06 ステータス
急にステータスを見せよと言われても、レンセ達にはどうすればいいか分からない。そもそも言葉の意味に戸惑っている生徒もいた。
「ステータスについてはまだ説明されてなかったようじゃの。やれやれじゃ、とにかくまずはステータスを出せ。頭の中でステータスオープンと念じてみよ。頭で念じるのが難しければ声に出しても構わん」
シュダーディに言われて、生徒達はそれぞれステータスオープンと頭で念じる。生徒の半分ほどは、口でもステータスオープンと喋っていた。
レンセも頭の中だけで念じてステータスを表示させる。目の前に半透明の立体映像のような物が現れた。
【国松 煉施】 LV:1 種族:平人 職能:オリハルコンマスター
HP:30
MP:40
攻撃:20
防御:30
魔力:40
魔耐:30
敏捷:30
ユニークスキル:《オリハルコン操作》
スキル:《言語理解》《魔力精密操作》《魔力感知》《気配感知》《高速演算》《並列思考》《鑑定》
まるでゲームのような数字が並んでいる。数値は強いのか弱いのか自分のだけでは判断出来ない。だがスキル。特殊能力のような物をレンセは七つも持っていた。さらにどんな物か分からないが、ユニークスキルというのもついている。
もっともスキルの一つ《言語理解》は恐らく全員が持っているだろう。だがそれを除いても六つである。これは悪くないんじゃないかとレンセは思った。
レンセは異世界に召喚されるような小説を読んでいたことがあるため、クラスメイトと同時に飛ばされたら自分だけひどいステータスになることもあるんじゃないかと危惧していたが、どうやらそんなことはなかったようだ。
だが油断は出来ない。
そのためレンセは周囲を見回し、他の生徒のステータスと見比べる。このステータス画面は、本人が念じて出しさえすれば、周りからも普通に見える物だった。
手始めにまずは、隣にいた彩亜のステータスをレンセは覗く。
【西堀 彩亜】 LV:1 種族:平人 職能:暗殺者
HP:40
MP:5
攻撃:40
防御:20
魔力:5
魔耐:20
敏捷:80
ユニークスキル:《不可視化》
スキル:《言語理解》《敏捷強化》《気配隠蔽》
敏捷が80と飛びぬけて高い。だが魔力が一桁だったりと、レンセよりも戦士系に偏った能力値だった。
スキルの数はレンセより少ない。能力の内容自体は優秀そうだが。そしてやはり《言語理解》は全員共通で持っているようである。
その彩亜も自分とレンセのステータスを見比べていた。
「……レンセのスキル七つもある。すごい。さすがレンセ」
彩亜に褒められて、レンセは少し嬉しくなってしまう。
それにしても、ここは本当に異世界なんだなとレンセは思った。こうしてゲームみたいな物が出てくるとそれが強く実感出来て、レンセは少しだけ面白いなと思ってしまう。
だがそんな気分は、一瞬で現実へと引き戻される。
「さてと、ステータスの表示は全員済んだの。ではワシ自ら全員の能力をチェックさせてもらおうかの」
シュダーディが奥の椅子から立ち上がり、生徒達の方へと歩いてきた。そうして、端の方から生徒達のステータスを確認して行く。
ステータスの見方について、生徒達への説明などは一切ない。生徒達にステータスを表示させたのは、生徒自身ではなく、あくまでシュダーディがそれを見るためなのだ。
「ワシはこれを見るために、こうして謁見の場を設けたようなものじゃからの。しかし、ふむ。やはりユニークスキル持ちが多いの。さすがは異世界人と言った所か。興味深い能力も多――」
シュダーディの足が止まる。芹の前だった。
【金元 芹】 LV:1 種族:平人 職能:影使い
HP:40
MP:40
攻撃:40
防御:30
魔力:40
魔耐:30
敏捷:30
ユニークスキル:《無形の影》
スキル:《言語理解》《魔力精密操作》
「ユニークスキル《無形の影》、自分の影を操って、自在に形を変えられる能力か。応用も効くし、なかなか面白い能力じゃ。レベルが上がれば影の強度も上がるようじゃしの。悪くない。貴様は女じゃが、希望するなら戦闘組としても扱おうぞ」
芹のユニークスキルをシュダーディが褒める。
ちなみにシュダーディは、生徒達の能力値そのものにはほぼ関心を示していなかった。これはレベルで変動するし、生徒達の間でそれほど差異もなかったためだ。
だがしばらく他の生徒を眺めた後、次は能力値を見てシュダーディの足が止まる。
【皇 騎士】 LV:1 種族:平人 職能:剣士
HP:100
MP:10
攻撃:100
防御:100
魔力:10
魔耐:100
敏捷:50
ユニークスキル:なし
スキル:《言語理解》《HP強化》《攻撃強化》《防御強化》《魔耐強化》《剣術》
「これはまた。こういう奴もおるのじゃの。ユニークスキルこそ持ってはないが、レベル1で三桁の能力値は驚きじゃ。《剣術》も使い勝手のよい能力じゃしの。貴様は純粋に強くなる。主戦力として戦えるじゃろう。期待しておるぞ」
シュダーディはナイトを褒めてさらに進む。そうして今度は、彩亜の前で足が止まった。
「《不可視化》。自分の姿を消せるユニークスキルか。これも良い能力じゃな。《不可視化》で誤魔化せるのは視覚情報だけじゃが、通常スキルの《気配隠蔽》と組み合わせればかなり凶悪になるじゃろう。《魔力隠蔽》もあれば完璧じゃが、貴様はまだ魔力が低いし、LVが上がれば《魔力隠蔽》も覚えるじゃろうしな。貴様も用途によっては使える貴重な駒じゃ。精進するようにの」
彩亜のユニークスキルも強かった。シュダーディは主に生徒達のユニークスキルに注目していた。その上で今回は当たりが多い。シュダーディは少しだけ上機嫌になっていた。
そしてついに、レンセのステータスを見る番となる。
だがシュダーディはレンセのステータスを一目見て、その態度を一変させた。
レンセの細かい能力値や通常スキル。それらはシュダーディの視界にすら入っていない。シュダーディはレンセの職能とユニークスキルを見ただけで、その態度を一変させたのだ。
シュダーディはレンセの顔を真っ直ぐ見つめ、宿敵を見るような目でこう言った。
「《オリハルコンマスター》……ワシと同じタイプの能力者か」