誕生日プレゼント
「ただいまー」
「おかえりー!」
たったったったっ、っとかわいい一人娘が駆けてくる。
「ただいま。沙奈、ケーキだぞーっ」
「やったーっ!」
「おかえりなさい。あら沙奈ったら、いっつもケーキケーキ。お父さんの誕生日なんだから、おめでとうって言うのが先でしょう?」
「おめでとーっ。ねぇ、早く食べよう早く!」
沙奈はケーキをかっさらうと、リビングに駆けて行ってしまった。
「あらまぁ」
「いいんだよ、聖奈。あの子の笑顔が見られるだけで幸せなんだからさ。それに、あんなキラキラした目で見つめられるんだ。あれは誕生日の最高の楽しみだよ」
「ふふっ。あなたは優しいのね」
なんて会話は数年前までは毎年のように繰り返していたな。
沙奈は成長して、バースデーケーキじゃ大喜びしなくなっちゃったらしい。
『ケーキは買っておいたから』
仕事を終えてケータイを開くと、愛娘からそんな簡素なメールが届いていた。
「ただいまー」
「おかえりなさい」
最近は、沙奈は玄関まで出迎えに来てくれなくなった。
「じゃあ、リビングで待ってるから」
なんて言って、鞄とコートを受け取ると、さっさとリビングへと引き返して行った。
なんだ?聖奈まで冷たくなったぞ?
今日は俺の誕生日なのに……。
なんて心の中で独りごちながら、リビングの扉を開ける。
と、
パンッパンッッ!!
破裂音。
そして
「「お誕生日、おめでとうっ!」」
愛しい二人の、揃った声。
「……お、おう」
火薬のにおいが部屋に立ち込めた。
「さっ、早く早くっ」
立ち尽くす俺の手を取って、沙奈がぐいぐいと部屋の中へ引っ張る。
「わ、すげぇ……」
ダイニングテーブルの上に
“Happy birthday daddy. We love you forever”
と書かれた大きなデコレーションケーキがあった。
手作りだ。しかもけっこう手間暇かけてあるように見受けられる。
「いつもお疲れ様っ」
「これからも一緒よ」
「……あぁ、もちろんだ」
「え、パパ、泣いてるの!?」
「もう、あなたったら」
「あ、りが、とう……っ」
今日は俺の最高の誕生日となった。
思いついたので書いてみました。