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天文部の秘め事 Ⅱ

 彼女は結婚してしまった。俺の知らない男と。

あの日々は嘘だったのか?お前にとって何だったんだ、俺は。



 「光。ちょっと」

一緒に家へ帰っている時、千星は言った。

「何だよ」

隣を歩いている彼女の顔を見る。…この目は怒っている目だ。こいつが怒りそうなことといえば…。

「顧問、か?」

「そうよ。どうして捕まんなかったのかしら!?」

顧問というのは部の設立に必要な条件の一つで、顧問が見つからないと部がつくれない。一応事情があるんだが…こいつには絶対に言えない。

「光が行ってどうにもならないこともあるのね…」

「なぁ、止めないか?部活つくんの」

「何言ってんの!あんた協力してくれるって言ったじゃない!」

俺は善意で言っている。これ以上、進めたら…駄目だ。

「はぁ~…ま、明日から頑張りましょ」

もう一人が見つからなければ、大丈夫。俺は守れる。だが、見つかった場合は…。



「フンフフーン」

私は近所のコンビニに買い物をしに行っていた。…午前二時に。変なことをしてた訳じゃない。ただ、目覚まし時計の電池が切れただけだ。こっそりと家を出てさっと買ってくるだけ。だが、私の前にある強敵が立ちはだかった。それは―

「宗田理人君のサイン入りタオル~」

だった。私は今大人気アイドルの理人君の大ファンでファンクラブにも入っている。男の中で二番目に好きだ。さっき、偶然にもコンビニの抽選で当てたのだ。これを当てるために時間がかかってしまったけど。

「おい、お前。金持ってねぇか?」

電灯の前を通ろうとしたら、下の方から声が聞こえてきた。何?しゃべる猫がいるの?

「ちょっと聞けよ」

下を向くと、金髪のいかにもヤンキーな人が電灯の下で座っていた。どっかで見たことが…

「あー!この前私に絡んできた人ー!」

そう、この金髪は私がある女の子を助けたら、今度は私に絡んできて、光にボッコボコにされた奴だ。

「ゲッ、お前、あの時の男の連れかよ。行った行った。またボコボコにされたくねぇ」

「今日は光はいないよ」

「いやいや、お前、そんなこと普通言わねぇよ。絡まれて下さいって言っているものじゃん」

「…あんたは何していたの?ここで」

「ボーッとしてた。今、家に帰れないんだ」

「私はコンビニに目覚まし時計の電池を買いに行ったの。まぁ色々あって遅くなったけど」

「…普通、真夜中に電池なんか買いに行くか?」

「だって、寝坊したら嫌じゃん」

「そういうものか?」

「うん」

会話が途切れ、何を言おうかと考えていた時に、向こうが口を開いた。

「お前ってさ、気が付いたら信じられない光景になってたってこと、あるか?」

「う~ん…あ、この前目瞑って開けたら、ご飯の魚が消えてた。あれぇと思ったら隣で弟が口をモグモグ動かしていて、ひょいと魚の骨を出してた」

「それはただ弟にとられただけじゃ…」

「そうかも」

「俺が言いたいのはそうじゃなくて、」

「ま、それは明日に聞かせてよ。もう遅いし。じゃあまた」

私は理人君タオルを彼の頭の上に乗せ、その場を去った。



「千星、どこ行くんだ?」

千星は昼ごはんを食べた後、俺を引っ張って、教室を出た。俺、まだ食べ終えていないんだが。

「そんなにいいじゃない。ほら、シャキシャキ歩いてよ!」

歩かされること五分、俺達は屋上に到着した。ドアを開けると、そこには…眩しいくらいの金髪が寝転がっていた。何か見たことが…

「約束通り、来てあげたわよ。富永龍矢(とみながりゅうや)君」

すると、そいつはガバッとこちらを見て、

「お前、何で俺の名前知ってんの!?」

「とりあえず、私の理人君タオル返してよ」

「はい。ってうわっ!思いっきしあいつがいるじゃねぇか!?」

なんだ?俺をやけに怖がって…俺なんかしたっけ?

「光、落ち着いて聞いてね。実はこの人に私は…絡まれたことがあるの」

その言葉を聞いた瞬間、俺の理性が吹き飛んだ。

「ちょっとお前、面貸せや」

「なぁこいつ、俺よりヤンキー向いてんじゃねぇか!?」

「光、さっきの語尾を聞いてた?絡まれただよ、過去形」

あっ絡まれたか…って絡まれたって余計…!?

「富永だっけ。どれがいい?指?頭?それともちょっと豪華に体全体フルコース?」

「ちょっと待て、それは何をするつもり…」

「そんなの決まってるだろ?○○○○だよ」

「俺はあんたらとは関係ない!!」

「ちょっと、君が消えたら意味がないんだから。とりあえず、光は落ち着こう」

「チッ。次会ったら…○○して…」

「なんか小声ですげぇ怖いこといってるけど!?」

「単刀直入に言うと、わが天文部に入れ!!」

「はぁ?」

「いいじゃない。暇なんでしょ?」

「暇は暇だけどな。でも、部活なんて興味ねぇよ」

「君なら立派な星になれるよ!」

「お前…それ、一歩間違えば大事(おおごと)だからな」

「行くぞ、千星。これ以上は無駄だ」

光にズルズルと引きずられていく。私は未来の後輩(になるかもしれない一年生)に向けて叫んだ。

「私は諦めないからー!」


「なんだあいつら?」

俺はあのうるさい人達が消えた屋上のドアを見ていた。久々だ、あんなに笑ったのは。

「天文部か…」


「これで勧誘バッチシ!あとは二回ぐらい押すだけ!!」

私は胸の前でガッツポーズを作る。それだけ気合いが入っている。

「なぁ、本当に諦めないのか?」

「何よ光ってば。どうしてそんなに反対するの?様子がおかしいよ」

「俺はお前の事を思って…」

「私の事を思うんなら、賛成してよ」

「無理だ」

「…嫌い、光なんか」

「おいっ!」

私は走った。とにかく光から離れたかった。

…初めて光にあんなことを言ってしまった。








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