天文部の秘め事 Ⅶ
「何を言っているんだ?西藤」
「ありのままのことを話すって言っているんですよ、湊屋先生」
「俺が何したっていうんだ!」
「二十五年前、ここには天文部部員がいた。そして、あるものを見てしまった。それは…死体です」
「えっ?」
「何で見えてしまったか分からないんですが、偶然にも見つけてしまった。そのことをこの部誌に書いた」
「でも先輩、何で死体があるって分かったんですか?この部誌にはそんなことは書かれて…あれ?裏に写ってる…」
「紙には書いてなくても裏に写るってことはあるわ。先生は紙は破ったけど、ここまでは見なかった」
「だが、証拠もない。それはどうするんだ?」
「さらに、先生はその天文部部員も殺してしまった」
「えぇ!?」
「ほら、最初にここに入ったとき、二人とも言ってたわね。『ここだけ壁の色が違う』って」
「まさか…」
「ここに、あるわ。死体がね」
「くっ」
「先生、ここを崩してみます?」
俺達はいつも仲が良かった。そして、いつの間にか彼女のことが好きになっていった。
だが、あの二十五年前、彼女は別の男と結婚した。
「どうして結婚したんだ?」
「そりゃあ女は結婚するものよ」
「俺は、お前が好きだ。ずっと、ずっと前から」
「もっと早く言ってよ。でも、私はあの人が好きだけどね。あなたと違って真面目で優しいし」
その時にフッと俺の意識がなくなった。気が付いた時には…彼女は血だらけで動かなかった。
どうしようもなく、とりあえず隠そうと思った。自分に一番身近な天文部の部室に。
そして隠して一週間後、不幸なことに部員達にバレてしまった。また、あいつらを殺した。だが、その現場を西藤先生が見ていた。
「湊屋先生、これは一体…」
その台詞が言い終わるか終わらないかぐらいに俺は先生を大事な、この部に一つしかない望遠鏡で殴った。
先生は気付いたときにはその前後の記憶がなくなっていた。
だけど、死ぬ間際に先生は俺を訪ねてきた。そして帰り際にこう言った。
「湊屋先生、私は思い出したんですよ」
あの時、殺しておけば良かった。何で殺さなかったんだ!?
だから、俺はお前を先生の代わりに復讐することにした…。
「西藤、笑えよ!!こんなにも愚かな俺を!!」
「私は笑いません!!大事な人な人が離れるってすごく…悲しいです。それに、先生は私のお祖父ちゃんを殺さなかった。きっと、分かってたんじゃないんですか?殺すことの意味のなさを」
「千星、ごめん」
「いいよ、光が悪い訳じゃないもん」
「ありがとう」
「さぁ、忙しくなるわよ!顧問、ちゃんと探さなきゃ」
「あの部屋で活動か?」
「ううん。あそこはそっとしておきたいの。私達の先輩の思い出を」
「そっか」
「千星せんぱーい、行きましょう!」
「おいてくぞ」
「…うん!!」