Episode 1:例えば転生すると言うお話
不思議な感覚だ。空間の中をただ浮遊しているだけのような感覚。
例えば、宇宙にほうりがされたような感覚が俺を包み込んでいる。
あたりは一面神々しく光っていてなぜかその光が暖かく感じる。
「あれ?起きました?」
ここがどこなのかを考えながらあたりを見回していると、いつの間にか目の前に現れた少女が俺の顔を覗き込みながら聞いてきた。
俺はびっくりして一歩後ずさりをする。
俺は小中高と男子校に通っていたせいて異性に免疫が無いのだ。
「そんなに驚かなくてもいいじゃないですか。」
少女は頬を膨らませた。
なんというか、ものすごくあざとい。
「あ、そうでした。まずは自己紹介しなくちゃですね。私は、ナキサワメといいますです。」
少女はしばらくしてから思い出したように手をたたいてから自己紹介をしてきた。
俺は彼女の名前を聞いて驚いた。
ナキワサメとは、イザナギの涙から生まれたとされる女神の名前だからだ。
「やっぱり、知ってましたか。イザナギ様から生前は神話好きの方だったと聞いていたのでまさかとは思っていましたが、案外知られているというのはうれしいことですね。」
ナキワサメは俺の思考を呼んでかそんなことを言って赤面する。
今、わかったことだがどうやら俺はこの空間ではしゃべることができないようだ。
その代わりと言ってはおかしいがナキワサメには俺の考えていることがわかるらしい。
そして、何より重要なことは俺が死んでいると言うとことだ。
確かに俺は電車にはねられて死んだ記憶があるなのになぜ今女神と対話しているのかそのことが俺は気になった。
「あ、早速本題に入りますか?いいですよ。」
ナキワサメはまた俺の考えを読み取って本題に入ってくれる。
「えっとですね。あなたには前世の記憶を持ったまま転生してもらいます。これは、こちらの手違いで死なせてしまったせいであなたの来世への悪影響を抑えるためです。」
ナキワサメの言葉に俺はまたもや驚いた。
転生されることにではなく神様の手違いで自分が死んでしまったこと対してだ。
俺は確かにあの時自分の意思で動き少女の変わりに電車に轢かれたはずだった。それさえも神様の手の内だったと言うことに驚きを隠せないでいた。
「このことを伝えずにいきなり転生してしまうと混乱してしまうでしょうからその前に教えておこうと思いましてこんな機会を作ったんですよ。」
ナキハサメは感謝しろとでも言わんばかりに胸を張る。
すると急に宙に浮いているような感覚が無くなり体が下へ下へと落ちていくような感覚に変わる。
「あ、もう時間みたいですね。それじゃあ今度こそよい人生を。」
そのことに気が付いたのかナキワサメはそういって俺に向かって手を振ってきた。
再び意識が遠のいていくのを感じながら俺はやっと開けるようになった口で一言つぶやいた。
「…神様ってマイペースなんだな…。」
次の投稿はたぶん来週の日曜日です。