表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/56

03 最下層

「こんなもんか」


 レンセは三十階層のボスを倒して休んでいた。


 圧勝である。レンセは二十階層のボス、そして三十階層のボスも無傷で倒している。


 今までみんなで攻略していたのはなんだったのかというほどだ。


 だが、これくらいの力はなくてはならないとレンセは思う。


 このニムルス地下迷宮はイルハダルがすでに攻略済みの迷宮なのだ。この三十階層もボコラム達は問題なく踏破したのだろう。


 加えてイルハダルは、神の塔を五十階層まで攻略済みだと言っていた。


 神の塔とニムルス地下迷宮が同じ難易度かは分からない。だが神の塔の方が難易度が低いなどということはないだろう。


 であるならば、ニムルス地下迷宮の三十階層は余裕で攻略出来なくてはならないのだ。


 それを果たし、最低限の力は得ていると改めてレンセは自分の力を確認する。



 そしてレンセは目の前に浮かぶ十二個の黄金球を眺めた。



 二十層のボスが落としたアイテムが黄金球四個、そして三十層のボスが落とした黄金球六個、これに十層ボスが落としていた二個の黄金球を加えて十二個である。


「きんのたまがいっぱい……」


 レンセは少し遠い目で宙に浮く十二個の黄金球を眺める。



 二十階層のボス、三十階層のボス共にレアドロップとして黄金球を落としている。これは偏った確率だ。


 レアドロップが連続すること自体異例だが、狙い澄ましたように全てが黄金球である。まるでレンセに合わせたかのようなドロップだ。


 だがこれについてはレンセはある程度予測がついていた。


 ソロクリア報酬である。


 レンセは現在たった一人でボスを撃破している。その報酬としてレンセに合わせたドロップが出ているのではないかと。


 これは事実その通りであった。


 そしてこのソロクリア報酬は、イルハダルでさえ気が付いてはいなかったものである。


 RPGなどのゲーム知識があればソロ報酬などは予想がつく。だがこの世界はゲームではない。


 死ねば終わりの現実において、わざわざ一人で迷宮に潜るような者はほとんどいないのだ。


 ましてや組織として行動するイルハダルがなんの理由もなしにソロ攻略を試す理由もなかった。彼らはゲームとしてダンジョンを攻略しているわけではない。


 ともかくレンセは、ソロクリア報酬として黄金球を十二個にまで増やしていた。



 レンセは三十階層のボス部屋の中で黄金球の操作感を体に覚え込ませる。


 十個の黄金球を縦横無尽に旋回させた。その旋回速度も十階層にいた時より速くなっている。


 そしてレンセ自身は宙に浮いていた。二つの黄金球の上に足を乗せる形で。


 これは二十層を攻略した辺りからやっていることである。初めは走る方が速かった。だが練習を兼ねてレンセはこの飛行による移動を行っている。


 現在では走るより早く移動が可能となっていた。ただし方向転換などには難があるが。


(やっぱり黄金球の上に乗るのはバランスが悪いかな。飛行移動については別の方法を考える必要があるかも)


 要塞を落ちてから丸一日以上が経っている。この間にレンセは《オリハルコンマスター》としての戦闘スタイルを確立させつつあった。


(戦闘スタイルについてはまだ要改善って所だね。ただ今は……本来の目的を果たすのが先か)


 レンセは戦闘スタイルを確立するためダンジョンに潜っているわけではない。


 本来の目的、情報と助力を得る為に、レンセは三十階層のさらに下、ニムルス地下迷宮の最下層へと足を踏み入れた。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 最下層は白い石造りの階層になっていた。長い廊下と多数の部屋がある構造になっている。


 レンセはこの階層に研究所のような印象を抱いた。


 神の塔はこの世界を創造した神が、世界創世の実験場として使っていたとも言われている。この地下迷宮もそれと同様の場所であるのなら、最下層であるここはまさにその実験をするための場所であるかも知れない。


 そこまでの施設にしては質素すぎるとも思えたが。


 そんな印象を抱きつつレンセは最下層の探索を進める。


 各所の部屋には物が乱雑に置かれていた。武具は概ね旧式であり使えそうな物は見当たらない。正にただの物置といった感じである。


 イルハダルを打倒するための有益な情報は得られないかとレンセは思った。


 ただし初めからレンセもそこまで期待してはいない。最悪周辺の地図だけでも手に入ればよいのだ。最寄りの街の場所が分かればそれだけでもここに来た意味はある。


 そうして最下層の探索を進めているとレンセは大きな広間に出た。


 最下層の中心部である。元来た道を含めて、三方向に細い廊下が走っている。残る最後の一方向は壁となっており、壁の中央には大きな扉がついていた。


 そして――その扉を守護している魔物がいる。


 レンセはすぐにその魔物を《鑑定》した。


 アークデビルLV82。ボコラムが同じ種類の魔物を召喚する所をレンセは以前見たことがある。


 ただしこちらの方がLVが高い。そしてすぐ前の階層、三十階層のボスですらそのLVは40だった。



 ニムルス地下迷宮の攻略LVをあきらかに逸脱した魔物である。



「ボコラムの召喚獣……もしくはイルハダルの使役する魔物って所かな」


 レンセはその正体について素早く判断した。


 そう、この魔物はニムルス地下迷宮の魔物ではない。


 迷宮最下層を倉庫として使用しているイルハダルが、侵入者撃退用に配置している門番なのだ。


 ニムルス地下迷宮三十階層のボスはLV40である。


 そのわずか一階下にいるLV82のモンスター。


 適性レベルで迷宮を攻略してきた者なら、わずか一階の違いで訪れるこの40ものレベル差には対処しきれない。


 侵入者撃退用として必要十分な力を持った守護者であった。


 だがレンセはこの魔物を見て逆に期待を抱き始める。


「こうやって守護までされているってことは、ここにもまだ使える物があるってことかな? もしくは……この奥に例の封印された魔族がいるか」


 レンセの顔に恐怖はない。むしろ魔族に転生して初めて、まともに戦える敵に出会えたといった表情である。


 レンセは宙に浮くのをやめ黄金球の上から地面へと足を下ろす。そしてオリハルコンナイフを構えた上で十二個の黄金球を周囲に展開させた。


「この魔物がイルハダルが使う中で最強クラスだと嬉しいんだけどね。ともかく、まずは倒させてもらおうか。どれだけの力があるか見させてもらうよ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ