第十四章 同感8
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そして三日が経ち、その日の午後の事である。
ふと病室に尚江が訪れた。
尚江は二人の姿を見て微笑み、「同感ね」と、答えたのであった。
その時、椅子に座っていた利奈が、
尚江に振り向き、神妙な面持ちで、「どう言う事」と、問い掛けると、
利奈は急に立ち上がり、尚江に手を上げた。
すると尚江はその手をねじ伏せて、「聖菜はこのままでは、智彦に甘える一方で、
その内、智彦の愛情を粗末にするわ。
智彦はどうしても、聖菜である利奈を不憫に思い、
聖菜の求めるものは、全て与えてしまう。
聖菜知りなさい、少しでも良いから愛する者の、生命が薄れて行く様を。
どんなに切なくそして、どんなに辛く悲しく、愛しくそして生き返らせたいかを。
辛いでしょ、やるせないでしょ、少しでも知る事が出来れば、
あなたは智彦の、愛情を常に喜びに代えられる。
だから智彦を大事に出来るの」。
すると利奈は手の力を抜いて、「辛かった、悲しかった。
気が狂いそうだった。
戻って来てくれた事だけで、今は何もいらない」と、
呟くと尚江は、「その気持ちを、常に心に秘めていなさい。
あの聖霊は私の前世の母よ」と、答えると、利奈は驚いた。
尚江、「軽井沢のペンションのあるじ、そうあの教会の牧師は、私の前世の父なの。
いい、よく聞きなさい。
あなたはあの世では、特別な存在なの。
とても優しい魂で、この世でダメージを受けた魂を癒す役目なの。
でもその時、魂を強化しないと、あの世であなたの魂は、弱ってしまうの。
大事なあなたの、カリュキュラムでもある。
それは智彦も同じ事、あの世で二人三脚で、ダメージを受けた魂を癒し、
またこの世の中で、ダメージを受けた魂を肉体に宿し、
この世の中で活躍出来る魂を送り出すのが、あなた達の役目。
この世では二人の魂が、結ばれ癒し合いそして、
二人で強い魂に成る様鍛えるのが、あなた達のカリュキュラムなの。
また不幸が訪れるかも知れない、でも二人は互いに癒し合い、
共に助け合って生きて行くの」。
そして近藤が、「尚江ありがとう、俺がこの子を残してあの世に行ったら、
この子は 一生精神病院のお世話だったろう。
俺が生き返っても、今口に出来ている物は、栄養ドリンクだけだ、
固形物は受付ない様だ。
尚江の前世の母に感謝するよ、
俺が死んだら、俺の方があの世で喘ぐよ」と、言って微笑んだ。
尚江もその時微笑んで、利奈は静かに先程座っていた椅子に着いて、
俯いたのであった。
するとその後から、昔馴染みの仲間達が、病室を訪れた。
近藤を見る前に、椅子に座っていた利奈を、見詰めた仲間達だった。
忍、「言葉が出ないだろ」。
保、「俺達に顔を向けられないだろ」。
石川、「そうだろな、やっと俺達の気持ちを、体で体感したのだからな」。
芳江、「これで私達全員、同じ気持ちを味わった訳だ」。
そして四人は微笑んだ。
その時、利奈は、「今始めて心の底から言うね。
只今私は帰りました。
皆様には多大なる迷惑と、私の更なる天命を、
待ってくれた事を感謝します」と、呟いた。
すると最後に、この病室に弘江が入って来た。
そして、「これで心から私は許してやるよ、
でも粗末にするんじゃないよ、
智彦の魂を」と、言って病室の扉にもたれ掛かり、腕を組んだ。
利奈はその時、何も言わずに頷いたのであった。
その時、会社の仲間達も病室に来て、二人のその姿を見て、
微笑んだのであった。
すると急に恵美子が、この病室に駆け込んで来て、
近藤の姿を見てその場で、大声で泣き崩れ、「ごめんなさい、
私が、私が、『近藤なんてあんな奴、死んじゃえばいいのよ』って、
願ったら本当に死んじゃうなんて、思わなかったの」と、叫んだ。
皆その時、黙り込んだ。
すると尚江が、恵美子の手を持って、「ちょっとおいで、話があるから」と、言って、
恵美子の手を引き、病室を跡にしたのであった。
すると忍が、「あんた達、常にああ言うのが側に居るのは、宿命だね」と、呆れると、
石川が、「いや、あれもこいつらの、
この世のカリュキュラムなんだよ」と、答えてため息を付いた。
取りあえず、災難は去ったと気が楽に成ったのは、
今まで危篤状態の近藤であったのは、言うまでもなかった。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。




