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第弐心―セカンドハーツ―  作者: ただっち
第2話:心結絆の動物愛護
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動物虐待ーーーなんで、そんなことを平気で人間はやるのだろうか。

自然界には、虐待という制度がない。

というか、虐待なんてやっているのは人間くらいなものだ。

野生の世界では、死ぬか生きるか……食うか食われるかの場所であるがゆえ、動物たちは明日に命を繋げるために、必死になって生きている。

それに比べて人間はどうだろうか。

安全な場所で安全に暮らしているくせに……食べ物にだって困っていないくせに……なぜ、必要以上に同族を痛め付けたり、誹謗中傷でなじったりするのだろうか。

自分が優越感に浸るため、自分が優位に立つため、自分が強いと偉そうにするためーーー全くもって、醜いとしか言いようがないだろう。

心があるからそうなるのか、心がそうさせるのか……。

何がそうさせるのか……なんてことは、心が読める心結絆にとっては、いつも考えてしまう人間についての文句なのだった。

「絆くん!」

と、絆のいつものような登校中に、いつものように、当たり前のように彼女が走って現れる。

街中で歩いている誰もが彼女に魅了され、立ち尽くすなかで、絆だけは歩みを止めずに学校へと向かう。

「もお、無視しないでよ絆くん!」

膨れ顔で、可愛らしく怒るこの女性の名前は琴木尊。

先週に起こった、誘拐事件の被害者であるのだが、すっかりと日常暮らしへと戻っている。

というか、誘拐事件が解決された次の日から普通に登校してきた彼女のことを、学校全体が驚きを隠せなかったことは絆の中でも最近起きた衝撃的な出来事だっただろう。

そして、あろうことかそんな彼女は、絆と友達になっていた。

彼女を助けたからーーーという理由でもなく、単純に安心できる男性として絆の事を認識したからなのだという。

まあ、結果として周りからは、琴木尊を助けたから心結絆は琴木と、他の女子に人気になってしまったというだけのはなしなのだがーーー。

「琴木さん。おはよう」

「もう、ようやく返事返してくれたよ……」

「いやいや、琴木さん、俺の名前呼んだだけで、挨拶してないじゃん……そりゃあ、絆くんって名前が他にもいるかもしれないから、下手に反応できないじゃん?ほら、仕方がないんだよ」

「自分を変に正当化しないでよ!もう……」

琴木は、道の小石を軽く蹴飛ばし、プンプンしていた。

絆にとっては、まあどうでもいいと思っていたことだった。

だが、他の男たちが、琴木が蹴りあげた時にスカートからパンツがチラリと見えたことに注目している中で、絆は転がった小石の方に目が行っていた。

正確には、小石が蹴り出され、当たった段ボールに目が行っていた。

「ん?あれ、なんだろう?」

その段ボールに気がついた琴木は、スタスタと段ボールの方へと近づく。

そして、中身を見ると「きゃぁぁぁぁぁぁ‼」と悲鳴をあげるのだった。

何事かと思って、絆はすぐに近づくが、琴木が拾い上げた【それ】が目に入ったので、ホッとして胸を撫で下ろす。

琴木が抱えている【それ】は、純白の美しい毛並みの子猫だったのだ。

「絆くん!絆くん!見てみて!かわいい!この猫ちゃんかわいい!」

プニプニと、子猫の肉球を触っている。

嬉しそうに抱えたまま、琴木はスキップで学校へと向かう。

「あ、猫も一緒に行くのね……」

やれやれと、絆は置いてあった段ボールを持ち上げようとした。

だが、その時あることに気がつくのだった。

「これは……」

と、段ボールの裏側に赤い点々が落ちていた。

それも、裏路地へと繋がるように……。

どこからどうみても、それは血痕であったのだーーー。



血痕……これを見た瞬間、絆は急いで裏路地へと入っていく。

胸騒ぎ……というか、最悪の事態が考えられた。

「何かが傷ついているーーー」

その何かがなんなのかは、絆には分からない。

だけど、みすみす傷ついているかもしれないものを放っておくと言うのは、彼の信じる【正しいこと】ではない。

見捨てるーーーそれは絆にとっては、裏切りの行為だ。

人間の本性でもあるがゆえ、彼はその行為が嫌いだ。

だからこそ、先日の事件の時に無謀にも、犯人たちに立ち向かっていったのだから。

「……なにか、聞こえる?」

絆は、耳を澄ませる。

何かが、何かを殴るような音ーーーそして。

「……‼……‼」

何かが、怒る声……。

絆は、急ぐ。

そして、裏路地の中心で彼が見たのは、集団で黒い子猫を蹴り飛ばして遊んでいる中学生だったのだ。

「おら、サッカーボール!しっかり動けよ!」

「おらおら、まだまだくたばるんじゃねーぞ!それ!」

ドカッと蹴られた子猫は、ギャン!と悲痛な声をあげて、蹴り飛ばされる。

ふらふらになりながらも、必死に逃げようと子猫は動こうとするが、ボロボロでもう歩く気力さえも無いようだった。

なんてむごいことをしているのだろうか。

「やめろ!」

絆は、大声を張り上げる。

中学生たちは呆気にとられていた。

その隙に絆は、子猫を急いで抱き抱えて裏路地から出ようとするが、中学生たちによって立ち塞がれるのだった。

「おやおや、ひ弱そうな高校生のお兄ちゃん……僕たちのボールを持って、どこにいくのかな?」

「それ、俺らの所有物なんだから、人のものを勝手に取ったら犯罪になるんだぜ?」

「お兄さん……それとも、俺たちのボールになってくれるのかな?」

「「「あはははは」」」

笑っている中学生たち、そしてその腐りきった自分勝手な心が見えた心結絆にはなんの迷いもなく、こう言う。

「頭悪いガキどもに、偉そうに説教されるほど落ちぶれてないんだよね」

その発言に、カチンと来たようで、中学生の一人が絆に殴りかかる。

だが、絆にその拳が届くことはなかった。

「なんだこれ!どうなってるんだ!?」

その中学生は、まるで石になってしまったように動かない。

自分の意思で身体を動かすことができないのだ。

「おいおい、ふざけてんなよ。早く、やっちまえよ……」

「違うんだって!身体が動かないんだって!」

「ビビってんのか?しょーがねーな、俺らでやって……」

やるぜ……と言いたかったようだが、その言葉は言い終わる前に終わった。

正確には、言えなかった。

「【傀儡(ジャック)(マインド)】」

絆は、動きを封じるこの能力を使っていたのだ。

中学生たちは身動きが取れない。

そんな中で、絆はにこりと微笑むことなく、真顔でこう言う。

「邪魔だから、止まっててもらったから」

その顔はまるで、ごみでも見るような顔だった。

その表情と、動きが取れないことにビビった中学生たちは、必死になって助かることを考える。

だが、絆の表情と人外のような化け物を相手にしているようなプレッシャーからか、彼らは意識を失う。

「ざまあみろ、くそガキども」

絆はそう言うが、それどころじゃない。

今はなんとしてでもーーー。

「この猫を助けなきゃ!」

そう言って、気絶した彼らを放置して、絆は表路地へ向かうのだった。

先程から、絆が抱えている子猫はぐったりしているのだ。

早く治療しないと、この黒い子猫は死んでしまうだろう。

先程の中学生の心の中は、受験のストレスで埋め尽くされていた。

だからこそ、彼らはか弱い生物を虐待することで、それを発散しようとしたのかもしれない。

いや、しようとしていたんだ。

なぜならば、先程サッカーボールのように蹴っている時の中学生たちは実に楽しそうだった。

なんの罪悪感もなく、なんの悪気もなく、ただただ子猫をいたぶって遊んでいたのだ。

そんな事で、このなんの罪もない子猫を死なせるわけにはいかない。

人間の勝手な都合によってーーー人間の勝手な心のせいで。

そう思うと、絆は同じ人間であるがゆえに、心が押し潰されそうになっていた。

そして、走りながら瀕死の子猫に言う。

「ごめんね……人間のせいでこんな目にあって、ごめんね……謝っても許されないと思うけど、ごめんね……絶対に助けるから……持ちこたえてくれ……」

ポロポロと涙がこぼれ落ちながら、顔がくしゃくしゃになりながらも、絆は必死になって、子猫を助けるために走るのだった。

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