天文部の秘め事 Ⅵ
「よし、これで提出する部活の書類完成!!」
「わー!すごいです~!」
「良かったな」
「でもな、千星。もう下校時間だ。出すのは明日な」
「分かってるよ」
ようやく私とお祖父ちゃんの約束が果たされようとしている。
「待っててね、お祖父ちゃん」
私は、頑張るから。
「今日のご飯はエビフラーイ、エビフラーイ」
私はご機嫌に歌を歌っていた。光先輩も復活したし、あとは明日天文部設立の紙を出したら終わり。素敵な、私の夢見ていた部活生活が始まる。学校のいじめも無くなったし、いい方向へ向かっている。それもこれも千星先輩達のおかげ。浮かれながら下校していると、バッっと後ろから口を塞がれた。えっ?
何、これ…?一体…?
「千星、ごめんな」
「ううん。ぜっんぜん気にしてないから」
そう言って、まるで楽しいことを見つけたかのような顔をして笑っていた。良かった。
プルルル、と急に千星の携帯が鳴り出した。
「はいはーい、朱里?」
どうやらそれは部員第一号、福原朱里だったらしい。だが、微かに聞こえる声は彼女のものとは違うものだった。低い、人を嘲笑うかのような声。それは俺がこの数日間聞いていた奴の声だった。そして、千星の顔がみるみる青ざめる。
「朱里が、連れ去られた」
一瞬、耳を疑った。たしかあいつは言っていた。『あいつの孫以外には興味ない』と。何が起きているんだ?
「どうしよう!?とりあえず龍矢君に!」
千星が富永に連絡している。多分福原がいる場所にはそこにはあいつがいる。そしてその場所は…
「富永、元天文部部室に来い」
「クックッ。これであの娘を殺せば俺の復讐が終わる」
「ここはどこですか!?目隠しと縄を取って下さい!!」
「それはできない」
「あれ?この声…まさか!?」
ドンッ、バキィ!
ドアが蹴り開けられる。そして、部屋の中央にいたのは…湊屋先生だった。
「お前、他の奴には手を出さないんじゃなかったのか!?」
「何の事だ?俺は知らないが」
「自分がやったことを忘れたのか!!」
「…龍矢君、朱里をお願い」
「はい」
湊屋先生は龍矢君に気付かずに光と向き合っている。
「龍矢君?あれ、何でここへ?」
「立てるか?」
「うん」
二人がこっちにやって来る。さて、
「朱里は返してもらったから帰るって言いたいとこだけど、そうはいかないわね」
そして、私は真実を語った。