天文部の秘め事 Ⅳ
「部誌、ありませんねぇ」
「ほんとにあんのか?」
「あるわよ。絶対」
「ていうかさぁここの壁、脆そうだよな」
「何か塗り直された跡が多くないですか?」
「あったー!部誌よ!」
私は黄緑の古ぼけたファイルを手にいれた。中を開くと何故か一番後ろのページが折られていたのがあった。
『○月×日
私、小阪恵は部員達と共に恐ろしいものを見てしまった。
それは、』
「何か途中が破られてんだけど」
「怪しいですね」
「この小阪って誰だろうな」
「…調べてみるわよ」
「ほう、あの娘は元部室に気付いたか」
「窓から覗くなんて趣味が悪いですね」
「覗くじゃない、監視だ」
「…俺は帰ります」
「すいませーん。この小阪さんって誰ですか?」
大食いの私の唯一の理解者の食堂のおばちゃんに聞いてみた。
「ああ。天文部の部長さんね」
おばちゃんが白い三角巾を畳みながら言う。
「えっ!知ってるんですか?」
「知ってるもなにもその子は私の孫だよ。ほら、私の名前は小阪洋子だしね」
「孫…。なら、会わせて下さい」
「無理だよ。その子、恵は…行方不明だから」
「行方、不明…」
「今から二十五年前、恵は中学二年生で部長を任された。明るくて素直で正義感が強くて。そんな子だった。でも、部活中に他の部員と消えてしまったんだよ」
消えた…?一体何が起きたの?
「それで今も見つかってないと」
「ええ…」
「すいません。思い出させるようなことを聞いて」
「千星ちゃんは天文部を復活させるのかい?」
「必ず。その時は光も一緒に」
「頑張ってね。恵のためにも」
「はい!」
「さて、今日分かった情報を整理するわよ」
「まず二十五年前に天文部の部員達が消えた」
「そしてこの部室に恐ろしいものが隠されている」
「ええっと、今日のお弁当はエビフライだった」
「弁当の話なんかしてねぇよ!」
「ひゃい!ごめんなさい!!」
「つまり、誰かにさらわれたってことね」
「でも一体誰が?」
「大体予想は出来てる。だけど、決め手がない」
「! 一体それは!?」
「まだ言えない。ていうかこの部屋、盗聴されてると思うよ」
「えぇ~!じゃあ私のエビフライも知ってるんですか!?」
「何を言ってるんだ、お前は」
「今日は帰りましょ」
気付いた…?俺の仕掛けた盗聴器を?バカな。あの娘がか?
しかも、犯人が分かった?そんなことがあるものか。
「…過去を消してやる」