市場の狼
19
市場は今日も人で賑わっている。
王宮殿から新しい見習いが来る。そういうことはたまにある。俺のとこに来たのは、狼を連れた見るからに兵士風の男だった。名前をマオと名乗った。
厄介なのが来た、それが本音だ。ウッドのバングルを着けている。一目で流れ者だとわかる。商売は遊びじゃない、すぐに辞めることになる。
まず、学が足りない。商売のイロハを教えるより先に、教えることが多い。雑用をさせて、空いている時間に娘とかわるがわる勉強を見てやった。
年下の人間に教えられ、怒られている様を見ていると、とてもじゃないが職を変えた方がいい。
「兵士として生きていった方がいい。なにも、お前1人いなくても商売は成り立つ」
辞めなかった。世の中は回す人間がいて、車輪となり働く人間がいるから成り立つとかなんとか。
難しい話は置いておいて、食べ物を扱うということに意義を感じているということ、それが生い立ちから来るのだということ。真面目にやりたいのだと分かった。
20
ある日、近衛兵が訪ねてきた。昔の知り合いらしく、近況を報告していた。盗み聞きしていたわけではないが、客が途絶えてタバコを吹かしていた。
なんでも、付き合っている子にふられたらしい。マオはどうしていいか分からず慌てていた。
「一度ふられたぐらいでなにガタガタ言ってんだ。ガンガンいけ」
つい、言ってしまった。
それから、相談しに来るようになった。
近々、結婚するらしい。
この間、王女様が1人結婚して街はお祭り騒ぎだった。めでたいことは続くものだ。
21
マオにもいい人の1人ぐらい、いてもいいのに。
娘と結婚したいと言ってきた。
いつから?
許すわけにはいかぬ。
「一人前になってから言え」
外はお祭り騒ぎだ。
読んでくださった皆様方、どうもありがとうございます。