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いつか僕は夢の世界に  作者: 樹木 芽依
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非日常からの日常

 お久しぶりです、または初めまして。樹木芽依きぎめいと言います。久々の投稿です……!

 シリーズ全体で合わせて一万文字くらいの小説になる予定です。もう作品は完成しているので、他の作品みたいに投げやりにはならないかな、とw

 現在投稿している二作品の更新はもうしばらく掛かりそうです。でも少しずつ書いているのでもうしばしお待ち下さい!


【キャラ設定】

鎌手かまて 裕太ゆうた

  ……高校2年生。

    黒髪ショート。背は170cmほど。

一井かずい 科乃しなの

  ……中学1年生。

    やや茶のショートボブ。あどけない顔らしい。

 気分が落ち込んでいる人間に(れい)は引き寄せられる、ということを聞いたことがある。

 もしそれが本当なら、僕、鎌手(かまて) (ゆう)()には今どれだけの幽霊がくっついているのだろう。

 いやまぁ、大してテンションが低いと言うわけではないのだけれど、学校生活での些細(ささい)な出来事がストレスになる、なんていうのはよくあることで。


 例えば、先生や親に怒られたり、テストの点数が悪かったり――


「……なぁ、そろそろストーカーをやめてくれないかな、後輩(こうはい)さん?」


――しつこく後輩につきまとわれたり。


 後ろを振り返って電柱に隠れている(と本人は思っている)後輩に呼びかける。中高一貫(いっかん)校であるうちの中学校のスカートが電柱からはみ出ている。


「――っ!?」


 スカートがビクッ、と()れる。でも出てこようとしない。まだ(かく)れきれているとでも思っているのだろうか。


 (しゃべ)り布が生えている電柱に僕はゆっくりと近づき、もたれかかる。


「ねぇ、いつまで続けるの、一井(かずい)さん」


 ひっ、と再び驚きの声を上げて、僕の機嫌を伺うかのように、そろーっと電柱から姿を現す茶色いショートボブの女の子、一井 科乃(しなの)。今年度から入部してきた、僕と同じ文芸部員だ。


「えっと……鎌手先輩が、お家に帰るまで?」

「……それ、単なるストーカーだって、知ってる?」

「すっ、ストーカーじゃないです! だって私カメラなんて持ってないですし!」

「カメラ持ってたらストーカーって発想は一体どういうことだよ……」


 ふんす、と両手をグーにして抗議(こうぎ)する一井さん。


「で、結局なんでついてくんのさ?」


 つっけんどんな口調で(たず)ねる僕に一井さんは確固(かっこ)たる意思を持った目で僕を見つめる。


「いつもと同じく先輩を文芸部に戻すため、ですよ!」


 またか、と僕は()(いき)をつく。これでもう三度目かな、この後輩に言われるのは。理由を聞かなくても分かっていたことだった。


「だから、言ってるでしょう? 文の投稿(とうこう)ならいくらでもしてあげるからそれで文句ないでしょ、って」

「私は鎌手先輩の優しい文体の小説を読んで、入部を決めたんです! 実際に入部した日にお会いして、凄く良い人だな、って思ったんです! もっとお話してみたい、って思ったんです! ……でも、先輩に話しかけることなんて、部室ぐらいでしかないですし、先輩あの日から一度も来ないですし……」


 だんだんと覇気(はき)がなくなって言葉が尻すぼみになっていく一井さん。

 まぁ、行ってあげたいのは山々なんだけども……。多少変な子だけれど悪い子ではないし、何より後輩に信頼(しんらい)されて悪く感じる訳がない。


でも、僕の『小説を書くときのスタイル』を、見られたくないのだ。


「僕、人に見られながら小説を書くのが苦手なんだよ、だから、ごめんね?」


 僕は一井さんと視線を合わせ、申し訳なさそうに言う。そんな僕を見て、思いついたかのようにぽむっ、と自分の手を叩いた。


「もしかしてそれって、書いてる時に右手に黒い(、、)手袋(、、)をして左目(、、)()眼帯(、、)を着けてるからですか?」


電球がぴかーんと光りそうなくらい『なるほど!』という顔をしている一井さん。そして彼女が何を言っているのか分からない僕。二人の間に一瞬の無言の空間が出来た。


「…………! なんで知ってるの!?」

「だって、先輩の部屋一階じゃないですか」

「ストーカーだけじゃなくて(のぞ)きまでしてたのか!」

「えへへ、それほどでも」

「ぜんっぜん、ほめてない!」


 僕の五年間、中一から隠し続けていた事実が、バレた、バレてしまった……!

 がっくり、とうなだれる僕に、天然な後輩は僕の肩をぽんぽん、と叩く。


「そりゃ、家が(となり)なんですから、丸見えですよ」

「……は?」


 この後輩は何を言っているのだろう。隣の家は一井、なんて名前じゃない。


「あれ、言ってませんでしたっけ。先輩の隣の家、母方のおばあちゃんの家なんですよ」


 (おどろ)いてる、とくすくす笑う一井さん。対して僕は、度重(たびかさ)なる(個人的)(ちょう)ド級展開にただあんぐりと口を開くことしかできなかったのだった……。


「それじゃ先輩、また明日!」


 僕の家の()()()()()()でにこやかに手を振る一井さん。

 僕に使っているキーボードだのなんだのと色々な情報を聞いた(僕的には吐かされた、だが)からだろうか。さっきよりもさらに明るくなっている気がする。僕は彼女と会う度に質問攻めに合っている……。いい加減話題尽きないかな……、と思ってた僕はふと彼女の、矛盾のある行動を見つけた。


「お、おう……。――ってちょっと待て!」

「? なんですか?」


「よく考えたらさ、家が隣ならわざわざ僕が部室に行かなくても会えるんじゃないの?」


「あ」


 今気づいたと言わんばかりにカチコチに固まる一井さん。


「い、いやま、まぁ、部員なら部活をするのはあ、当たり前、ですっ、しぃ?」


 冷や汗をかきまくる後輩。ころころと感情が変わってなんか面白いなこの子。あまり女性と話すのが得意ではない僕だが、なんだかんだで話せるのは彼女のこんな一面があるからなのかもしれない。


「まぁ、たまになら行ってやるよ。部室で小説は書かないけどね」

「なっ、なんですかその笑みはっ! 私の事を笑いましたねっ! (ひど)いです~っ!」


 顔を赤くしてほっぺをぷくーっと(ふく)らます一井さん。君は小動物か。ほんと、見ていて()きないなぁ。


「笑ってないから怒るなって。それじゃ、またな」

「むぅ……。今日はそういうことにしておいてあげます」


 さよならーっ、と手を振る一井さんに軽く手を上げて、僕は家に入った。そして自室の、机のそばにある窓を確認する。我が家の(へい)しか見えない。


「やっぱハッタリか……?」


 そう、さっきは動揺(どうよう)していたが、よく考えたらここからは外の景色なんて見えるわけがないのだ。


 窓を開けて身を乗り出してみても、正面は塀。

 上は晴れた青空と――


「あ、先輩だー! どもーっ!」


――隣の家の二階の窓から大きく手を振る、後輩の姿。


「……あー、なんか色々納得(なっとく)したわ」


 そう、思わず口にした僕だった。


 改めまして、お久しぶりの方はお久しぶりです、初めましての方は初めまして! 樹木芽依です。

 一年ほど自分を取り巻く環境で小説を書く機会が作れず書くことを中断していたのですが、去年どうにかこの小説を完成することができました。僕にとっては一番の、高校生として最後に作り上げた最後の作品になります。

 これからしばらくの間ですが、よろしくお願いします!

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