第十三章 より戻し
オリジナル:http://blogs.yahoo.co.jp/kome125
10月の終わりに成っても、真夏日の様な温度で、
一時の猛暑に比べれば、涼しくは成っていたが、
それでも連日連夜、30度前後の温度は多くの人々に悪影響を与えた。
7月からの猛暑続きで、人々の体力は限界に来ていて、
10月気温が少し落ちた時に、所謂酷い夏ばて状態が人々を襲っていた。
会社の社員達も、真夏の宣伝活動で体力を消耗して、
企画部スタッフ達も、体のだるさを訴えていた。
しかしビールの売れ行きは、この時期でも好調で、会社は潤っていた。
午後の会社のひと時の合間を、企画部スタッフ達は、
リラクゼーションルームで、寛いでいた。
そして復刻して来た二人は、噂も復刻した様で、
企画部の噂の二人に成っていた。
そして近藤が今までの経緯を、スタッフ達に話すと、
有り得ない話に、驚いていた。
すると紗江が、「かわいそう、そんな切ない出来事が遭ったなんて、
隠して置きたくもなるわね」と、涙ぐんだ。
恭子、「先輩、確かに近藤さんは、生まれ変った聖菜さんには、
過去の事実は忘れて、新しい人生で幸せに成って欲しいと思う事が、
本当の近藤さんの愛情でしょ、そこを理解して上げて、
初めて近藤さんに愛された、喜びを噛み締めないと」。
その時、利奈は、「今は感じてるの。
あの時はフラッシュバックが怖くて、
必死に私と智彦のルーツを追い、事実を隠していた智彦が、
悔しく思えてしまったけど、前世の仲間達の話を聞いて、
今は智彦の事実隠しを追求した事を、私は深く反省しているの」と、自省していた。
すると近藤がスタッフに、「真に申し訳ない、
社内で不謹慎な出来事を、起こしてしまった事を陳謝します」と、頭を下げると、
利奈も同時に頭を下げた。
吉川、「もう少し加藤さんも、大人に成らないといけないね。
あくまでもここは公の場なので」と、忠告をした。
その時、垣田が、「多分そんな事だろうとは思ったよ。
実はインドで同じ現象を起こした少女が居てね。
八歳まで生きて何らかの事故で、死んでしまい。
ある時その子は、別の家庭で魂を宿され生まれて来た。
物心が付く頃その子は、前世の自分を覚えていてね。
意外と事故が起きた近くに再度、性を宿されて、当時の関係者達に、
会いに行ったと言う話が在るんだ」。
石塚、「昔テレビで見た事が有るのですが、
戦争で航空隊に所属していた、一人のパイロットが、
やはり戦争でのミッションで遣られて、墜落死をして何十年も経ってから、
普通の家庭に生まれて来た子が、急に飛行機に興味を持ち初めて、
物心が付いた頃、『僕は昔、パイロットだった』と、言い出しすと親は、
その子に起きるやはり、経験の無いフラッシュバックを頼りに、
戦時中この子が語る、パイロット部隊の資料を探すと、
現実にその子が語る、部隊が存在していた。
偶然その部隊の生き残りの、戦友会が開かれ、そこにその子供を連れて行くと、
五歳の男の子が老人を見て、まるで昔ながらの、戦友の様に語りかけ、
名前を言い当てたそうです」。
それを聞くとスタッフ達は驚いて、
山田が、「まさに、利奈さん状態ですね」と、感心していた。
恭子、「気が付かないだけで、皆んな本当は前世からの、何らかの柵が在って、
ここに居るのかも知れないわね」と、思いに更けていた。
それから利奈と石塚は、いつも通り関係先の会社を訪問して、
ポスターなどを、テスター店の小売に配っていた。
配り終え街を歩いていると、「聖菜」と、作業服を着た男性二人に声を掛けられた。
ふと振り向く利奈は、「あれー、たもっちゃんと、伊藤君」と、その男性に答えた。
男性二人は内装工事業者で、たまたま利奈が通り掛かった、
店舗の工事を行っていたのだった。
すると保が笑いながら、「ワハハハ、意外と昔からこうして、
すれ違っていたかもな」と、微笑んだ。
そして伊藤が、「意外と気が付かない所で、
近くで働いていたりするんだよな」と、呆れていた。
その時、利奈は、「そうだね、今日も会社でそんな話をしたの」。
保が、「今日は営業の様だね、紙袋にポスターを入れて」と、答えると、
伊藤が、「まだまだ暑いから、外回りは大変だ」と、同情した。
利奈は、「そうなの、でも仕事だからね」と、ため息を付いた。
石塚が、「聖菜さんだった時の、親衛隊の方々」と、言う問いかけに、
伊藤と保は照れながら笑い伊藤が、「そうそう、聖菜はうちらの、
マスコットガールだったから、大凡は当たってるよ、あはははは」と、笑った。
すると石塚は丁寧に、財布から名刺を出して、「私し、東横ビールの、
営業を担当している、石塚と申します」と、頭を下げて、名刺を二人に渡した。
すると伊藤が、「今年はビールの売れ行きが、最高だねきっと」と、感心すると、
石塚は、「お陰さまで例年に無い猛暑日と、不景気の影響で、
家でビールを呑まれる方が多くて、売り上げは上々です」と、頭を再度下げた。
利奈、「それとね、東横ビール札幌工場の研究委員の近藤さん、
そう智彦が、我々の企画部で健闘してくれたお陰で、
ライバル会社よりも群を抜いて、売行きが良いの。
発泡酒の味の改良と、ノンアルコールの改良を企画部で提案して、
横浜工場に改良を求めて、売りに出したら関東、中部、東海の評判が良くて、
忽ち智彦は企画部で、チーフの座を得たの」と、喜んでいた。
石塚は、「僕が言うのも、おこがましいですが、
近藤さんは元暴走の有名な、リーダーでも遭った様ですが、
企画部のリーダーとしても、高い業績を上げています。
人当りも良くて、威張る事も無く、でも的確な判断を我々に与え、
営業の方でも大分、近藤さんの提案を受けて行うと、業者さんからも、
多大なる評価を頂きました。
売り込むのでは無く、売り込む側は何を求めているかを聞いて、
それに見合った商品作りをして行き、試して貰い、
そしてユーザーにも試して貰う。
そして初めて商品化する。
机の上で考えているだけでは駄目、まず現場の声を聞き、
そしてお試し商品を試して貰う。
駄目と言われれば、どこが美味くないかを、事細かに聞き、
多くの人の意見を聞いて、またお試し商品を少数作り、
初めて新たに多くの人に、好まれるビールが仕上がると」。
それを聞いた伊藤が、「流石だな近藤は、決して独壇場に成らず、
必ずメンバー、一人一人にチームの今後の方向性を聞いて、
何をしたいか、これからどんなチームの行いを、進めたいかを聞いて回った。
17歳のガキだった頃を、思い出したよ」と、感心していた。
保、「だからこの目の前の姫が、
愛したのさ」と、利奈に告げると、利奈は笑みを浮かべた。
石塚、「利奈さん、前世では姫と呼ばれていたのですか」と、問い掛けると、
保と伊藤は笑っていた。
すると利奈は、「今でも呼ばれているわよ、
地元に帰ると」と、言いながら渋い顔付きを見せた。
すると石塚も交えて、三人は笑ったのであった。
石塚、「でもね、会社の女性の皆んなが言ってましたよ、
『あの子は生まれ変っても、また美人に生まれて来るなんて、神様は不公平だ』と」。
利奈はその時、顔が強張り、「決して美人では無いわよ、
皆んなが勝手にそう見るだけで、
私は気に入っている訳ではないわ」と、言って膨れた。
石塚、「でもあのペンションで写した、
近藤さんとのツーショットの、聖菜さんを見る限り今も昔も、
目元パッチリで綺麗でしたけど」と、
言うと利奈は、「あの写真、怒った勢いで、
会社のスタッフに、見せるんじゃなかった」と、後悔したのであった。
すると伊藤が、「聖菜はそう言う所が変わらないな、
後先考えないで突っ走るから、いつも近藤に止められるんだ」と、呆れていた。
保が、「まっ、聖菜も俺達の年齢になれば、きっと落ち着くさ」と、繕った。
伊藤が急にその時、顔付きが代わり、
遠くを見詰めて、「変わらない奴も居るがな、あの電柱の影に」と、言うと、
皆、伊藤が見詰めている方に顔を向けた。
そこには彰子の姿があった。
そして伊藤が、「石塚君、今から直ぐに会社に帰り、
チーフにこの事を伝えるんだ」と、石塚の耳元で呟くと、
保が強制敵に、利奈の腕に石塚の手を回して、「いいか、この子の腕を、
会社に着くまで絶対に離すなよ、そして近藤にこの事を伝えろ」と、答えると、
石塚は恐る恐る頷き、黙ってこの場から利奈を連れて、去って行った。
そして無事二人は、会社に到着したのであった。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。




