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友達の彼女の告白を断ったら、お断り屋にスカウトされました!  作者: なつのさんち


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111/212

絶対にチラ見してはいけない芸能事務所!

 ライブで半ば無理やり歌わされた後、夏希なつき姫子ひめとのイチャイチャと宮坂みやさか三姉妹からのなだめすかしとで、何とか立ち直る事が出来た。


 もう恥ずかしくて街も歩けないしプレイヤー業も当分休みたいと思っていたが、「そもそもあのライブを見に来ていたのはたった2万人だけ」 「ライブDVDが発売されるのは早くても3ヶ月後、その頃には羞恥心なんて上書きされている」 「優希ゆうきの魅力はあのステージだけでは理解出来ないから大丈夫」 「あれくらいで悶えているようでは私とのW主演映画はどうなるの」 などの叱咤激励により現実へと戻る事となった。



「いやいや夏希、いや結城ゆうきエミル。W主演映画なんて聞いてへんにゃけど!?」


「あらそう? 牡丹ぼたんさんまだ話してなかったの?」


「ええ、まだ高畑たかはた社長への返事は保留しているわ」


 と言うやり取りを経て、後日敵の本拠地へと向かう事になった。



 現在、大通りから少し入った場所の5階建てのビル。高畑芸能事務所の応接室に瑠璃るりと牡丹の3人で座っている。


「いやぁ、お待たせ致しました。この度は映画主演のお話、前向きに検討して頂いているみたいで嬉しいですよ」


 いきなり本題をぶっこんで来るあたり、本当にこの人は食えない人だなぁという印象がより強くなる。

 そして後ろに引き連れて来た美少女の存在。ブレザーにミニスカートと、制服を着ている事から高校生と思われるが、この子も高畑芸能プロダクションの女優さんか何かなんだろうか。ブラウスのボタンを1つ2つと開けており、胸元が涼し気だ。


 俺のライブでの飛び入り(と言うより引き入れ)はスペックスサイド合意の上での演出だから、最初は喋らず黙っておくようにと牡丹から指示を受けているので、立ち上がって一礼するに留める。


「あ、紹介しますね。僕の娘の花蓮(かれん)です。

 紗丹さたん君、手を出すなら気を付けてね、まだ17歳だから」


「出しませんよ!」


 初っ端から思いっきり大声でツッコんでしまった。ダメだ、このままでは相手のペースに乗せられてしまう。冷静に、冷静に……。


「うちの娘の何がダメだって言うんだ!」 バンッ!


「そういう問題じゃないでしょうが!!」


「優希さん、落ち着いて。

 社長、娘さんがお綺麗なのは分かりましたが、今日のお話に関わりがあるんでしょうか?」


 牡丹に(たしな)めらえてしまった。くそ、調子が狂うな。

 ってか今さらながらこの人、娘いたんだ。ホモじゃね~かと思ってたけど、……バイ?


「もちろん関係ありますとも。ほら花蓮」


 高畑社長が花蓮ちゃんに話を振る。あれか、将来会社を継がせる為の社会勉強的な感じか?


「ファンです、これにサインして下さい! 愛する花蓮ちゃんへって入れて下さい!!」


「君もか!? 君もそんな感じなのか!!?」


 親子揃ってこちらのペースを乱して来るな!

 あぁ、もう何かどうでも良くなって来た。早く帰りたい……。


「さて、冗談はこれくらいにして……」


「ちょっとお父さん! 私は本当に紗丹さんのファンなのに!!

 紗丹さん、私いつもプレイヤーちゃんね(プレちゃん)るチェックしてるんです。ポカルのCMも録画しててもう何回も何回も……」


「はいはい、もういいから座ってなさい」


 コントのように高畑社長が花蓮ちゃんを止めに入る。あ、牡丹まで頭を抱え出した。

 瑠璃は花蓮ちゃんを恋敵のように睨み付けている。そういうところは直した方がいいと思うよ?


「ま、紗丹君がうちからの仕事をしてもらう際には花蓮をサブマネージャーとして付けるつもりですんで、全く無関係という訳ではないんですよ。

 将来うちの会社に入れるつもりなんで、社会勉強ですな」


 はっはっはっと笑う高畑社長。最初からそう言えよ。


「それで、映画のお話ですが……」


 たまらず牡丹が話を切り出す。あ~あ、完全に向こうのペースって感じだな。これでは高畑社長の思うつぼだ。

 いきなり本題をつきつけてからペースを乱し、こちらから話を切り出させる。多少焦らせる事で向こうの有利な条件で話を進めるつもりだろう。

 気を引き締めねば。むしろこちらはお断りするくらいの気持ちで臨まないと。



「ええ、エミルの主演の話が来たんでね、本人に伝えたんですよ。台本読ませたらキスシーンがあるから嫌だってんですよ。

 ちょっとチュッってするくらいですよ? 生娘じゃあるまいしって言ったんですが、どうしてもやりたがらないんです。

 で、どんな条件なら受けるって聞いたんです。金か? それとも出演シーンを増やせとか、続編ありきで制作しろってか?

 いろいろ想定はしたんですが、エミルが相手役を紗丹君にしてくれって言うんでね、そういう事です」


 そういう事ですか……。そういう事なら事前に詳しく言っておいてくれよな~夏希。

 あ、そうか。あの後なら嫌じゃボケとその場のテンションでブチ切れてたかも知れんしな。


「でもいきなり素人が映画の主演なんて、制作サイドがオッケーするとは思えないんですが。わがままな主演女優だなぁで終わるようなもんでしょうに」


「何を仰いますか紗丹さん! お断り屋のCランクプレイヤーであればそこらへんのアイドル俳優よりも実力がありますよ!!」


 興奮した様子の花蓮ちゃんがテーブルに手を着き身を乗り出して来る。いやいやその格好で身を乗り出すと涼し気な胸元が見えるんだってば。君は言うほど大きくないからこそ余計に見えるんだってば。


 いや、分かっているとも。ニタニタと笑いながら俺の様子を窺っている高畑社長。17歳の女子高生、わざわざ手を出すなら気を付けろと釘を刺した上でトラップを仕掛けて来るあたり、この人は事を上手く運びたいのか、それとも単純に反応を見て楽しみたいだけなのかの見極めが難しい。


 ってか普通自分の娘を使うか!? バカ親じゃねぇーか!!

 なおかつそのバカ親の要請を受けて自身の身体をトラップにする方もバカ娘と言える。その身そのまま地雷だ。

 絶対に視線を胸元にやらないように気を付けながら、花蓮ちゃんの顔を見て口を開く。その瞬間に気付く。高畑社長と花蓮ちゃんが座るソファーの向こうは壁。そこには大きな姿見が設置されている。

 花蓮ちゃんがテーブルに身を乗り出しているという事は、見えるのは胸元だけではない。鏡越しに、布面積がいやに少ない大人な雰囲気の白いのが視界の端に写る。


 絶対に見てはいけない。視界の端だから良く分からないが、多分あれはTだ。フルではなくTなのだ。17歳のクセして鏡越しのTとか、ふざけてんのか。絶対に見てなるものか。


「それはどうもありがとう。でもプレイヤー業も忙しいし、今では企画運営にも携わっている身なんだ。

 映画の主演なんて付きっきりで3ヶ月から半年くらい掛かるんだろう? 俺には無理だよ」


「無理かどうかはやってみないと分かりません! 是非やってみましょう、レッツドゥーイット!!」


 テーブルを離れてガッツポーズをし、花蓮ちゃんがその場でピョンと跳ねる。ほら短いから捲れ上がるっつーの。見ません、絶対に見ません。


「やってダメならどうするつもり? それこそエミルの時のように違約金だ損害賠償請求だとスポンサーから訴えられるのは嫌ですよ」


「分かりました、映画主演のお話をお引き受けしましょう」


 今まで黙っていたと思ったら突然どうしたんだ。瑠璃が出来る女社長の顔で高畑社長を見つめている。


「ただし、ギャラの最終決定は牡丹を噛ませてもらいます。スケジュールも可能な限り詰め込んで、短い期間で終わる。なおかつ撮影日が長く続かないよう、間を開けるように。ロケ場所は日帰り可能な範囲で、泊まりはNGです。

 最後にもう1つ、お断り屋業界で大きなイベントが企画進行中です。そのイベントにエミルちゃんと姫子ちゃんに出演してもらいます。こちらからの条件提示は以上です」


 ニタニタ顔から事務所社長の顔へと戻った高畑社長が、腕を組んで少し考えている様子。

 その作品でデビューするという俳優の要望を、制作サイドがすんなりと聞き入れるとは思えない。これは瑠璃からの無理難題だと言える。

 なおかつ、エミルが映画出演する条件として高畑社長が制作サイドに打診をするわけであり、何様だとキレられてもおかしくない状況だ。アドバンテージが全くない状態で交渉をするのであれば、こんな無理な話はない。さすがに高畑社長も怒るだろう。


「分かりました、一度向こうにその内容を投げてみましょう。

 こら花蓮、何てはしたない恰好をしているんだ。ボタンを閉めなさいボタンを」


「は~い」


「では私達は次の予定がありますので、そろそろ失礼させて頂きます」


 瑠璃がそう言って立ち上がり、俺と牡丹を目で急かす。


「おや、そうでしたか。すみませんねお忙しいのに。ほら花蓮、お見送りして」


 瑠璃がさらにムっとした表情になるが、何も言わず花蓮ちゃんに続いて歩き出す。


「キャッ!」


 花蓮ちゃんが廊下で盛大にコケる。ミニスカートが捲れ上がり……


「あっ! これエミルちゃんじゃない、いいポスターねぇ~」


 瑠璃が俺の視線を遮るように、壁に貼ってあるTV番組の宣伝ポスターを見る。


「大丈夫ですか?」


 その間に牡丹が花蓮ちゃんに手を伸ばして立ち上がらせる。ナイス連携と言いたいところだけど、こんなあからさまなトラップには引っかからないって。心配し過ぎ。

 ほら、部屋の入り口からニタニタ顔の高畑社長がこちらを窺っている。本当にあの人は何がしたいんだか……。



「それにしても瑠璃ちゃん、ちょっとイライラし過ぎよ? 今日は映画出演の返事をしないって言ってたのに」


「だって高校生の自分の娘にあんな事させるなんてダメよ! あの子も乗り気だったみたいだけど、絶対におかしいわ!!」


 その気持ちは分かるけど、怒れば怒るほどあの社長はニタニタするだろうからなぁ。

 結局何が目的なのか分からないまま、事務所を出てしまった訳で。もうタクシーに乗ってしまったし、当分高畑社長の意図は分からぬままだ。


「あ、石田(いしだ)さんに聞いてくれよ。あの人なら娘の事もよく知ってるだろ」


「そうですね、確認してみます」


 瑠璃が石田さんに電話でそれとなく聞いてみたところ、高畑社長の娘、花蓮ちゃんの本当の年齢は21歳だった……。大学生に高校生のコスプレさせて何がしたいんだよ!!


「優希さんの年下に対する反応を見る為、だったんでしょうか?」


「いや、むしろ瑠璃を煽って揺さ振りを掛けてたんだろう。案の定乗った訳だし、な?」


「ご、ごめんなさい……。乗せられてイエスと言ってしまいました……」


 まぁあれだけの条件を制作サイドがそのまま飲むとは思えないので、もうしばらく様子見といったところか。


「さて、瑠璃に対する罰を考えておこうかな」


「アナタ、次のデートなしとかは止めて下さい。本当に反省していますから……」


「じゃあ、今日花蓮ちゃんがやったのと同じような事をみんなの前でしてもらうって事で」


 嫉妬した対象の模倣をさせると、瑠璃はどんな表情になるのか。今晩が楽しみだ。


お読み頂きましてありがとうございます。


誤字修正致しました。

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