第十三章 より戻し5
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店に到着すると、先程利奈が座っていた席に、三人は座っていた。
利奈の手元には、先程貰わなかったお釣りが置かれていた。
利奈以外はホットコーヒーを頼み、利奈は何も注文せずに、
ただしくしく泣いているのであった。
光秀もただ黙って、俯いているだけだった。
すると近藤が指を組んで、それをテーブルに置いて光秀を見詰めた。
近藤、「君は利奈の前では強気に出れる様だが、
男の前だと弱いのかい」と、尋ねると光秀は、更に俯き黙っていた。
近藤はそれを見て、「まずこの我々の婚約の経緯を、簡単に説明するよ。
君と利奈が一緒に居る時の話だが、
利奈は時々得体の知れない記憶そう、フラッシュバックに、
悩まされていた事は知っているね」と、答えると光秀は小さく頷いた。
これから現代の科学では、解明出来ない事を話すが、
君もコンピューター関連の、会社に勤めている様だから、
信じ難い事実では有るが、よく利奈が悩まされていた、
君では無い男とのデートは、若かりし頃の僕なんだよ」と、語ると、
光秀は顔を上げて驚き、「どう言う事ですか」と、尋ねた。
近藤は、「利奈は生まれ変って来たんだ、今から25年前、聖菜と言う名だった。
彼女は二十歳の時に、人身事故に遭って、亡くなってしまったんだ。
そして直ぐに、別の親から性を受けた。
当時の彼女のフルネームは、猪原 聖菜、僕の恋人であった。
どう言う訳かその頃の記憶が、生まれ変った利奈の脳裏に蘇り、
生まれ変った聖菜であった利奈と、僕は今の会社で再会したんだ。
僕は当初利奈の、フラッシュバックの内容を聞いて、
直ぐに元僕の恋人の、生まれ変りだと気づいたが、
この子には過去の事なんか忘れて、
君と新たなる人生を歩んで欲しくてね、
この事実は利奈には、黙っていたんだよ」と、優しく光秀に語ると、
光秀はまた、俯いてしまうだけであった。
近藤、「君は勤めている社長の娘から、
利奈の事に対しては、何か聞いていないのか」と、尋ねると、
光秀は、「手紙を渡したと聞いています」。
近藤、「その内容は」と、尋ねると光秀は、また黙ってしまった。
それを見た近藤は、「一方的で済まないが、君のその表情から伺うに、
社長の娘さんからは、かなり酷く借金の事に対しての、
仕打ちをされた様だが、どうだい」と、問い掛けると、
光秀の重い口が開いた。
光秀、「あいつから、『お金大分利子も入れると、
嵩んでいるけど、どうするつもりなの』と、咎められて、
『返せないならあなたの彼女に、返して貰うまでだけど』と、言われました。
俺は、『それだけは止めてくれ』と、頼み込むと、
あいつは直ぐに、婚約の話を持ち出しました」と、言ってまた、黙り込んでしまった。
近藤は話が止まってしまった光秀に、「続けて」と、
答えると、一度近藤の顔を伺って、俯きながら話し始めた。
光秀、「上辺だけで僕が婚約を約束すると、彼女は微笑み、
次の日、利奈に自ら手紙を、直接渡した事を告げられました。
そして利奈と落ち合うと、送った手紙を見せられて」と、
また話が止まってしまうと、
近藤が、「自分ではどうする事も、
出来なくなってしまった訳だね」と、問い掛けた。
その時、光秀は軽く頷いた。
そして近藤が、「それは過去の話、ではなぜ今になって、
利奈の前に現れたかだが、見ての通り利奈はこうして、
尋常では無い姿を晒している訳だけど、単刀直入に聞こう、
何故君は捨てられたかだが」と、
問い掛ける近藤に光秀は、「いらなく成ったからだと思います」と、答えた。
近藤、「急に社長の娘から、三行半を突きつけられる様な、真似をしたのかい」と、尋ねると、
光秀は、「結局借金は棒引きにならず、
減給で返す事に成りました。
我が社は今、危機に直面しています。
合併も間逃れず、合併先の社長の息子が独身なのです。
慶子はその息子と、婚約する事に成りました」と、語った。
近藤は呆れ顔だったが、タバコに火を点け一服吸うと、
タバコを灰皿の上に置いて、「ちょっと君に誘導尋問をするが、
もう一度言う、これはあくまでも君に対しての、誘導尋問だからね。
その質問を君の判断で拒否が出来る。
なぜなら誘導自問だから、今から僕が問い掛ける質問は、
君にとっては、不利な状態での問い掛けになる。
良く考えて、黙秘権と言う形で、拒否したければ答えなくていい。
よーく考えて答えるんだ、良いかい」と、言うと光秀は頷いた。
それを見て近藤は、「今君は到底直ぐには返せない、借金が有るが、
多分社長サイドは利子無しで、減給と言う形で、
君が勤めている会社に、置くつもりだろう。
そこでこうしよう、これはあくまでも、例えとして聞いて貰いたいのだが、
君の借金した全額を、僕が肩代わりするとしよう。
それで僕には君が 一切肩代わりした金は、返さなくて良いとする。
念を押すがこれはあくまでも、仮の話だと言う事を忘れないでくれ。
それでこちらの条件は、僕が君の借金を肩代わりしたなら、
これから君が今後利奈に、付き纏わない様にと、するならどうする」と、質問すると。
光秀は目が虚ろになった。
利奈も光秀の目を見詰めた。
すると光秀は、「その条件なら、喜んで受け入れます」と、答えてしまった。
そして近藤は、「利奈の貯金目的で、近づいたな」と、意味深気に答えたのであった。
この時、初めて光秀は自分の心の底を、読まれた事に気づいた。
それを聞いた利奈は泣きながら、「帰ってよこの人でなし」と、
叫んでまた、泣きじゃくってしまった。
近藤は穏やかな口調で、「先程行って置いたが、仮定の話だ。
もし今後利奈に付き纏うなら、こちらも黙ってはいないからな。
俺は利奈と常に一緒に仕事をしているから、今度利奈の前に現れたら、
それなりの対処をするから、覚悟はして置けよ」と、光秀を睨むと、
光秀は震えてこの場を、立ち去ってしまった。
光秀の姿が見えなくなると利奈は、「あいつの前世はきっと、
私を犯そうとした、暴走族よ」と、嘆くと近藤は、「ならばあの時、
もう三発も殴って置けばよかった」と、答えた。
その時、利奈は、「へ」と、答えたのであった。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。




