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クラス丸ごと奴隷召喚 ~至高の黄金球使い~  作者: 濃縮原液
第5章 エピオ領内遭遇戦
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07 ビリーバラ・エピオ

「ではしばらくこちらでお待ちください。アロちゃんは僕と一緒にビリーバラ様に報告を」


「分かったにゃ」


 レンセ達は待合室でお茶を出された後、まずはアロがビリーバラへの報告を終えるのを待つこととなる。


「……時間かかりそう?」


「多分ね。僕達が来たのは予定通りだけど、シルリアスさん達は想定外だろうから。アロちゃんが上手く話をしてくれるといいけれど」


「あのアホそうな猫人娘にそれを期待するのは難しいじゃろうがの」


「だがあの娘も悪い子ではない。正直な報告だけは期待しても良いだろう。後はシルリアス様たち次第といったところか」


「が、頑張ります」


 そうしてしばらくの時間が過ぎ、案内の少年が戻ってくる。


「では、まずはレンセ様からお越しください。ただし、お付の方は一名のみとさせて頂きます」


「分かりました。でも連れて行けるのは一人だけなんですね。……うーん」


 レンセは女性陣の顔を見ながら考える。


 トキナに芹、ついでに絵理香辺りがついて来たそうな顔をしていた。


 だがここで彩亜が声をあげる。


「わたしが行く。……レンセが嫌じゃなければだけど」


 彩亜が名乗りを上げたことにより、反論する者は誰もでなくなった。


 彩亜はレンセが生贄にされた際にその命を助けている。そのアドバンテージがある時点で、他のメンバーに彩亜に強く出られる者はいないのだ。


 ただし彩亜はそれを利用してでしゃばる性格でもなかったため、今回の行動を不思議に思う者も多かった。メンバー達のそんな顔を見て彩亜が自分の考えを伝える。


「わたしは……そんなに頭良くないから。芹とトキナは頭が回る。でもだからついてっちゃ駄目。二人が一緒だと……レンセの考えが正確に向こうに伝わらない。わたしはついていっても何もしないけど、だからわたしがついて行くべき」


 彩亜の言葉にメンバー全員が納得する。


 特にトキナと芹は顔を見合わせ、(確かにこいつがついていくと余計なことを言いそうだ)と互いに思いあっていた。


 そうしてレンセは彩亜だけを引き連れてビリーバラのいる部屋へと入る。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 ビリーバラ・エピオと謁見を行う部屋は、シュダーディの謁見の間と比べると少し小さい。だが部屋の装飾は豪華であり、彼が世界一の金持ちであることを十分印象付ける物だった。


 全体的に赤系統の壁に覆われた部屋の中、床には真っ赤なカーペットが引かれおり、ビリーバラの座る豪華な椅子の後ろには、薔薇のような真っ赤な花が咲き乱れていた。


「初めましてレンセ君。私がビリーバラ・エピオだ。それにしても本当に可愛いねレンセ君は」


「……お初にお目にかかりますビリーバラさん」


 ビリーバラの声や口調は優しかった。だが彼の見た目はそうではない。


 ビリーバラ・エピオは軟弱な金持ちなどではけしてなかった。金髪の髪に褐色の肌を持つのはアロと同じだがその体は鍛え抜かれており、魔族であることも相まってかなりの威圧感を発している。


 要するにガチムチ系のお兄さんだった。


 もちろんレンセはそれだけでビリーバラにおびえたりすることはない。だが彩亜はビリーバラに対し強い警戒感を抱いていた。


 もっとも彩亜の方は、性的な意味でレンセに危険がないかを警戒している。


「隣のお嬢さんも初めまして。でもそんな怖い顔をしないでくれるかな。何もとって食おうってわけじゃないんだから」


「もちろん。……レンセを食べていいのはわたしだけ」


「ふう、どうやらいらぬ警戒を与えてしまっているようだね。私は可愛い者が好きなだけなのだよ。あくまで愛でる対象としてね。別に彼をどうこうしようという意図はないのだから、少しは警戒を解いて欲しいかな」


「……ならいいけど」


 そうして彩亜は殺気を抑える。だが同時に気配も薄くしていた。いつでも《不可視化(インビジブル)》で姿を消してビリーバラを襲える体勢に入っているとも言える。


 ただしビリーバラの両脇に立つ二人の魔族が隙なく彩亜を警戒していたが。


「お嬢さんはともかくレンセ君の方に暴れられては、私達は全滅させられてしまうだろうがね。一応それはしない方がいいと先に伝えておくよ。私はザンジェビアだけでなく聖国とも少しはつながりがあるが、帝国との絆はそれより強い。疎遠になっている教会より、傭兵ギルドへはより多くの投資をしているからね」


 ビリーバラはふところから黄金球を取り出しながら話を続ける。


「私は多くのオリハルコンマテリアルを所持している。レンセ君の感知能力、そしてユニークスキルの特性を考えれば、屋敷にある宝物庫の場所も感じ取れているだろう。そこにあるオリハルコンを支配下におさめれば私達を全滅させるのは簡単だ。だがその場合、自動的に君の討伐依頼が傭兵ギルドに出る手筈になっているとだけは言っておこうか」


 ビリーバラは穏やかな表情のままレンセのことを脅迫していた。この場にアロがいれば「叔父は腹の中真っ黒なのにゃー!」などと叫んでいたであろう。


 もちろんそんなことをされては話が進まないのでアロは席を外させられていた。


 そして平気な顔でレンセを脅すビリーバラに彩亜はより警戒を強めているが、レンセは表情を変えずにビリーバラに返事を返す。


「もちろん、僕にあなたと敵対する意思はありません。それにアロちゃんから聞いているかと思いますが、僕は傭兵団を組織したいと考えています。確かに武力であなたを制圧すればオリハルコンは得られるでしょう。でも僕はそれよりも、あなた自身の助力を得られることの方が有益だと考えています。もちろん、全てが終わった後のことも考えての上でのことです」


「ふむ。レンセ君は長期的な視野を持っているという事だね。君達は捕らわれた仲間を助けるつもりのようだが、助けて終わりというわけでもない。異世界への帰還が叶わなければその後もこの世界で生きる必要があるわけだからね」


「おっしゃる通りです。そうした将来も見据えた上で、あなたとは友好的な関係を築きたいと考えています」


「宜しい。冷静であり友好的だ。私は見た目の可愛さだけでなく、内面の方も君のことを気に入ったよ。商談相手として申し分ない。では、具体的な話を始めようか」


 こうしてビリーバラとの本格的な話し合いが開始される。


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