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クラス丸ごと奴隷召喚 ~至高の黄金球使い~  作者: 濃縮原液
第5章 エピオ領内遭遇戦
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08 話し合い

 レンセとビリーバラの話し合いは順調に進んだ。元々ビリーバラの方からレンセを呼び出している。その上で二人の利害は一致していたので問題は少なかったのだ。


「傭兵団の設立には快く協力しよう。オリハルコンも、そうだね。まずは黄金球で千個。これを君に提供しよう。ただしこれは贈与ではなく貸与だ。金銭に換算すれば百億エフもの大金だからね。いくら私が金持ちでも、これをぽんと出すような真似は出来ない。ただし戦闘に使うのだから、無傷で返せなどという無茶はいわんがね」


「はい。そして僕は、オリハルコンに傭兵団、そして援助を受けた上でイルハダルを倒す。その際には僕が魔族であることをアピールして、魔族全体の地位向上につなげる。で宜しいですね」


「そう。私の要望はそんなところだ。元々私はシュダーディが嫌いだ。彼を排除するために、君に援助をするのは惜しまない。だがその上で君が魔族というのも都合がいい。シュダーディという最強の魔族が、教会の使徒や普通の傭兵に倒されるのでは困るのだよ。その流れではそのまま魔族狩りが進んでしまうかも知れない」


 ビリーバラはシュダーディの存在に長年頭を悩まされていた。


 誘拐や略奪などの犯罪行為を繰り返すイルハダルは魔族の恥部のようなものだ。魔族の印象を年々悪くするシュダーディ達をビリーバラは昔から排除したいと考えていた。


 だが、ただ排除するのもあまり良くない。


 シュダーディとイルハダルが目立つおかげで、他の魔族への魔族狩りが減っているという事実もあったのだ。


 対魔族機関の第一目標がイルハダルとなっていたためである。


 その流れのまま教会がイルハダルを倒した日には、その勢いをかって、魔族狩りが活発化する恐れすらあったのだ。


 そのためビリーバラはあくまで中立を守り、この問題に表だって介入するのを避けていた。


「でも君がシュダーディを倒してくれるなら話は別だ。魔族の手により魔族を倒す。もちろんこれで、教会や他の者達の魔族への目がすぐ変わるとは思えない。だがこの問題に魔族自身の手で決着をつける。これには大きな意味がある。その効果まで考えれば、君への投資を私が惜しむことはない。シュダーディを倒すのに私が力を貸したという事実そのものも、私にとってその後の利益になるものだしね」


 魔族の力によって問題を解決することによる魔族の地位向上。さらにビリーバラ自身がイルハダル討伐に力を貸すことによるビリーバラ自身の地位向上。この二つがビリーバラの目的だった。


「ただし、この援助はあくまで非公式なものにさせてもらう。曲がりなりにも私はザンジェビアの貴族なのだから。イルハダルが倒されるまでは、私はあくまで中立を貫く。それで構わないね」


「はいもちろんです」


 ビリーバラはレンセに期待こそかけてはいるが、シュダーディを倒せる確信があるわけではもちろんない。


 そのため、事が終わるまでは中立の立場を貫く予定なのだ。


 レンセとしてはこのビリーバラのやり方に文句はなく、レンセとビリーバラの話し合いは順調なままに決着した。


 だがしかし。


「先にレンセ君には伝えておくが、私はシルリアス嬢の提案を飲む気はない」


 問題はシルリアスの提案の方にこそあった。


 ビリーバラは戦争の決着がつくまで表に出ない方針である。これによりイルハダルが勝つ場合、負ける場合、どちらにおいても生き残ることを画策している。


 そのビリーバラの方針として、シルリアスの要求は受け入れがたい物だった。


 シルリアスは無害通行権により聖国と帝国の連合軍がエピオ領を通過する許可を求めている。


 だがこれをビリーバラが受け入れれば、ビリーバラはザンジェビア公国に対し反旗を翻すこととなる。


 終戦まで中立を貫きたいビリーバラにとって、その提案は受け入れられない物だった。


「もっとも、連合軍に領内へと攻め入られては開戦時点で我が領が甚大な被害を受けるのも事実。シルリアス嬢の話次第では、違う結論になることももしかしたらあるかも知れないがね」


 一応話だけは聞きはするが、期待はするなということである。


 もっともこの話についてレンセは部外者。後はシルリアスが上手くやることを祈るのみだった。


「さて、これでひとまず話は終わりだ。レンセ君の方へは全面的な支援を約束しよう。シルリアス嬢との話の方が長くなりそうだ。レンセ君達は今日はこの屋敷で止まってもら――どうかしたかね?」


 レンセが急に表情を変えたため、ビリーバラはいぶかしんでいた。だがレンセの変化に気付き意識を集中させたことで、ビリーバラもこの地に迫る気配に気付くこととなる。


「強い魔力が近づいて来ています。魔族にしても相当強い、ボコラムと同じか、それ以上の魔力を感じます。場所はまだ領内との境界付近のはずですが」


 隠そうともしない強い魔力をレンセだけでなく他の者達も感じ取れた。


「ヘミウェイ・イグリットだ。このザンジェビアの貴族の一人にして、国内で二番目の強さを誇る魔族。イルハダルの上級幹部にも匹敵する実力者だよ。強硬派の魔族にはこのクラスの猛者がいる。だがこのタイミングでの来訪。嫌な予感しかしてこないね」


 レンセやトキナは普段魔力を抑えている。これは赤い目の光を極力抑えるためであり、穏健派の魔族もこれと同じことを普段から行っていた。


 そのためレンセ達の魔力はまだ向こうに気付かれてはいない状況だ。


「悪いがシルリアス嬢との話し合いはキャンセルだ。ともかくヘミウェイに対応しなくてはならない。レンセ君達はしばらく地下の魔導庫に隠れてもらう。魔素の濃度が高い部屋だ。ヘミウェイ達が帰るまで、君達はそこで魔力を隠していてくれ」


 こうして急きょ話し合いは終了となり、レンセは待合室にいた仲間と共に地下の魔導庫へと隠れることとなる。


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