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第弐心―セカンドハーツ―  作者: ただっち
第2話:心結絆の動物愛護
16/18

04

桜井は不機嫌そうにしながら、絆たちを現場から追い出した。

策略通りーーーというか、思惑通り行かなかったことに駄々をこねるなど、まるで子供みたいだな、と絆は思っていた。

「あーあ……桜井さんって、子供みたいだね、絆くん」

「同感ですな」

絆たちはとりあえず駅の近くに来ていた。というのも、琴木は知らないが、絆は心が読める……故に、人が多いところに行けば行くほどに、自然と情報が溜まるのだ。

だからこそ、絆は適当な理由を琴木に言って駅まで来たのだった。

絆は、桜井にまんまとこの事件の歯車として使われそうになっていた。

もちろん普通ならば、彼は拒むだろうが、今回は小動物が関与していることもあり、事情が違うのだ。

絆は、動物が好きだ。

故に絆自身としては、単純に子猫を虐殺した犯人の心をぶっ壊してやろうかと思っていたのだった。

どうせ、動物を猟奇的に殺すのはきっとストレス解消目的とか、単純に弱いものをいじめたいとか、そういう企みがあるのだろうと踏んでいるからだ。

いや、もしもそんな思想があるのだとすれば、このままにしておくと、今回の処刑はまだ続くことが予想される。

何故ならば、猟奇的な反抗というのは、1種の麻薬と似たような快楽を人間に与えるからだ。

そして、依存性を持たせる……その結果、また同じことが繰り返されるというわけなのだ。


絆は、琴木と歩きながらも、周りの心を覗いている。

ある時は道行くおじいさん。ある時は買い物袋をもった主婦。ある時は通りすがりの中学生……とか。

「……中々居ないな」と絆は思っていた。いや、流石にこの前の誘拐事件のように、簡単に特定できるとは彼も思っていないだろうけど、それでもこんなに大勢の人間から何も得られないというのは、いたって不思議だった。

駅前のビルの巨大スクリーンで、今もなお、あの事件については大々的に取り上げられているのに、それなのに、誰も思い当たる点とか無いのが、絆にとっては不思議で堪らなかったのだ。

「ねえねえ、絆くん?」

と、琴木は絆の袖を引っ張る。

彼は考え事をしていたために、反応が少し遅れてしまったが、振り向く。すると、彼女はある空間に向かって指を指していた。

「あれ……嘘でしょ?」

彼女の声は震えていた。

巨大スクリーンのすぐ下……。

そこには、胴体が切り離された犬の死体が無惨な姿で磔にされていたからだろう。

普段は楽しそうな声で賑わうこの駅前も、辺りからは悲鳴が聞こえるのだった。そして、野次馬たちのスマホでの写真撮影をする音も……。



事件は連続した……。

今日の朝に起きた、心根第一高校での猟奇的な動物殺害直後より、周辺ではありとあらゆる動物の虐殺死体が発見された。

ある場所では、犬の死体が……ある場所では、鳥の死体が、ある場所では亀の死体が、ある場所では、金魚が、ある場所では蛇が……。

近隣住民の飼っていたペットから、野生の生物まで……。ありとあらゆる人間以外の動物は、殺されていた。それも、猟奇的な殺害方法でだ。

SNSでは、その残虐で残酷な動物の死体の写真が投稿され、話題となった。

そして、それから3日後……事件の犯人が見つからないまま、未だに猟奇的な動物の殺害は続いていたのだった。


「いや、本当に最近の事件は医者として許せないな……」

東雲は、角砂糖をかじりながら絆に言うのだ。

事件から3日後……未だに学校は休校にされてしまっている。よって、絆は先日助けた黒い子猫を見に、動物病院とやって来ているのだった。

子猫は順調に回復してきているようだが、人間に対して未だに警戒をしているためか、担当医である東雲すら威嚇をしている。

だが、何故か絆に対しては、警戒をせずに触らせる上に、下手をすると膝の上で寝転ぼうとするほどになついていたのだった。

「動物って、助けて貰った相手に恩返しをするってことが人間の物語ではよくあるけど、その猫の場合は、人間によって虐待されていたから、むしろ仕返ししたいって気持ちが高いはずなのだけど、どうやら、心結くんにはなついているんだね」

「そうだといいんですけどね……こいつが、人間を恨んで憎んでしまうのは当然だと思いますよ。俺も、あんなことをされたら、どんなやつだろうと恨んでしまいますからね……」

「まあ、そうだろうね……ふぁぁぁ……」

「??東雲さん、本日も夜勤明けだったんですか?」

「ん?うん。そうだね。なにせ、あんな事件があったから余計に病院としては警戒しなくてはいけなくなったからね。いつでも、動物を助けてあげられるようにね」

東雲は、そう言って再びがりがりと角砂糖を食べる。

夜勤明けということもあるが、医者というものはものすごく頭を使う仕事だ。

頭を使うということは、脳を酷使するーーー故に、甘いものを求めるということはよくあることなのだが、東雲はこんなに食べて糖尿病とかにはならないのだろうかーーーという勢いで、砂糖を食べている彼女を絆は心配していたのだった。

「あー、砂糖マジでうまい♪ところで、心結くん。そちらのお嬢さんは誰かな?」

「あー……えっと……」

そう言って絆が紹介するまでもなく、自らについて、彼女自らが名乗るのだった。

「始めまして!私、絆くんの友達の琴木尊です!よろしくです♪」

ペコリとお辞儀をする琴木に応じるかのように、普通に東雲もお辞儀をするのだ。

「ん?ん?」

と、東雲は持っていた角砂糖をすべて一気に食べほして、琴木の方へと近づく。

そして、まじまじと彼女の姿を眺めている。

「え?どうしたんで……」

「しーっ!静かに……」

そう言って、東雲は琴木の胸に手を突っ込むのだった。

「って、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼」

絆は驚愕の光景を目にしていて、唖然としていた。

琴木は、ちょっとこちょばしそうに「んっん……」と、声を上げているが、抵抗はしていないようだ。

何故、抵抗していないかと言えばーーー胸の間に子猫を挟んでいたからだろう。

「いたいた」と、東雲は琴木の胸から白くて美しい子猫を取り出すのだった。

「あ、シロちゃん見つかっちゃったか」

と、琴木はてへっとした顔をしていた。

「まったく、子猫はあなたのブラジャーじゃないんだから、こんな風に雑に扱ったらダメだよ」

「うう……ごめんなさい」

と、琴木は申し訳なさそうに謝るのだった。

そんな光景を見ていて「子猫のブラジャーだなんて、なんだか卑猥だなーーー」とか、絆は黒子猫を撫でながら思っていたりするのだった。


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