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クラス丸ごと奴隷召喚 ~至高の黄金球使い~  作者: 濃縮原液
第5章 エピオ領内遭遇戦
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02 遭遇

「ヒャッハー、おたすけー!」


 兎人エミリスはピンチに陥っていた。


 周りを四体のレッドアリゲーターに囲まれている。


「やばいぜシルリアス様よぉー。転移石で帰っちまおうぜー」


「駄目です。まだ何もしていないのに聖都に戻ることは出来ません」


「ちきしょっ。あたしは《使徒化》出来ねえっつーんだよぉ! 《アイテムボックス》! 手榴弾でも喰らいやがれー」


 エミリスはアイテムボックスから取り出した魔導手榴弾を投げつける。中級魔法相当の爆発が起こり、レッドアリゲーターは一瞬ひるむ。だが。


「ちきしょー。やっぱ手榴弾一個じゃ死なねえじゃんかよぉっ! マシンガンセットしてる時間もねえし。この数はやっぱアウトだぜー」


「人目を避けて山道に入ったのは失敗でした。再び聖都からの出発となれば遅れは致命的になってしまいますが――」


 シルリアスは苦渋の思いで転移石を起動させようとする。だが――


「オリハルコンレイン!」


 九個の黄金球が空高くから降り注ぐ。それらはピンポイントにレッドアリゲーターの頭を貫いた。エミリス達を囲む四体の他に、奥にいた五体のアリゲーターも串刺しにされる。


「ついでじゃ! 妾の攻撃も喰らっておけい」


 続いてトキナが魔法を放つ。黒い炎で出来た四体の獅子がエミリス達を囲んでいた四体のレッドアリゲーターを焼き尽くした。


「……後ろの五体も死んでるみたい」


「ふふ、妾の凄さを少しは実感出来たかの」


「え? レンセ君の攻撃だけで倒せてたんじゃないの? 後ろの五体はそうみたいだし」


「む。ぐぬぬ……」


 トキナは自分が活躍出来ずくやしがっていた。


「……大丈夫。トキナがすごいのわたしはちゃんと分かってる」


「彩亜ぁあ~」


 トキナは彩亜に抱き付いて泣いていた。その姿はどこからどう見てもただの中学生である。


「大丈夫ですかっ!」


 可愛そうな感じのトキナを無視しつつレンセはエミリス達の元へと向かう。だが。


「ええ、おかげで助かりまし――魔族っ!?」


「うおっ、マジだ! 聖女様逃げ――」


「うんごめんね。一応拘束させてもらうよ」


「《拘束する影(シャドウバインド)》!」


 二人の動きをレンセが素早く止め、続く芹のスキルにより二人の体が拘束される。エミリスの方は力づくで芹の影を破れそうではあったが、レンセに後ろを取られているので拘束を解いても無意味。


 そしてそれ以前に、聖女が捕らわれた状態で逃げる選択肢など初めからエミリスにはなかった。


「くっ、殺すならあたしを殺せー! この子はまだ十五歳なんだ。胸だってさらに大きくなる! この子にはまだ未来があるんだ」


「エミリスっ! 一体何を言うのです!」


 魔族に捕まった時点で死を覚悟するエミリスとシルリアス。レンセは二人の反応に少し戸惑ってしまうが。


「……貴様ら創世神教会の人間じゃな」


 トキナの言葉で概ねのことを理解する。


「いきなり拘束しといて言うのもなんだけど、僕達に敵意はないよ」


 そう言うレンセの目からは既に赤い光が消えかかっていた。


「そもそもレンセは貴様らを助けるために本気を出したのじゃからな。魔族とバレるリスクを冒してまで助けたのじゃ。ありがたいと思って欲しいものじゃの」


「そう……ですね。本当にありがとうございます」


 トキナの言葉の意味をシルリアスはすぐに理解する。


 魔族の目は赤く光るのが特徴だが、これは魔力を抑えることによって極限まで光を抑えることが可能である。そうして人里に紛れている魔族も存在するほどだ。


 だからレンセ達が魔族とバレたくなければ、そもそもシルリアス達を見捨てればよい話である。リスクを冒してまで自分達を助けたレンセ達の行動に、シルリアスは改めて感謝の念を抱いた。


「教会の人達がどうしてこんな所に来ているのか、良かったら聞かせてくれないかな?」


 シルリアスは自分達がこの地に来た大まかないきさつを話して聞かせた。ただしシルリアスが教皇の娘である事実だけはぼかしながらであるが。


「……ですので、わたくし達にも敵意はありません。穏健派の魔族の中に貴方方ほど強い方がいるとは存じませんでしたが。お願いします。どうかわたくし達をビリーバラ氏に会わせて下さい。避けうる争いはなんとしても回避したいのです」


「うーん、どうしたらいいかな。アロちゃんどうする?」


「にゃ、にゃんでここでアロに振るのにゃ!」


「だってアロちゃんエピオ家の人間だし」


「う、うーん。無理にゃ! アロには判断つかないにゃ! 叔父様に相談してどうするか決めてもらうしかないのにゃー!」


「まあそうだよね。じゃあこの人達も連れてっていいかな」


「いいのにゃ。でも叔父が素直に会うかはあくまで未知数にゃー」


「ありがとうございます」


 こうしてエミリスとシルリアスはレンセ達に同行することとなる。二人に抵抗の意志がないのを確認し、芹も影による拘束を解くが。


「あ、少し言いづらいんだけど、一応出発する前に二人の荷物を改めさせてもらうね。助けに入る前に転移石とか聞こえた気がするし。瞬間移動出来るマジックアイテムか何かかな? あと兎人の子の方は《アイテムボックス》? 空中から物を出してたよね」


「……マジか。アイテムボックスの中まで全部見せろっつーのかよ」


「手榴弾のような物が入っていたのに確認しないわけにはいかぬだろう。特に瞬間移動出来るような魔道具で逃げられてはたまらないからな」


「……分かったよ。好きなだけ奥までみりゃいいだろ」


 エミリスはアイテムボックスの中身を全部出した上で境界面を開いて見せる。穴をくぐれば人も入れる大きさだ。


「ほらよ。これでもう中身は空だ。信用できなきゃ中に入って確認しな。ただし、あたしもこの中がどうなってるかは良く知らねえ。帰ってこれる保証はねえぜ」


 エミリスの言葉にレンセはどうするかしばし迷うが。


「あたしが行くぞー」


 《氷使い》のまゆが立候補した。レンセは少し抵抗するが結局まゆに押し負け了承する。


「何もなかった。でも面白かったぞー。宇宙みたいだったー」


 一分ほどしてまゆは戻った。


 その後はエミリス達の出した荷物をレンセのスキルで《鑑定》する。


「転移石。あらかじめ設定した場所に瞬時に戻れるアイテムか。設定場所は聖都の中心になってるね。……護身用に重要なアイテムだったんだろうけど、これはしばらくの間没収させてもらうよ。聖都に逃げられるわけにはいかないからね」


「……分かりました」


「うん。盗賊みたいな真似してホントごめんね。でもその代わり君達の身は僕達で守るから。ビリーバラさんが会ってくれるかは分からないけど」


「はい。理解しております」


「うん。じゃあ改めてビリーバラさんの所に向かおうか」


 こうしてレンセ達は再び歩みを進める。


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