第二章 曇りのち雨 2
オリジナル:http://blogs.yahoo.co.jp/kome125
次の日利奈は、会社を休んで神経科に行く事を決めていた。
火曜日、昨日から引き続き雨が降っていた。
窓越しに外を眺めると、港では船が出港していた。
雨、時にして人を孤独にさせた。
約束された幸せを覆すか、マリッジブルーは利奈に襲い掛かる。
心の中で利奈は、(こんなに幸せなのに何故、後悔が先走るの)と。
さすらう音を響かせたタンカーが、途方も無い未来の予感へと誘われ、
何をさ迷う事が有るのか、自分で自分を責める利奈。
それは突然現れる、フラッシュバックと言う現象に悩む利奈であった。
目を細め港を見詰める利奈は、
遠き時間をさ迷う旅人の様に、感じていたのであった。
雨の中、精神科の個人病院に行くと、
この御時世である為に、精神的に病む人が多く混み合っていた。
病院の窓口で事情を説明すると、紙を渡され詳しく記入していた。
待合室で待っていると、気が重くなる利奈であった。
自分よりも重い悩みを抱えている、表情の患者だらけであった。
比較的若い世代が多く、利奈は物思いに更けて行った。
初診でも有った為に、数時間待たされ要約、
「加藤さん」と、利奈の名字を呼ばれ、診察室に向かう利奈であった。
「失礼します」と、一言入れて診察室のドアを開けた。
診察室のありふれた光景を見て、医師の前の椅子に座る利奈、
説明に困ったが、医師がカルテを見て、「軽いノイローゼですね」と、答えると、
利奈は、「フラッシュバック症状がですか」と、医師に問い掛けた。
医師はカルテを見ながら、ボールペンの先を口元に当てて、「思い返す現象は、
『無意識に画像となって現れ、カラーが飛んでしまい、コントラストが強く出る。
すると人の顔が明るくて表情が見えない。
体験した事も無い現象、或いは行った事も見た事も無い所に自分が居る。
そこに居る人々の存在すら解らない、そして声も聞こえない。
現実と非現実の狭間に居る状態が、頭を過ぎる。
それは願望でも無ければ、現実逃避でも無い』。
なるほどね。
それは記憶が現実で起きた事を、映画やドラマと混ぜて、脳の中で編集されて蘇る。
ストレス性の軽い脳疾患ですね」と、診断すると、
利奈は心配そうに、「治す手立ては有るのですか」と、問い掛けた。
その時、医師は、「軽い精神安定剤を出しましょう、
多分それで落ち着きますから」と、あっさりと診断を終えた。
それを聞いた利奈は、気が晴れた様で薬を貰って、病院を後にしたのであった。
利奈は会社に午後から出勤した。
その姿を見た近藤が、「大丈夫なの」と、
尋ねると利奈は、「一応軽く、精神安定剤を出して貰って飲みました。
それからは、フラッシュバックは起きないから、
単なるストレスだと思います」と、微笑んだ。
近藤も微笑んで、「そうだろ、心配する事は無いよ」と、
笑いながら、自分のデスクに着いた。
利奈も、今置かれている仕事に着手した。
会社内は新製品の宣伝広告で、忙しく動いていたのであった。
会社が終わると利奈は、光秀のアパートで晩御飯を共にしていた。
利奈、「今日は早かったのね」と、御飯を茶碗によそいながら、光秀の前に置いた。
光秀、「仕事が疎らなんだよ」と、言いながら缶ビールを飲んでいた。
利奈はそれを見て、「今度自社の新製品持って来るから、
試してみて」と、問い掛けると、
光秀は、「うんと冷やした奴を頼むぜ」と、喜んだ。
そう言って、利奈の手料理のレバニラ炒めを口にした。
光秀、「うめーこれ、塩加減が絶妙」と、口に頬張っていた。
利奈は微笑んで、「私の手料理いつも、
美味しいと言ってくれるから、作がいがあるわ」と、利奈も喜んだ。
そしてビールを一口飲んで光秀が、「それで頭の方は、
どうだった」と、問い掛ける光秀に、
利奈は軽く頷いて、「うん、大した事無かった。
単なる軽いノイローゼで、安定剤飲んだら直ぐ治ったの」。
光秀、「良かったな、お前の職場忙しいからな、
羨ましいけど」と、言ってビールを飲んだ。
利奈も、レバニラ炒めを口にしながら、「遣りがい有るけど、
切が無いの」と、愚痴を零した。
光秀、「それは羨ましい限りだな、
俺の会社は、半分傾きかけてると言うのに」と、やっかんだ。
利奈、「倒産したら、私が今の会社に頼んで見るわよ」と、答えると、
光秀は、「俺は営業には向かないぜ」と、拒んだ。
利奈、「何のんきな事を言っているのよ、
いざと成ったら遣るしかないでしょ」と、膨れた。
光秀、「利奈に会社でこき使われるのが、しゃくだな」と、首を傾げながら、
ビールを口にする光秀だった。
利奈、「そう言う事言ってると、婚約破棄するからね」と、脅かすと、
光秀は、「酷い上司に成りそうだな利奈は」と、ため息を付いた。
そんな会話で食事が進む二人であった。
食事を済ませ、二人は一つに成った。
カーテン越しに漏れる街の明かりが、利奈の眼差しに入ると、
愛されている感覚と共に、ロマンを抱いた。
愛される事、それは永遠に心切なく愛の証は、
漏れる吐息で証明された。
愛しいと、願う心が永遠の幸せを求めさ迷うと、
愛の証は時が激しくさせる営みは、遥か彼方の深い海へと、沈んで行く二人であった。
利奈は、「あー」と、声を上げると、「幸せかい」と、呟く光秀に利奈は、
「この仮の幸せから、本当の幸せを味あわせて欲しい」と、呟くと、
光秀は、利奈とキスをする。
その時、光秀は、「愛の証は、結ばれてから育むとしよう」と、語り掛けると、
利奈は、「子供が欲しい」と、呟くと光秀は、
利奈の体内に幸せを落とさず、利奈の体から離れた。
利奈、「落としてくれたら、少しはマリッジブルーが安らぐのに」と、語ると、
光秀は、「育てて行く自信が無い訳ではないさ、ただ不安定な職場に、
新しい光が差さないと、後で苦労するだけだから」。
利奈は微笑んで、「そうね」と、呟いた。
部屋の明かりを点けぬまま、眠りに着く二人は、
未来の希望を、打ちひしがるこの世の中から、
仄かな希望を育んでいた。
街の明かりはただ、そんな二人に優しく、明かりを灯す様であった。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。




