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友達の彼女の告白を断ったら、お断り屋にスカウトされました!  作者: なつのさんち


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友一とカフェで

「今日はちょっと出掛けて来るから。夜には戻ると思う」


 そう言って玄関へと歩いて行くと、タックルをするかのように瑠璃るり牡丹ぼたんに掴まれて止められてしまった。


「そうやってふらりと出て行って、また帰りが遅くなるんでしょう!? アナタ、どこで何をするつもりですか!!?」


「そうよ、お姉ちゃん知ってるんだからね! あの野良ウサギとちょくちょく会ってるでしょう!?」


 騒がしい事この上ない。毎日顔を合わせているというのに、これ以上どうしろというのか。


「まぁまぁ奥様方、旦那様がどちらにお出掛けになるかご確認をする方が先なのではないでしょうか?

 行くなと言っても旦那様もご用事があれば、困らせてしまうだけです」


 メイド服姿の紗雪さゆきがにこやかに提案する。そうそう、最近縛りが緩くなって来たなぁと感じていたところなのに、ここに来て急に締め付けがキツくなっている。


 確かにお断り屋の他店舗の情報を聞く為に、ちょくちょく美代みみと会うようになってはいる。

 その報酬というか、ご褒美的な事もするようになったけど、だからと言ってそこまで締め付けをキツくする必要があるだろうかイヤない。

 みみってば今の関係になってからめちゃくちゃ尽くすタイプになったもんだから、俺も骨抜き気味になっているのは確かだけど。


「俺のおばさんがアパートに荷物を送ってくれたらしいんだ。今日届くから受け取るようにって連絡があったから、ちょっと行って来るわ」


 今日は本当にそれだけだ。ついでにカフェでおいしいケーキを奢ってもらおうとも思っているけど。

 俺がお断り屋にスカウトされたキッカケ、友達の彼女に告白された事件の影の主役である友一ゆういちと約束しているのだ。

 さゆとは会わせた事があるが、瑠璃や牡丹とも合わせるとなると事が大きくなる。


 友一の浮気を咎めるように友一の彼女を誘導した手前、自分自身がハーレムの主やってますなんて事は知られたくない。だからさゆ以外の嫁と友一との接触は避けたいのだ。

 友達と会ってくるから、などと言おうものなら是非ご挨拶を!! とか言って正妻キャラが出しゃばって来るのが目に浮かぶ。


「そうですか、でしたらすぐにお帰りになられますよね……?」


「ここからゆうのアパートまで往復で30分、荷物の受け取り等の時間を考えても、1時間半くらいで帰れるはず……」


 正妻キャラとお姉ちゃんキャラって、本当は共演する間柄じゃない気がするんだけど。牡丹が最近誰がいようがお構いなしにお姉ちゃんになるからもっと自重してほしい。

 周りが気を遣って合わせているというか、流しているけど、俺達のルール的にはグレーゾーンだと思う。


「うん、何もなければそれほど時間は掛からないと思うから」


 何もなければ、な。


「私がお車でお送り致しましょう。すぐに用意致します」


「いや、電車を使うからいい。行き帰りでお客様アクトレスとのプレイ中の会話のネタになりそうな物事があるかも知れないし、極力交通機関に乗っておきたい」


 もちろん車での送迎をお断りする建前だ。紗雪の運転する車に乗ってしまうと、知らぬ間に高速を走っているなんて事もあり得る。


「そうですか……、では下までお見送りさせて頂きます」


 う~ん、さすがにこれを断ると後で何を言われるか分かったもんではないので、素直にお見送りされる事にする。



「行ってらっしゃいませ」


 スペックスビルの裏玄関で丁寧にお辞儀をして見送ってくれるメイド姿の紗雪。やけに物分かりが良過ぎる気がしないでもないが、気にし過ぎても仕方ない。さぁ行こうか。

 友一との待ち合わせまでまだ時間がある。ブラブラ歩きながら向かおう。

 と、スマホに着信が入る。みみか。


「もしもし」


『ご主人様、今お時間よろしいですか?』


 だからご主人様は止めろって言ってんのに。


「今からカフェで友達と会うから、その後でいいなら時間がある。カフェの場所を後から連絡するから、そこで待ち合わせでいいか?」


『ありがとうございます、では後ほど』



 友一と待ち合わせしているカフェに到着。スマホで現在地をみみへ送信する。すでに友一は席に座っており、スマホをいじっているようだ。


「よう、お待たせ」


「お、来たか。今日は俺の奢りだ、盛大に頼みたまへ」


「アパートに荷物が届く予定だから、それまでケーキ食べ放題に挑戦するわ」


 手を挙げてウエイトレスさんを呼ぶ。よし、紗雪ではない。って流石に俺がこのカフェに来る事なんか分かる訳ないしな。気にし過ぎだ。

 チョコケーキとモンブランとブレンドコーヒーを頼む。友一は相変わらずスマホをいじりながら、チーズケーキとブレンドコーヒーを頼んだ。


「いやな、最近知子ともこがやたら連絡して来るようになってさ。ちょっとゴメンな」


 そう言って、友一が俺の写メを撮る。そしてまたスマホをいじり出す。ちょっとどころじゃねーよバカ!


「誰と会ってるかしつこく聞いて来るからさ、写メ撮って送ればいいやと思って」


 俺を巻き込むな! ただでさえ知子さんとは何だかんだあるんだから。また好きですとかバカな事を言い出したらどうしてくれる!?

 おおっと、みみが店に入って来た。ダークグレーのパンツスーツ姿、出来る女って感じの見た目だ。


「あの人めちゃくちゃ美人じゃね!? 俺声掛けて来ようかな!」


 こいつは本当に懲りないな。でもちょっとイラっとしたら、手を挙げてみみを誘う。


「先生ぇ~、ここ座って下さいよ。お一人ですか?」


「ありがとうございます。その……、ご一緒しても?」


 まさか呼ばれるとは思ってなかったのだろう。みみがすごく戸惑っている。いいからいいから、座ってちょっとしたプレイに付き合ってくれ。


「もちろんですよ先生。あ、こちら仕事上のアドバイスをして下さる宇佐美うさみ先生。

 先生、こいつは前にバイト先で知り合った友一です」


 ちょうどウエイトレスさんがケーキとコーヒーを持って来てくれたので、みみの分を追加で注文する。


「ど、どうも友一です!」


「どうも、宇佐美です」


 ニッコリと笑い掛けるみみに、ぼ~っと見惚れる友一。

 このタイミングで知子さんが来たらまたひと騒動起きそうだけど、そんなに都合良く(?)は行かなかった。



「本当に奢って頂いて良かったんでしょうか?」


「いいよいいよ、喜んで払ってたじゃん友一。みみは奢ってもらうの慣れてるだろ?」


「今は違います! 私も、お蔭様で変われましたから……」


 知ってる。ちょっとからかいが過ぎたか。

 友一とカフェで別れ、そのまま俺のアパートまで2人で歩いている。それほど離れていないし、荷物が届く時間までまだ少しあるのでタクシーを使うまでもなかった。


 アパートの鍵を開けようとすると、すでに開いていた。前回帰って来た時に締め忘れただろうか。そんな事はないと思うんだけど……。

 ドアを開けてみみを招き入れると、玄関に女性物の靴があるのに気付く。誰の物か思い当たるのと同時に声を掛けられる。


「お帰りなさいませ、旦那様。……、あら、ウサギちゃんもご一緒だったんですか」



いつもありがとうございます。


誤字訂正致しました。

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