火の巫女
13
祭りの準備。わたしはこの精霊の儀式を終えたら巫女となる。
リアンは自警団に入ると言っている。あの人には似合わない。優しい人だから。
巫女となれば、生涯、独り身だ。だから、あの人には幸せに生きてもらおう。
「おはよう、リアン」
「おはよう」
「今日は、精霊の儀式だね」
「そうだな」
今日で別々の道を歩くことになる。自警団に入るといってもパートナーによって、任務が変わる。あの人は狼などがいいみたい。でも、猿にした。パートナーが猿なら村を巡回するのが一般的だと聞いた。どちらにしても、守るというのは変わらない。
祭の準備をすませ、1人考える。
わたしは1人で生きていかなければならない。今の巫女様がしてくださったように、わたしも次代の巫女を育まなければいけない。
リアンはいずれ所帯を持つだろう。ただの幼なじみになる。1人で生きていくと分かっていたのに、巫女という座につくのが嫌で嫌でどうしようもなかった。
14
火の精霊が召喚された時、怖かった。手を引かれ逃げて行く間もよく覚えていない。
気がついたらベッドで寝かされていた。目を覚ますと、プラチナのバングルを着けた。同じ年頃の女の人が状況を説明してくれた。フレイと名乗った、その人が話す内容についていけなかった。
「ゆっくり、理解したらいいのよ」
それからは、しばらく巫女見習いと変わらない生活だった。ただ、いつも話を聞いてくれるリアンがいないというだけだった。それが、辛かった。
王女はみんな良くしてくれて、王(名前はルォン)も良くしてくれた。
ある頃から、猿が遊びに来るようになった。わたしによくなつき、いろいろ語りかけていた。前に入ってきた衛兵のパートナーだそうだ。
フレイが近衛兵にしてしまえばと言い段取りしてしまった。
15
やって来たのはリアンだった。
「お久しぶりだね、リアン」
何事もなかった様に言った。
でも、泣き崩れてしまった。
楽しい日々が始まった。