表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第弐心―セカンドハーツ―  作者: ただっち
第1話:心結絆の人生転機
1/18

00

もしも心が読めるだなんてことができたら……それは、幸せなことでしょうか?


人間は不浄な生き物だ。


平気で嘘をつくし、平気で他人を騙すし、平気で他者の領域を侵そうとする。他人に依存し、他人を利用し、他人を使うーーーそれが、人間の本質とも言えるのかもしれない。


だが、一番恐ろしいのは、表だって分かるようなことーーー例えば顔などの表情とは違って、内面的で深層にまで行く、その人物の姿ーーー云わば、(こころ)と呼ばれているものを読み解くことが出来ないことではないだろうか。


相手の心が分からないということは、その人が本当に喜んでいるのか、悲しんでいるのか、怒っているのか……それを知るすべが無いということだ。


見た目で騙されてはいけない。


見た目が白だからと言って、中まで白とは限らない。


優等生そうな男子高校生だって、実は裏で親父狩りをしていたり、お人形みたいに可愛い女子高生なんかは、売春に手を染めていたりする。真面目そうな教授は、不正なお金で豪遊していたり、みんなに親切で有名な医者なんか、裏で臓器売買をしていたりする。


みんな裏では何をやっているかなんて、分からない。


だが、しかしーーーとある少年は違った。少年は幼少の頃から、そんな腐った心を見ることができた。そして、同時に壊すことも出来た。


少年の名前は、心結絆(こころめきずな)ーーー心、結ぶ、絆という、少年本人の嫌いな言葉が見事に名前になってしまっている不幸な少年だ。


絆には、幼少の頃からある特殊な力が備わっていた。それは、他者の領域であり、表面に……否、表層心理に隠された、深層心理を読む事のできる能力だ。


深層心理ーーーそれは、心を持つ生物の本音の領域である。表層心理である上部だけの、上っ面だけの安い心ではなく、本人が本当はどう思っているのかーーーそして、どう感じているのか。その隠された心というのが、深層心理と言うわけだ。


その能力に目覚めたのは、絆が5歳の時だったーーー突如として、周りの大人の腐った心を見れるようになった絆は、子供ながらに「正してしまおう」と言う正義感を持っていた。


「自分がこの能力に目覚めたのは、なにか理由があるに違いないーーー」そう本人は感じていた。

「自分自身は選ばれた人間なのだ」とーーーだが、それは直ぐに覆されることになる。


簡潔的に事の経緯を説明するならばーーー大人たちは卑怯だった。


「所詮、子供の言うことだぜ」

「子供の癖に生意気ね」

「子供なんだから、大人の世界に口を出すんじゃないの」

「大人ぶらなくていいんだぜ」

「子供らしく振る舞った方がいいよ」


そんな感じで、絆は言いくるめられてしまう。子供ながらに、正義と呼ばれる正しいことをしようとしてーーーそして、正義の価値観をねじ曲げられてしまう。


子供の意見は大人には届かないーーー例えそれがどんなに正しいことでも。


そんな大人たちの心を彼は、「壊れてしまえ」と思った。子供ながらに、「こんな間違いが正しくなるなら心なんて壊れてしまえーーー不浄で汚ならしく卑しい心なんてーーー全部全部、壊れてしまえ‼」と絆はそう願った。


そしてある日ーーー絆の願いは叶ってしまう。それも、最悪の形でーーー。


先程まで散々文句を言って、自分の利権を守っていた大人たちは、次々と廃人になっていった。

というのも、心が打ち砕かれてしまい、無気力になってしまっただけだ。


だが、それだけでは終わらなかった。


無機質に、無謀になった大人たちが次にとった行動は、死を招き寄せる行動ーーーつまり、自殺だった。


あるものはなにも考えられなくなり自らを浄化の炎で焼かれると言って焼身自殺、あるものは痛みを知りたくて猛スピードの列車の前に飛び出て追突される交通事故に見せかけた自殺、あるものは空を飛ぼうとビルの屋上から飛び降りる飛び降り自殺。


深層心理が破壊されたーーーそれは、人々にとっては死を意味することを、絆は5歳で知ることになる。

深層心理は本心の塊でもあるーーーそれ故、本心を打ち砕かれたら、人間はなにもできなくなる。

なにもできなくなるということは、なにも判断できなくなる。そして、人間が最後にたどり着く選択は、死という選択だ。

だから、廃人になったものたちは、次々に自殺していく。

まるでそれが、正しいことのようにーーー。


絆は5歳児の段階で、そのことを知った。

そして、自分は選ばれた人間ではなく、呪われた人間なんだとーーー。


彼は彼なりにこの能力を封印しようと試みた。

だがしかし、歳を重ねる度に能力は強化されていく。

着々と、強固にして、最悪にーーー。

心の破壊を望めば破壊され、心の回復を望めば回復をーーー次第に、人外じみたその能力は親に知られること無く、他人に知られる事なく、着々と成長していく。

そして、絆自身もーーー。


やがて月日は流れ、心結絆は高校3年生になっていた。

何もかもに絶望し、何もかもに見切りをつけた彼は、上部だけの最低限の付き合いだけで、今いるこのクラスに馴染んでいる。

馴染んでいるというより、コントロールしていると言った方がいいかもしれない。



心結絆は、極端なまでに人間が嫌いだ。

心ある生物が、心無き行動を取るなど、人間にしかできない。犬猫みたいなゆるふわなペットの方がよっぽど可愛らしく見えるのだろう。


絆は、人間恐怖症となってしまっている。

そのため、学校にいるときなんかは、常に具合を悪くしている。

吐きそうで、苦しくて、痛くて、死にそうーーーそんな憂鬱な学校生活……もとい、人間生活というのは、高校3年生になった今でも変わらない。いや、前より酷くなっているかもしれないと、絆は痛感している。


心を読めてしまうーーーそれは、悪夢が永遠と続くような事である。

憧れは打ち砕かれ、尊敬は軽蔑になり、羨みは妬みへと変わる。そんな人間のドロドロとした本性というのは、本当に汚い。汚くて汚くて、見るたびに毎度毎度ーーー絆は嗚咽が止まらなくなる。

自身の正しい心を犯されてしまいそうになると、よりそう感じてしまうのだ。


いや、なにが正しいのかなんて、正直言って絆自身にもはっきりともの申すことができない。

価値観や、考えは人それぞれーーーならば、正しいとは誰が決めるのだろうか。

親か?

兄弟か?

姉妹か?

神様か?

大人か?

否、他人が決められるくらいなら、正しいなんてことは多数意見の合意に過ぎない。


よく特撮だと、悪役として、悪い組織みたいに描かれている設定なんかを例にとると、視聴者を含め、大半のーーーいや、殆どの人は、悪役を悪役として、悪の組織を悪の組織として捉えているだろう。

悪の組織と呼ばれた彼らにも、彼らなりの正義が存在するのにーーーそれは、世間からずれているだけでという理由で無下にされる。

そんな世界が、人間社会という巨大な闇なのだ。

そんな闇の闇が見えてしまうなんてーーーと心結絆は、自身の呪われた能力を呪うのだった。

ちょっとエグい話書きたくなったので、書いていきます。

相変わらずスマホから書く環境しかないので、文体は見にくいと思いますけどご容赦ください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ