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クラス丸ごと奴隷召喚 ~至高の黄金球使い~  作者: 濃縮原液
第4章 奴隷オークション
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06 レンセの計画

 首都エンバランにある傭兵ギルド本部。


 ここは今ある一つのパーティーの話題で持ちきりになっていた。


「おい聞いたか。モッフェルにくっついてるあの嬢ちゃん達、ついにBランクに上がったって話だぜ」


「嘘だろおい。傭兵になってまだ一週間ちょっとだぞ。ペースが異常すぎんじゃねぇか」


「モッフェル自身はAランクだからな。奴が受けられる最高難易度の依頼をこなし続けた結果らしいぜ」


「モッフェルの野郎、今まで一匹狼だったってのに急にどうしたってんだ。あんな可愛い嬢ちゃんばっか四人もパーティーに加えてよ」


「いやあの四人……一人は男の子だって噂だぞ」


「マジかよ! いや……あー、そういや僕っ子が一人いたな。あいつ男だったのかよ!」


「てか今の主題はそこじゃねえだろ! モッフェルは確かに強えけどよ、ありゃ多分モッフェルだけの力じゃねぇぜ。一人の時より依頼受けるペースが異常にあがってやがるしよ。モッフェル一人なら苦戦しただろう依頼もすました顔でこなしてやがる。あの嬢ちゃん達と組んで以来、俺はモッフェルが怪我してるとこすら見たことねぇぜ。モッフェルの野郎実は戦闘してねぇんじゃねぇかって思うくれえだ」


「いやいや、いくらなんでもそりゃねえだろ。何か? あの嬢ちゃん達がモッフェルと同じかそれに近い実力持ってて、嬢ちゃん達の力でBランク相当の依頼をこなしてるってでも言いてえのかよ」


「いやそこまでは言わねえよ。でもよ、あの嬢ちゃん達もついにBランクだ。見ろよ、あいつらついにAランク相当の依頼を受けやがった。モッフェル一人じゃ無理な依頼だ。いよいよあの嬢ちゃん達が本物か分かるとこだぜ」


 そしてその日の午後、レンセ達は当然のように全員無傷でAランク相当の依頼を完了する。


 ここに来て傭兵達は、レンセ達がモッフェルのただのお飾りではないことを認識し始めていた。


 傭兵ランクが上がると共に、レンセ達の顔も売れ始めている。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



「……わたし達、どうしてずっと傭兵やってるの?」


 依頼を終えて宿に戻った後、疑問を口にしたのは彩亜である。


「うむ。そう言えばそうじゃの。いつの間にか資金も二千万エフを超えたが、クラスメイト達を落札するのにこんな大金は必要ないじゃろ」


 改めて冷静になると、自分達が何をやっているのか疑問に思う彩亜とトキナ。


 そんな彩亜達にレンセが答えた。


「これは布石だよ。諸国会議の結果はまだ出てないけど会議は主戦派が大勢になってるって聞いてる。地上部隊も派遣する大きな戦になるって話だ。前の空中会戦より、確実に大規模な戦闘になる。それはもう、第三者の介入が不可能なほど大きな戦い」


 レンセは前回の会戦に未練がある。それは、第三者としてしか戦いに入れなかったことだ。


 もし教会側として参戦出来ていれば、あの場で芹達も助けられたんじゃないかとレンセは思う。



 第三者の立場からの介入では、イルハダルと教会、両方を敵に回さねばならないのだ。


 前回は戦いが小規模だったからまだ立ち回ることが出来た。だが次の戦いの規模は前回の比ではない。国対国の、本当の戦争になるという噂なのだ。


「この世界の大きな国は主に三つ。今僕達がいるグラリエン帝国に、教会の聖都がある聖国レミシス。そしてもう一つがザンジェビア公国だ。神の塔、そしてイルハダルの本拠地がある山岳地帯は、この三つの大国を分ける国境線にもなっている」


 レンセはグラリエンに来た後買った世界地図を広げてみんなに説明をする。


「その中で今、帝国と聖国を中心とした連合軍が組まれようとしている。でも問題は最後の一国。ザンジェビア公国だ。公国はイルハダルを支援してるって言われてる。次に起きる戦いは、このザンジェビア公国と連合国との大戦になるって話だよ」


 ザンジェビア公国は、イルハダルを支援するテロ支援国家として認定されていた。


 そもそもイルハダルのメンバーも霞を喰って生きているわけではない。必ず補給は必要なのだ。


 だが神の塔を囲む三国、この内二国は神の塔へと繋がるルートを厳重に封鎖し続けている。ここからイルハダルが補給を受けるのは困難だ。


 当然、残る一国であるザンジェビア公国がイルハダルを支援しているということになる。


 そして次の戦いは、この公国自体を滅ぼすことによってイルハダルへの補給を完全に断つのが目的なのだ。


 例えシュダーディが世界中の誰にも倒せずとも、補給さえ断ってしまえばイルハダルの壊滅は可能という理屈である。


「次の戦争は長くなるし、戦場の範囲も途轍もなく広い。その中でイルハダルがどう動くかも分からない。そんな中、外から介入する形じゃ全てが後手に回っちゃう。だから傭兵として、次は当事者として戦場に入るんだ」


 それがレンセの計画だった。


 傭兵として名を上げ、より重要度の高い作戦に参加出来るようにする。そうなれば外にいるより多くの情報を得られるという寸法だ。


「出来れば開戦までに傭兵団を作りたいと思ってる。ビリーバラさんに会ったら助力を得られるか聞いてみるつもりだよ。新参者の僕が傭兵団を組織するには難しい事もたくさんあると思う。その際にはモッフェルさんに助けてもらえると嬉しいけど」


「傭兵団ねえ。うん、ビリーバラさんが首を縦に振るなら喜んでおじさんも協力させてもらうよ。団員を魔族かそれに近しい者で固めれば、レンセ君達が戦場で本気を出すことも出来るしねえ」


「うん。それが一番の目的かな。後は――」


「戦闘自体は出来なくても、クラスメイト達を助けるのは手伝えるはずだよ~。穏健派の魔族が弱いと言っても、ただの人間と比べれば十分戦える強さだからねえ」


 モッフェルはレンセの話に乗り気だった。


 だが初めてこの話を聞く彩亜達は少し驚いている。


「……レンセ、そんなこと考えてたんだ」


「男二人で話してることが多いと思ったら、そんな計画を練っておったとはの」


「んー……どっちかと言うとモッフェルさんには質問していただけで、今の話は僕が頭の中で考えてただけなんだけど」


 レンセがこの事について彩亜達に話していなかったのは、単純に計画がまだ固まっていなかったからだ。準備を含め、全てはこれから始めるのである。


「それに何をするにしても、全部オークションが終わってからの話だしね」


 奴隷オークションまでは後約五日。芹達を落札する準備は既に整っている。資金も二千万エフという無駄に多い額まで溜まっていた。


 その後もレンセ達は傭兵として高難易度の依頼を受け続ける。



 そして五日後、レンセ達は四千万エフ近くもの大金を手に奴隷オークションへと参加する。


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