちらで選ぶ。
で、そのお相手をするプレイヤーは誰が選ぶ? となると、アクトレスに決めてもらおうという話になった」
「なるほど、単純にプレイヤーランクで決めてしまうと、ご主人様はハイプレイヤーに選ばれなくなりますね」
さすがはみみ、俺では気付けなかった事にすぐに気付いた。
俺のプレイヤーランクは未だCだから、仮にAランクプレイヤーのみ出勤出来ると規定してしまうと俺は炙れてしまう。
予約困難なプレイヤーとプレイする為のハイスペックスに、自分で言うのもアレだけど一番予約困難な俺が出られないのは明らかに問題になる。
「うわぁ、総選挙かぁ。とんでもないお金が動きそうですね……」
千里さんも頭の中のそろばんを弾いている様子。2人とも頼もしいな。
今回2人に話をしようと思ったのは、実際に総選挙をするとなるとどういう点に気を付ければいいのか、告知のタイミングはいつがいいか、どのような手段を取ればいいのか。現状ではそれくらいか。
後は、ハイスペックスでどのようなプレイを行えるようにするのか。旧トプステの運営会議にて事前に出た話題としては、公開プレイをする事によりハイスペックスの集客を上げるという提案だ。
ハイスペックスでプレイ出来るのはAランクアクトレスのみ。それだけでは客足が少ない。
そこで、Aランクアクトレスとハイプレイヤーに選ばれたプレイヤーのプレイをライブで公開する事で、ランクの低いアクトレスであってもハイスペックスへ通ってもらえるだろうという算段だ。
いつかは私もあの舞台でプレイするわ! と、自己実現欲求が掻き立てられ、さらにスペックス本館に通ってもらう事に繋がるだろうし、そんなアクトレスに羨望の眼差しで見つめられるAランクアクトレスは注目を得る事での自己尊厳欲求が満たされる。
マズローもにんまりのシステムと言える。
「投票権を得るにはプレイをすればいい、と。つまりフリーマッチングで適当なプレイヤーとプレイをこなせば、どんどん投票権を得られる訳ですね?」
「その通り。投票用紙にしてしまうと、それ自体を金銭でやり取りする可能性もあるから、アプリに紐付けして本人しか投票出来ないシステムを作るつもりだ。それに関してはアクトレスアプリの開発をお願いした会社と打ち合わせする」
いかに投票権をアプリに紐付けしたとしても、投票行為自体を金銭で買収されてしまう可能性はあるんだが、まぁそこらへんは今回は考えないでおこう。
そのあたりのアクトレスの動向については、投票期間中にみみに動いてもらっての調査となるだろう。
「総選挙の話とは別になりますが、アプリを通じて人のプレイ動画を閲覧出来るようにするのはどうでしょうか」
千里さんのアイディアはこうだ。
スペックスがアクトレスに了承を得た上でプレイを撮影する。撮影されたプレイはアプリを通じて好きな時間、好きな場所で動画として再生する事が出来る。この動画閲覧を課金対象とする事で、収益を得る新しいサービスの形だ。
「でもアクトレスへは別に収益を再分配する必要があるんじゃないか?」
「収益という形ではなく、閲覧数やお気に入りの登録数等でアクトレスポイントが上昇するようにすればいいのではないでしょうか?」
「え? でもランクは皆Aだから、これ以上ランクアップする事は出来ないだろ?」
「さすがの紗丹君でも知らないんだね。Aランクになってしまったら、他のAランクアクトレスとの差別化が図れない。
そう思いがちだけど、私達はアクトレスオフ会に出席する際は、アクトレスポイントを申告する事で優劣を決めているんです」
アクトレスポイント……、って何だ? いやいや、その前にアクトレスだけでオフ会とかやってるんだな。絶対にその場に鉢合わせしたくないな。怖い。
「アクトレスランクを上昇させる為の数字です。お断り屋協会としてはあまり注目していないかも知れませんが、アクトレスアプリのここの画面を見ると、ポイントが表示されているのが分かりますよね? これがアクトレスポイントです。
Aランクになった後、他のAランクアクトレスとの優劣を決める際にこのポイントを公表します。いずれはみなAランクになる訳ですが、先にAランクに上がっている者との差は歴然です。
そのポイントを上げる為に、またさらにスペックスへと通い詰める訳ですね」
千里さんのアクトレスアプリを見せてもらいながら説明を受ける。確かに数字が表示されていた。
あれか、レーティングポイントみたいなもんか。千里さんが嬉々として語ってくれたが、その恍惚とした表情とその道を極めし者が発する独特のオーラと相まって、悲壮さが漂っている。
まさにお断り屋沼とでも言うべきか。やり過ぎダメ、絶対。
「確かに、千里さんが言うようにアクトレスポイントが上昇するとなると、アクトレス達は競ってプレイの動画公開をしたがるでしょう。私もアクトレスポイントが欲しいです」
「みみはダメ、俺の配下だからあんま目立たれると困る」
しゅん、とするみみ。しかし俺の配下、と言われたのが気に入ったのか、ニヤニヤしてふんすふんすと鼻を鳴らしている。
その様子を見て千里さんが物欲しそうな顔を見せる。
「千里さん、頼りにしてますからね」
「はいっ!」
右手をシャン伸ばして返事をする千里さん。あれだ、小学校の授業参観で張り切る女の子みたいな恰好だ。
せんせぇ当てて! って感じ。さすが合法ロリ。でもエロスは感じないのでセーフ。むしろ微笑ましい光景だ。
「はいっ!!」
ん? あぁ、当てないとダメなのね。
「はい千里さん」
「動画の検索方法についてはよく案を練る必要があると思います。
例えばプレイヤー別はもちろん、シチュエーション別、恋人同士なのか先輩後輩なのか等細かく詳細検索出来るようにしてほしいです」
あぁ、それは確かにそうだな。後発のアクトレスにしてみれば、動画は教材みたいな物だ。
憧れのプレイヤーを見て悦に入る、だけでなく実際にこの人とプレイした時にはどのような受け答えをすればいいのか、そういう予習もするだろう。
細かいタグ付けをする事によって、自分の理想のプレイに近い動画が見つけやすくなるかも知れない。
「はいっ!!」
え、まだあんの?
「はい千里さん」
「ハイスペックスの利用料金はどうする予定ですか?」
利用料金、か。そこまで話が進んでいない事もあり、具体的には考えていなかった。
スペックスの利用料金と一緒だという頭だったのだが、ハイスペックスは料金を変える事での差別化をした方がいいのだろうか。
「ハイスペックスの利用料金は、スペックスよりも高くするべきです。ハイスペックスへ通えるという事は一種のステータス。高いステータスを見せびらかすのであれば、その料金も高くないと。
Aランクアクトレスともなると、料金が高いうんぬんは考えません。いつ自分が行ける時間が作れるか、いつお気に入りのプレイヤーが出勤するか、お金で解決出来ない事の方が多いのです。
だからこそ、より良い質のサービスを求めます。1度の経験をより良い物にしたい。その為にはお金を惜しみません。
さらには……」
これではどっちかせんせぇなのか分からない。みみに書記をお願いし、まだまだ続く千里せんせぇの授業に耳を傾けた。
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