龍の咆哮
10
渇いた大地が続いている。はるか向こうにオアシスがあったはず。ここには、何もない。
いや、前方に行商の馬車が止まっている。水と食糧を分けてもらおう。金はあったはず。
馬車は故障して立ち往生しており、修理を手伝うことになった。
馬車に揺られながら1人考える。
この世界には緑豊かな、楽園の様な場所があるそうだ。そんな世界に行きたかった。
実際は、この砂漠の大地を歩き、時に馬に揺られながらオアシスを渡り歩くだけだ。最近、この世界には星の命とも言うべき力があるということを発見した。私はこれをマナと名付けた。マナの濃度がオアシスを形成しているということを確かめたくて、旅をしている。
11
オアシスには集落があり活気に満ち溢れている。私のような流れ者は少なく、みんなが奇妙なモノでも見るかの様な眼差しを向けてくる。
ひとけのない所で石を取り出す。偶然、手に入れたモノだった。とあるオアシスで行商人が光る石だと言い、売っていたモノだった。興味本位で買い、次のオアシスに向かえば光は弱くなり、道を外れると消える。そうして、西へと進んでいた。
集落のあるオアシスは、ここで最後の様だった。更に西へと進むには、準備と覚悟が必要だった。
12
もう何日、馬に揺られているか分からない。荷台に積んだ食糧は底をつき、残っている水を馬に乗せ、荷台を捨ててから1日。速度が上がり、空腹と焦りも増していく。
馬が潰れ、水も底をつき、途切れ途切れの意識で歩いていた。
闇の中を歩いていた。どこにいて、どこに向かっているのかも分からなかった。ただ、光に向かっていた、楽園に続く道だと信じていた。
光が近づいて来た。表現が正しくないのかもしれない。近づいているのか近づいて来たのかも分からない。
「求めし者よ、楽園を築く覚悟はあるのですか?」
女の人の声が聞こえた。
私はためらわなかった。
そして、龍になり。
楽園を築くため人の形を捨て、王となった。