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友達の彼女の告白を断ったら、お断り屋にスカウトされました!  作者: なつのさんち


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確定申告のついでに色々と申告して下さい

「確定申告? 俺の……?」


「ええ、優希ゆうきさんにはプレイヤーとしての報酬の他に役員報酬とスペックス株の譲り受け、そして株式配当金が支払われていますからね。

 今はマイナンバー制度によって税務署がお金の動きを把握しやすくなっているので、毎年しっかり申告をしておかないと」


 スペックスのオフィスで牡丹ぼたんが書類整理をしているのだと思ったら、俺の確定申告の資料を作っていた事が判明。

 税理士事務所にお願いする為の準備らしいが、そもそも俺が自分自身の正確な年収を把握しておらず、なおかつ確定申告なる物をしなければならないという認識もなかった為に正直びっくりしている。

 するならするで一言あってもいいと思うんだけど。お姉ちゃんだからちゃちゃっとやってあげるよ的な感じだろうか。


 ってか俺の今の個人資産っていくらになっているんだろう……。

 家族の遺産とスペックスで稼いだ報酬を一緒にしたくなかったので、新たに宮坂みやさか銀行で口座を開設し、報酬などに関しては毎月そちらへ入金されるようにしている。

 普段使うお金は美少女メイドの紗雪さゆきが毎月纏まった金額を元から持っている俺の口座に移してくれているので、スペックス用の口座にいくら入っているのか把握していない。


 別に紗雪が教えてくれない訳でもなく、俺が特に聞かないから伝えられないまま、何となくそのままなっているのだ。

 元々はそのお金はあてにしていない、プレイヤーなどいつでも辞められる、という宮坂三姉妹への無言の主張のつもりだった訳だが、今となってはただほったらかしにしているだけという言い方が正確だ。


 ちなみに紗雪にクレジットカードを作りたいと言ったら、数週間後に俺の名前が入ったプラチナカードを渡された。ブラックカードではなく申し訳ございませんと謝られたが、宮坂グループに変な圧力を掛けていないか心配だ……。そういう時に限ってお嬢様権限持ち出しそうだしな。


「何か御用でございますか?」


 いえ、特には。


「そうそうアナタ。1人で外出された時などで支払ったレシートがあったら出して下さい。場合によってはスペックスの経費として負担しますので」


 宮坂三姉妹は、俺と一緒に外出した際は絶対に俺に支払いをさせない。それがスペックスの経費として落としているのか、それとも例の個人所有ブラックカードを使っているのかまで分からないが。

 したがって俺が自分でお金を払う時はこの三姉妹がいない時に限るのだ。


「え、そんな事出来るのか?」


「ええ、誰かと会食した際は経営上必要な会議として認められる場合もあります。交友費は接待交際費という名目がありますし、仕事上必要なパソコンなどの家電であっても経費として計上する事が出来ます。

 本来は10万円が上限なんですが、今は特例として30万円まで上限が引き上げられていますから」


 へぇ、やっぱり経営者として経理的な知識も多少は必要なのだろうか。勉強しておかないと賢一けんいちさんにツッコまれるかも知れない。


「ということで、さぁ! 早くレシートを出して下さい」


 やけに瑠璃るりが強引に迫って来るな、何でだろうか。


「映画館の座席を3列分押えた時のレシートは残しておられますか?」


 げっ、何で紗雪がその事を知ってるんだ!? 姫子ひめさえ知らないはずなのに!

 振り返って紗雪の顔を見ると、ツンとしたお澄まし顔で俺を見つめて来る。少しだけ唇を尖らせて感情表現している。


「ウサギちゃんとプレちゃんの管理人と3人でカラオケに行った時のレシートはありますか?

 あれは最近ですもの、残してありますよね?」


 げげっ、瑠璃まで!? え、もしかして監視されてる……?

 あの日はみんな出払ってて、外出時も帰宅時も、共に見られていないと思ってたんだが。


「そうそう、会社経費のお話は置いておいて、確定申告の際は支出に関してだけでなくお金を受け取った際も申告の対象、と言うよりも義務になりますからね?

 例えば、裏営業した時に貰った分厚い封筒とか」


「あれは申告したらマズいヤツだろ! それは俺でも分かるぞ!!」


 牡丹はどこまで本気で言ってんのか分からないが、あれを素直に申告すると下手したら複数の逮捕者が出てしまうぞ? だから銀行口座に入れずに自室に置いてあるんだから。

 あ、さては部屋に入ってタンスを開けたな……?


「さて、正直に言ってもらいましょうか。裏営業の内容を!」


 瑠璃と牡丹が腕組みをして俺を見つめる。紗雪は俺の後ろにいるからその表情まで分からないが、無表情ながらも強い意志が滲み出るような顔をしている事だろう。



 いくら3人に責められようが、裏営業をした事自体は認めたとしても、プレイ内容までは教えられない。これはアクトレスとの信頼関係に関わる。

 スペックス内でのプレイならカメラやマイクがあるからだだ漏れだが、道子(みちこ)さんはあえてカラオケルームを指定する事で会話内容を聞こえないようにしておられる。

 家業の事をプレイヤーである信弥(しんや)さんや俺以外に詳しく知られたくないのもそうだろうが、逆に知られると迷惑が掛かるからという店に対する配慮もあるだろう。そんな道子さんとのプレイ内容など言える訳がない。


「はっきり言っておくが、道子さんとはそういう関係ではない。ただ椅子に座っていただけだ。

 それ以上は何も言うつもりはない」


 嘘は言っていない。そして本当にこれ以上言うつもりもない。


「そうですか。まぁ道子さんにはお手を煩わせてしまった経緯がありますので、これ以上の詮索は止めましょう」


 すんなりと引き下がる瑠璃。牡丹も紗雪も同じくこれ以上は聞いて来ないつもりのようだ。


「でも、さすがに映画館とカラオケは経費では落とせませんからね?

 あとアイドル育成ゲームをする為に買ったタブレットもダメですし、ゲーム内アイテムを買う為の課金も対象外です。夏希なつきちゃんと再会した日に2人で入ったコンビニでの支払いもダメです。

 あ、タクシーはギリギリセーフですが、もしかしたら税理士の先生が弾く可能性もありますので」


 だから何でそんなに詳しく把握してるんだよぉぉぉ!!!


「正妻として当然の務めですもの」


「ゆうの事は何でも知っているわよ?」


「旦那様を想えばこそ」


 くそっ、さすがに事細かに何をしているのか監視されるのは嫌だ。

 めっちゃ怖い。癒しを! 俺に癒しを~!


「ただいま」


 ひ、ひめぇ~!! 手招きしてひめを呼び寄せ、膝の上に乗せて抱き締める。

 ふぅ、ほっとするわ。


「お帰りなさい、ひめちゃん」


「何の話してたの? 優希が怯えてるけど」


「あぁ、自分のお金で買った物でも、場合によっては会社の経費として認められるって説明をしてたのよ」


「そうなの? じゃあこれも認められる?」


 ひめが袋から取り出したのは、ブルマタイプの体操服……。

 おいっ! 何で今この場で出すんだよ!! ご丁寧に赤いハチマキまで入ってるし!!


「これ、何に使う為に買ったの……?」


「優希がたまにはコスp」


「うわぁぁぁ!!! みなまで言うな、分かったから! もう勘弁してくれ!!!」



 その日の夜、スペックスビルの最上階で運動会が開催された。何で当然のように全員分の体操服が用意されているのか……。

 さすがにこれは経費で買ってないよな? な?



いつもありがとうございます。

投稿ペースが落ちておりますが、エタる事なく細々と続けて行きますので今後ともよろしくお願い致します。

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