君と僕のかたち
直接的なものはありませんが、少々Hな表現もあります。
不快に思われる方はご遠慮下さい。
【いちご】
「いちごは好き。」
可愛らしい指で苺を掴むと、キラキラ光る目の高さまで持ち上げて、角度を変えながら苺を観察する。
「種が外側についているなんて、いっそ潔いと思わない?」
そんなこと考えたことも無かったけれど、君が言うとそう思えてくる。
「いちごみたいに生きたいの?」
君は意味ありげに微笑むと、赤い唇で苺にくちづけた。
「あなたが過保護過ぎるから。」
【にんじん】
君は器用に人参だけをすくって、僕の皿に移す。
「ダメだろ、好き嫌いせず食べなくちゃ。」
咎める僕を恨めしそうに見ながら、赤い唇を尖らせて君は言うんだ。
「私は好きなものだけ食べるし、好きなものしか持たない。」
そして、僕の首に腕を絡ませて耳元で囁く。
「好きな人としか会わない・・・」
ああ・・・
そうして結局僕は君の人参を食べてしまうんだ。
【サンダル】
お気に入りの白いサンダルを履いて、波打際を歩く君。
ごきげんで鼻歌なんて歌いながら、はずむようなリズムで。
僕はサンダルが羨ましい・・・
僕の知らないところへも、君と一緒に行っているのだろう・・・
君の鼓動を感じて君の全てを受け止める・・・
僕は君の小さな肩にくちづけながら
「サンダルが羨ましいって言ったら、笑う?」
君は僕を見てふわりと僕を抱きしめる。
「あなたがくれたサンダルだから。」
【ヨット】
砂を掻き集めて山を作る。
君は砂場で遊ぶ子供のよう。
「トンネルを掘らなくちゃ。」
僕たちは両端から穴を掘り始める。
ふと、今2人で居ることが不思議に思えた。
別々の場所で生まれて、別々の場所で育った2人。
でも、出会ってしまったから、きっともう離れることは出来ない。
「みつけた。」
トンネルの真ん中で君が僕の手を握る。
波間ではヨットが揺れていた。 夏の日。
【ごま塩】
「お赤飯て何だかちょっぴり恥ずかしい気がしない。」
高台の公園の芝生で、赤飯で作ったおにぎりを食べながら君は言う。
「初潮の時にお祝いで食べたりするからかなぁ。」
「ほんのり染まっている感じがいやらしい。」
「じゃあ、君はお赤飯みたいだね。」
「じゃあ、あなたはごま塩みたいね。」
【ロケット】
「今晩、花火をしようか?」
僕の提案に、君の瞳がキラキラ輝きだした。
「じゃあ、花火を買いにいかなくちゃね。」
一通り花火を楽しんだ後、僕たちは並んで線香花火に火をつけた。
「あなたはロケット花火が好きなのね。私は怖いからあまり好きじゃないわ。」
僕がロケット花火を好きなのは、花火の音に驚いてしがみついてくる君が愛おしいから。
「でも、線香花火も好きだよ。」
照らし出された君の横顔がとても色っぽいから。
【七面鳥】
「七面鳥って見たことある?」
「食べたことはあるけれど、見たことがあるかどうかは記憶に無い。」
「なんだか七面鳥が可哀想になって来たわ。」
「じゃぁ、今晩は七面鳥の追悼式をしよう。」
「そうね、ローストターキーでも食べながら。」
【蜂】
「落ち着くわ。」
君は僕の首筋に鼻を近付けて、くんくんと匂いを嗅ぐ。
「フェロモンは首筋から多く出るのですって。」
僕はくすぐったくなって身をよじる。
僕なんて離れていたって君に引き寄せられるのに。
花に誘われる蜂のように・・・
「何だか無性に君を抱きたくなってきたなぁ。」
【クジラ】
「クジラも哺乳類なのよね?」
君の質問はいつも唐突。
僕、今答えている余裕は無いよ。
君の体を全身で感じているから。
クジラには悪いけれど、クジラのことなんて考えるのは勿体無い。
「ねぇ、聞いてる?」
もう少し待って、君の余裕だって僕が消し去ってあげるから。
【ジュース】
君から溢れ出すジュースは、僕の体を包み込む。
僕から溢れ出すジュースは、君の体に息づく。
僕たちの吐息は重なり合って、混ざり合って、溶け合う。
時々僕は幸せすぎて不安になる。
いつかは僕たちのジュースが干からびる時が来るのだろうか?
「僕のこと好き?」
「大好きよ。」
「明日も?明後日も?10年後も?」
「10年後が今日の積み重ねだとしたら、10年後もきっと大好きだわ。」
まったく君には敵わない・・・
気付いて頂けたかどうか・・・
1(いちご)→ 2(にんじん)→ 3(サンダル)
そう「1本でもにんじん」です( ̄▽ ̄;)
この2人の話は連載でもいつか書いてみたいです。