表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/60

第十三章 より戻し4

オリジナル:http://blogs.yahoo.co.jp/kome125

利奈と近藤は落ち着きを見せて、街の季節は秋らしく、



ショーウェィンドに飾られた服も、紅葉する様に、



ベージュや茶色の服に、模様替えされていた。



ビールの売れ行きも、落ち着きを見せて、



社内の企画部も、一段落と言った雰囲気を醸し出していた。



そんなあるひと時の事、利奈は広報活動を終えて、



会社近くの行き付けの喫茶店で一人、ホットコーヒーを飲み寛いでいた。



窓の外には、品川埠頭が見えていた。



喫茶店の窓からガラス越しに、タンカーを見詰める利奈。



何を思うので有ろうか、それは今までの近藤との思い出。



利奈のフラッシュバックは今、思い出としての記憶に置き換えられて行った。



ふと自分の薬指を見詰めて、聖菜だった時の記憶を辿った。



それはフラッシュバックが、記憶を呼び戻すと、軽井沢のあのペンションの庭で、



二人で写真撮影を行う前の出来事、自分の薬指に若き姿の智彦が、



聖菜だった頃の自分の薬指に、指輪を嵌めてくれた事。



そして今、聖菜の部屋で利奈に成った自分の指に、



そのリングを嵌めてくれて、強く抱かれたあの記憶がダブり、



目頭が熱くなると、タンカーは汽笛を鳴らし、太平洋に出て行った。



そうタンカーの汽笛は、どこか寂しげで切なさを醸し出す。




人は誰もが何かを抱え、柵を背負って生きるものか。



時に優しい人々に出会い、時に利用され裏切られそれを悔やみ、



そして自分も裏切る事も、人生と説けば、



それは皆、明日の自分の鏡とも言え様。



時代に捨てられ裏切られ、また時は巡り、



惜しんで昔を懐かしみ、戻って来ない時間を暖める。



その時々の時代の美しさを、思い出す人々は、



青春と言う名の基に有った、古き良き時代。



流行歌、流行り言葉、そしてファッションと共に、



去りしき時代の恩恵は、今は記憶の片隅に置き去りにされて、



今まさに人々は、空前の灯火を求めさ迷う事を、



余儀なくされた様である。



すると利奈の前に、黒いバックを持った男性が佇んだ。



それはスーツ姿の、光秀であった。



利奈は驚いて言葉が出なかった。



そして光秀は利奈を見詰めて、「俺、捨てられた」と、答えると、



利奈は光秀を見詰めて、放心状態であった。



利奈はそのままの表情で、「だからなに」と、呟いた。



光秀は利奈の左手の薬指を見て、



「お、お前、婚約したのか」と、挙動を荒立てながら呟くと、



利奈は黙って顔を光秀から、視線を外して俯いた。



そして静かに語り始めた。



利奈、「都合がいいのね、捨てられたら私にどうしろと言うの」と、語ると、



いきなり光秀は必死に成り、



利奈の前の席に座り、「やり直して欲しい」と、語りかけた。



利奈はこの席を立って、レジに行き千円札を置いて、釣りも貰わずに、



そそくさこの店を出て行った。



それを追いかける、光秀の姿があった。



道端で何度も何度も、後ろから利奈の肩に、手を掛ける光秀を振り払う利奈、



しつこく付き纏う光秀、利奈は小走りに成ると、



光秀も利奈を、追いかける様な姿となった。



利奈はその時走った。



そして光秀も走り、追い付き利奈の後ろから抱き付いた。



光秀は利奈の体を返して、無理矢理利奈の唇を奪おうと試みるが、



利奈は拒み続け挙句の果てに、思いっきり光秀の頬を張り倒すと、



光秀は驚いて頬に手を宛がった。



そして張り倒された事に、腹を立てた光秀は、利奈の手を掴み浚おと試みたが、



利奈が反発する力が強く、利奈を手から離してしまった光秀、



その間に利奈は光秀から、逃げる様に走った。



丁度交差点の歩行者信号が青で、周りも見ずに横断歩道を渡った。



そして対抗して来た歩行者の正面に、体をぶつけてしまった利奈。



見上げると、近藤の腕の中に身を預けていた。



それを見た利奈は近藤の胸で泣きじゃくり、近藤は利奈を抱き上げて、



自分が歩いて来た方向の歩道に歩いて行き、歩道で利奈の体を下ろした。



呆然とする光秀は、信号が点滅しているのを見て、自分も利奈の所に歩いて行った。



近藤は光秀に、微笑み掛けて、「やあ、始めまして、



どうやら君が、光秀君の様だね」と、語り掛けると光秀は、「へ」と、驚いて、



黙り込んでしまった。



すると近藤は、「僕は利奈と同じ会社の社員で、



近藤 智彦と申します」と、誠実な態度で頭を下げた。



そして近藤が落ち着いて、「君も気づいただろうが、加藤君は婚約してね。



その相手が僕なんだよ、利奈がこんな尋常では無い姿を、晒していると言う事は、



先程何をしていたのか、少し心配に成ってしまうよ。



先程僕は利奈と近くの喫茶店で、落ち合う約束をしていてね。



丁度いい君の話を聞こうじゃないか」と、光秀の肩を一つ軽く叩いた。



光秀は素直に応じる様であった。



その時も利奈は、近藤の胸の中で、泣いていたのであった。



先程の喫茶店へと、足を運んだ三人だった。



この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ