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クラス丸ごと奴隷召喚 ~至高の黄金球使い~  作者: 濃縮原液
第4章 奴隷オークション
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アナザーside2 魔貴族ヘミウェイ

 神の塔がそびえる広大な山岳地帯。その一角にイルハダルの本拠地は存在する。その本拠地の中にある小さな部屋で、見るも無残な拷問が行われていた。


「頼む。俺の知ってることは全部話した。お願いだから助けてくれ」


 拷問されているのは創世神教会の諜報員だった男である。彼はニムルス地下迷宮最下層においてレンセとトキナに一度捕まり、解放された後は森の中を彷徨っていた。


 可愛そうなことに、彼は一日迷宮から戻らなかっただけで見捨てられてしまっていたのである。というより、迷宮内の魔物に敗れて死んだものと思われていた。彼はそれくらいにただの雑魚だった。


 そしてニムルスの森を彷徨っている所で、今度はイルハダルの構成員に掴まり、こうして本拠地で拷問を受けている。


「もういいぞヘミウェイ。聞きたいことは聞き終えた。いい加減楽にしてやれよ」


 うんざりした顔でボコラムは前にいる女性に話しかける。


「あらぁ。ゲスなボコラムさんにしては優しいお言葉。わたしくはもっとこの殿方と楽しみたいのですけれど」


「分かった。やりたきゃ勝手に続けてろ。男が拷問されてるのを見たって俺は楽しくもなんともねえからよ。京極きょうごく トキナの封印がどうして解けたかはだいたい分かった。剛の証言もあったからな。要塞から落ちて死んだはずのレンセが生きてたって話はにわかには信じられねぇが」


「うふふ……。そのレンセって子にもわたくし興味が沸きますわぁ。自力で魔族になったのかしら? 剛って子の方は、そろそろ魔族化が完了する頃のはずですけれど」


「ああ、剛ならまず大丈夫だ。奴には憎む相手がいる。死んだはずなのに生き返って、剛の前から好きな女をさらっていった野郎がな。レンセを憎む強い意志がある限り、剛の魔族化は成功するだろう。対するレンセの方は……俺達が生贄にしてやったからな。魔族になるには十分な憎しみがあっただろう」


「納得ですわ。……魔族化には強い苦しみが伴う。それを耐えるためには、心の底から沸きだす憎しみが不可欠。何かを許せないという強い思いが、魂をこの世に引き留め、人を超えた力を与えてくれますわ。すごい可愛い子だったそうだけど、そのレンセって子が魔族になってどう変わっているのか、わたくしとても興味がありますわぁ」


「……魔族にはなりそうもねえような奴だったんだがな。だがともかく、レンセの小僧が魔族化しちまって、さらに落ちても死ななかった。オリハルコンを隠し持ってたとしか思えねえが。で、ついでに迷宮に封印してたトキナのガキも解放してあの戦いに割り込んできやがったんだ。目的は彩亜だったみてえだが、さらった後女がどうなってるかは知らねえな」


「それも楽しそうですわぁ。自分を刺した幼馴染。魔族になってまでその幼馴染をさらったのですもの。それはもう与えられるだけの苦しみを与えているのでしょうね。剛君はご愁傷様。彩亜って子はもうレンセ君に殺されてるか、生きてたとしても死ぬよりひどい目にあってるわね。これは剛君が魔族になっちゃうのも納得ですわぁ」


「まあ奴らについてはそんなところだ。問題は、そのレンセとトキナが生きてまだどこかにいるって所だな。だが……今の情勢じゃ奴らに構う暇もないが」


「世界大戦。ですわねぇ。キルリールを殺したのは失敗だったのではないかしら? イルハダルはこれまでも多くの犯罪を犯していましたが、戦争になるほどではなかった。わたくし達としましては、戦争まではしたくないのですけれど」


「攻めて来たのは向こうの方だ。それに教会は邪魔だったろうがよ。お前らザンジェビア公国の貴族にとっても、この戦争はいい機会じゃねえのか?」


 ボコラムの言葉に、女は怪しい笑みを浮かべた。


 女の名はヘミウェイ・イグリット。ピンク色の縦ロールの髪の上にウサ耳を生やした兎人女性だ。そして彼女の目は怪しく真っ赤に光っている。


「ふふふ……それはそうなのですけれど。わたくし昔から教会は嫌いでしたが、最近は特に目に余りますわ。シュダーディ様がキルリールを殺して下さったのも好機と言えば好機。グラリエンはともかく教会の聖都があるレミシスは、この機に滅ぼしてしまうのもいいですわね。でも、我が国とてレミシスとグラリエンの連合軍と戦うのは賭けですわよ?」


「シュダーディ様も戦争になればザンジェビア公国を助けると言っている。キルリールのいないレミシスなどは俺達だけでも倒せるくらいだ。ザンジェビアはその間グラリエンを抑えてくれればいい」


「それは頼もしいですわ。となると、我が国における主戦場はエピオ領ということになりますわね。あそこは情けない魔族が多いから色々と不安がありますけれど」


「その辺は少し問題だな。ビリーバラ・エピオには俺は一度も会ったことねえし、シュダーディ様との仲も決して良好とは言えない。今までは互いに不干渉で済ませてきたが戦争になるなら話は別だ。奴ら穏健派の魔族共にも、そろそろ己の立場を明確にしてもらわねえとな」


「ですわね。わたくしが行って彼と交渉してまいりますわ。曲がりなりにもわたくしも彼と同じ魔貴族ですから。この国の領主の一人として、対等な立場で話をしてまいりますわ。ああそれと、異世界人を何人か貸して頂けますかしら?」


 ヘミウェイの言葉にボコラムは眉をひそめる。


「ガキ共をか? 借りてどうする?」


「ただの課外演習ですわよぉ。ただ迷宮に突っ込むだけじゃいい魔族には育ちませんわ。剛君のように戦場に出してあげなくちゃ。彼だって戦場で見たくもないもの見たせいで自ら魔族化に志願したのでしょう?」


「まあ結果的にはそうなんだが。ありゃ例が特殊すぎんだろ。好きな女が竜巻に飛ばされるのを見たと思ったら死んだと思ってた奴がそれを追って飛び出してくとかよ。それに剛は元から俺が見込んでたんだ。外に出せばなんでもいいなんてもんじゃねぇぞ」


「その辺はわたくしに任せて欲しいですわ。いい感じに仕上げてあげますわよぉ」


「まあ魔族化出来るかの選別も含めて、ガキ共も次の段階に進めなきゃなんねぇからな。比較的使えそうな奴をつけてやる。でも壊したりすんじゃねぇぞ。異世界人はお前のおもちゃじゃねぇんだからよ」


「もちろん大丈夫ですわぁ。ではお供の選別お願いしますわね。わたくしはそれまで拷問の続きをしながら待ってますから」


「おうおう、そいつが死ぬまでには選んで連れてきてやるよ」



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 エピオ領。グラリエン帝国とザンジェビア公国の国境付近に位置するこの領地は、大戦において激戦となることが予想されていた。


 その重要な地に中立とも言える穏健派の魔族達は集まっている。


 その彼らの立場を明確にするため、教会側、イルハダル側の双方から交渉の為に赴く人影。



 レンセ達もエピオ領へと向かう中、この地を不穏な影が覆おうとしていた。


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