表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラス丸ごと奴隷召喚 ~至高の黄金球使い~  作者: 濃縮原液
第1章 囚われの空中要塞
4/56

04 謁見

 レンセは畳んだ制服を黒ローブ、イルハダルのメンバーの一人へと渡して部屋を出た。


 部屋の外も、壁、床、天井……全てが鉄で出来ている。どうやら最初の部屋だけが鉄に覆われていたわけではないようだ。


 鉄で出来た廊下は青白く発光する不思議な石で照らされており、ファンタジーな異世界と言うより、SFじみた印象を与えていた。


 その廊下でレンセは新しい服をもらう。


 イルハダルのメンバーが着ているのと同じ物だ。その黒いローブだけをレンセは裸の上から被った。



「今から貴様らをシュダーディ様の元へと連れて行く」



 ボコラムと数人の男に連れられ、レンセ達は長い階段を上る。


 二階分ほど階段を登ったところで、レンセ達は大きな扉の前へと到着した。


 ここがイルハダルの指導者、アバカル・シュダーディの部屋だとレンセは直感する。その扉をボコラムが開け、続いてレンセ達も中へと入った。



 部屋の中は、どことなく王の間を思わせる。


 周りが銀色に輝く鉄で出来ているのは同様だが屋根の形がドーム状になっていた。また床には青いカーペットが敷かれており、この場所が他とは違うことを感じさせる。


 その部屋の奥、質素だが高級感のある椅子の上にアバカル・シュダーディは鎮座していた。


 シュダーディは他の者とは違い装飾のついた灰色のローブをまとっている。同色の長い髪に、同じく灰色の長いあごひげが特徴的な初老の男。だが色味の少ない姿の中、両の目だけが不気味に赤く光っている。


「ふむ。二十六……七人か。今回は多くの異世界人を召喚出来たなボコラムよ」


「はっ。ありがたきお言葉痛み入ります」


 そう言ってボコラムは頭を下げる。


 生徒達も、全員が頭を下げさせられた。その生徒達の様子を見てシュダーディが優しく声をかける。


「これでは顔が見えぬでの。皆の者、顔を上げよ」


 生徒達はひざまずいたまま顔だけを上げる。


 生徒の顔は一様に恐怖で引きつっていた。先程のショックから立ち直れていない者が多いのだ。


「……覇気のない顔じゃ」


「はっ! こちらの力を少し見せましたゆえ、萎縮しておるようです」


「なるほどの……ん」


 ここでシュダーディの視線が一人の少年を捉える。レンセであった。


「貴様は目が死んでおらぬな。……名はなんと言う?」


「……国松くにまつ 煉施レンセです」


 名前を答えながら、レンセはやられたと思った。よりにもよって敵のトップに、顔色で目を付けられるとは思ってもいなかったのだ。


「ふむ。せっかくじゃ国松くにまつ 煉施レンセよ。貴様にいくつか質問を許そう。ワシに聞きたいことはないか? ワシの気分次第では、二、三個の質問には答えてやるぞ?」


 試されている。レンセはそう感じた。


 既に危険人物として認識されているのかと、レンセは自分の顔に冷や汗が垂れるのを感じた。


 だが同時に、これはチャンスだとレンセは思う。


 現状では何をするにも情報が足りない。それを向こうから聞いていいと言っているのだ。多少のリスクを負ってでも、ここは質問すべきだとレンセは思った。


 まずは、場所。


 ここが一体どんな所かを知る必要がある。近くに街はあるのか? この建物の立地は平地か山か。それによって、ここから逃げる際に必要な物が見えてくる。


 ただし、直接この場所がどこか聞くような真似はしない。それではここから逃げ出したいと言っているようなものである。


 だからレンセはこう質問した。


「質問して良ければ、神の塔について知りたいです。僕達が今どんな所にいるか分からないですが、いずれはここを出て、その塔のある場所に移動することになるのでしょうか? それとも神の塔が近ければ、ここを拠点にその塔に登ることになるのでしょうか?」


 レンセ達は神の塔を攻略するために呼ばれたと聞いている。だからその塔について質問するのは自然だとレンセは判断した。


「なるほどの。確かにお前達にはいずれ神の塔を攻略してもらうことになる。その塔について知りたいと思うのは当然じゃ。ならば……今から見せてやろう」


 ……見せる?


 シュダーディの言葉にレンセは言葉に出来ない不安を覚える。


 そのレンセの不安は的中した。


 シュダーディが見せてやろうと言うのと同時に、ドーム状につながる壁と天井が浮かび上がる。


 そうして出来た隙間から見えた物は、どこまでも続く青い空。その中で……視界の下に雲が見える。


 つまりレンセ達のいるこの場所は――



 ――雲の上だった。



 街が近いかどうかとか、始めからそんな次元の話ではなかったのだ。


 目の前に広がる光景に、生徒達の全員が圧倒される。


 同時に自分達はここから逃げられないのだと、全員が本能的に理解した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ