水の精霊
一応、完結しますが未完結だと感じたなら、申し訳ない。
1
初めて、その場所を見つけたとき、子供ながらに運が良かった。そう、思った。
湧き水を見つけた。
その年は干ばつだった。弟とふたり、秘密の場所になった。水が不足するたび、弟と通ったものだ。
ここは、砂漠の西にある村だ。親が私たちを連れてオアシスから移住してきた。噂がたよりらしかった。年々、この辺りから植物が育つようになっているらしかった。まだ、子どもだった私には秘密の場所を見つけたことの方が刺激的だった。
大きくなるにつれ、村の人々の顔ぶれが変わることに疑問をおぼえ。意味が分かったのは、親が倒れた時だった。
その年、湧き水の話をして皆で水路を作った。親はもういなかった。
2
弟とふたり、生計を立てるのがやっとの暮らしだった。秘密ではなくなったが、あの場所に通い、祈った。手入れもした。水路を引いて、誰も見向きもしなかった。見つけた時は喜んでいたのに、あって当たり前になってしまった。せめて、私が感謝しないと。
しかし、水は枯れた。もう皆、なかったかのように、生活している。
そんな暮らしの中、光る石を拾った。4つ。秘密の場所で見つけた。あの場所ではよく光る。
弟は旅に出た。この村は合わないと、餞別に光る石を3つ渡した。1つは持っていたかった。
3
今年は干ばつが特にひどく。私はあの場所で祈っていた。誰も訪れなくなった、秘密の場所で。
もう、ずいぶん長い間、祈っていた。
辺りが暗くなり雨が降り始めた。喜んだ。これで、しばらくはやっていける。しかし、ここがどこなのか分からなかった。
目の前に、白い龍が立っていた。
降りしきる雨の中、石は光り。
龍がなにか呟き、私は人ではなくなった。